2008年4月22日 (火)
第40話「エルメスのララァ」
アムロに追従できないガンダムはホワイトベースでも大問題となるが、ブライトが示す「アムロはそんなに戦い上手になったのか?」という疑問は重要だ。つまり通常の人間がスキルアップしていくのとは異なる現象で、先読み能力が結果として成果を上げているに過ぎないという意見なのだ。これはララァの戦闘を見た後のバタシャムの意見とも密接な関係がある。
【マグネットコーティング】
「ガンダムの駆動系を電磁気でつつんで動きを速くするのだとさ。油をさすみたいなもんだな」というのがブライトの説明。電磁工学の新鋭モスク・ハン博士とガンダムの改造シーンは今回大きなみどころ。ガンダムの顔のマスクにも注目。設定書上ではマスクは観音開きの構造だが、一体化してドアのように開くこともできるのだろう。
ソーラ・システム(発射時にソーラ・レイと改称)への改造のために使われた第3号密閉型コロニー。居住者150万人、疎開に4日以上と非常に具体的に描かれ、宇宙植民地の規模とともにジオン公国の窮状がよく伝わってくる。
【デギンとギレンの軋轢】
ザビ家内紛はシリーズ全体の通奏低音のようになっているが、父のデギンと長兄ギレンとの確執は、今回で発火点に達している。ジオン・ズム・ダイクンの共和制をデギンが「国民をまとめるための方便」として公王制にすり替えた。しかし、その後さらにそれをギレンが独裁制と軍政に変えてしまったのだ。デギン公王の複雑な想いが推察できる会話でもある。
【キシリア動く】
シャアは「キシリア殿がようやく重い腰をあげたというわけか」とつぶやく。月面グラナダが連邦軍の目標でないとわかった以上、理由をつけてギレン勢力の損耗を待った方が良い。ただしそれは国民の支持を得られないため、自ら援軍を指揮して出ることにしたという意味だ。ザビ家各人の動きは推察がつくように描かれている。
【ララァ事実上の初陣】
援護に出たはずのリック・ドム2機は、バタシャム以下パイロットがララァの戦闘力に怖じ気づいて下がってしまう。前面に出されてしまったエルメスのララァはそれに動揺を覚え、それでも軍艦4隻を1日で撃沈というシャア以上の成果をあげる。シャアが守ってくれるという安堵があったからだ。シャアに依存したララァの戦いの特質、精神的な戦闘の限界と、戦闘小隊に匹敵するエルメスの成果など、次回の伏線となる多彩な要素が描かれた戦闘である。
【星1号作戦】
連邦軍の各艦隊がそれぞれ定められたコースを取って攻撃目標の星へ向かうと、ナレーションで明解に告げられている。「星」は単なる符牒ではなく、具体的な目標を意味する。
【人の本音】
“データだけは届けてほしい”というモスク・ハン博士の要望から“パイロットの生死に関係なく”という背後の意味をくみとり、「だから人の本音というのは聞きたくありませんね」と速攻で返すアムロ。ウソでも「アムロ君を生きて帰すためにガンダムを強く改造したんだ」と言ってほしかったのだろう。ニュータイプや戦闘とは無関係の部分でも機微を感じとれるようになったアムロの成長ぶりが見てとれる。
【戦闘食】
「この食いものが戦闘食でないってんだからな」と、口の減らないカイ。ちょっとしたコメディリリーフが雰囲気を和らげる。
【ガンダムのファイティングポーズ】
マグネットコーティングの結果、拳を握ったまま腕で素早く戦闘ポーズをとるガンダム。空手ロボットの『闘将ダイモス』を連想させる、ヒーロー的で珍しいシーンだ。
セイラに“ニュータイプ”とおだてられて、「タイプからいったら古い人間らしいけど」と照れるアムロ。しかし、セイラはつい「おセンチでちっとも翔んでないのにね」と重ねてしまい、「正面きって言われるといい気分のもんじゃありませんね」と反発を招く。短い描写の中で、突然出てきた“ニュータイプ”という新語を持てあましている雰囲気がよく出ている。
【シャアが来る】
たった1回だけ流れるシャアのための挿入歌「シャアが来る」。効果音を消す特殊な音響演出が適用されている。ただし、これは戦場でシャアと交戦したパイロットの心情を歌ったものである上に、戦闘は圧倒的にアムロ優位でゲルググは左腕を失う大破。しかもシャアはララァに「どいてください、じゃまです!」とまで言われる始末で、ややミスマッチを狙った選曲にも思える。
【アムロとララァの前哨戦】
「呼んでいる?」と近づくアムロ、「シャアをいじめる悪い人だ!」と怒るララァ。次回の本格的交戦の前振りとなるような描写が満載だ。クライマックスが近いという期待を盛りあげる。
氷川竜介(アニメ評論家)
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