2008年3月18日 (火)
第35話「ソロモン攻略戦」
かつてルナツーで対立したワッケインとブライトの再会は、実に感動的。官僚的にも見えたワッケインは熟練の軍人として、ブライトと彼のクルーに賛辞を与える。確実な変化と成長が描かれているのだ。
【先鋒となるホワイトベース】
与えられた任務は、本命の作戦まで15分だけ持ちこたえるための陽動作戦だ。連邦軍にいいように使われているホワイトベースのクルーだが、それに応える実力が伴っているという実戦の熟練度が頼もしい。
【補給と索敵】
宇宙要塞ソロモン攻略という大作戦ならではの準備描写が多い。地球連邦軍のコロンブスはホワイトベースへ物資を補充し、ジオン側ではパプアがビグ・ザムのパーツをソロモンに搬入するなど、補給シーンが目立つ。同時にミノフスキー粒子が濃く散布されたため、索敵が手探り状態になるという点も「戦争らしさ」に厚みを加える。
【パブリクとガトル】
連邦軍は作戦を優位に進めるために突撃艇パブリクを出し、ミサイルでビーム撹乱膜を散布する。無効化に成功! と思ったとたん、強度次第で防ぎきれない描写がリアルだ。ジオン軍側も同サイズのガトル宇宙戦闘機を出し、そんな応酬が決戦らしさのバックグラウンドを盛りあげる。
サイド6を出航する際、カムランはシャアに思わず職務を忘れて嫌味を言う。サイド6もジオン軍の戦略的な支配下にあるというニュアンスで返すシャアへ、思わず怒りを向けるカムランの純粋さが見もの。続いて現れたララァが、単に通路を通るだけなのに光の中を漂うという美しい描写、見とれるカムラン、シャアが「私の妹とでも」と言い出すあたり、何とも言えないシリーズの深い「香り」を醸し出している。
【衛星ミサイル】
ジオン公国が物資に困窮していることが端的にわかる。小惑星にスラスターをつけただけの質量兵器だが、宇宙空間では甚大な被害を与えることができる。
【タブーのはずの“愛”】
“愛”という言葉を軽々しく出さないと誓った当時のガンダム・スタッフ。この回ではその禁を破って“愛”のセリフが発せられる。しかしそれは、助けられたカイが「セイラさん、愛してるよ!」と軽口で礼を返す言葉なのである。
【ゼナとミネバ】
宇宙要塞の一角に暮らすドズル・ザビ中将の家族。妻ゼナは高貴なムードを醸し出し、愛児ミネバを得るまでにも労苦があったことが、ドズルの言葉の断片でわかる。脱出艇に乗せられるゼナの夫への気遣いのセリフも、心に染みる。
ミラーを並べて要塞を太陽光で焼くのが連邦軍の今回の作戦。破壊されたサイド1の残骸がリアルだ。宇宙戦艦がミラーに映りこんだりする描写も細かい。
【副官ラコック】
ドズルの片腕となって実務を取り仕切っているラコックは、なかなか優秀な男。さりげなくコーヒーを差し出す手短な描写で、如才なさがよく描かれている。
【救急室に行くフラウ】
ハヤトが負傷したと聞き、ブライトの許可を得て救急室に向かうフラウ・ボゥ。重力ブロックに入るために着替えるのがリアルだ。そのリアクションで、ハヤトは実はかなり見た目にひどい傷を負っていたのもわかる。そして「アムロは特別」になっている会話を通じ、2人の仲は急接近していくのだ。
氷川竜介(アニメ評論家)
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