2008年3月11日 (火)
第34話「宿命の出会い」
この回以後、第37話、第42話(中村一夫担当)、最終回(山崎和男担当)以外は作画監督が表示されなくなる。アニメーションディレクターの安彦良和が急病で倒れたためだ。本エピソードにおけるララァ、シャアとの出逢いや遭遇シーンの一部は最後の安彦作画に相当するが、劇場版ではほぼ全面的に描き直されている。
【額からのスパーク】
雨宿りをするアムロは白鳥を見て何かを感じ、額にスパークが走る。ニュータイプを意識した描写が多用され始めるが、劇場版ではフレックストーンという楽器の音がついているのに対し、TV版では無音なので見逃さないよう注意が必要。
【宇宙港の遭遇】
ザンジバルが停泊中のホワイトベースと並び、敵味方が同じドック内に停泊する光景はクルーに衝撃を与える。だが、シャアの寄港にはもっと大きな目的が秘められていた……というニュアンスが、物語に大きなスケール感を与えている。
ガンダムの大テーマのひとつに「乳離れ」がある。この回でアムロは父親とは母親以上にドラスティックな別離を経験する。それとララァやシャアとの出逢い、アムロの異常な戦闘力の発揮はすべて関連づけられている。つまり、「家を出る」「異性と出逢う」「仕事としての目標を見すえる」という3点がセットになって「乳離れ」を構成しているのである。そう考えると、直後にアムロが「社会的な役目」としての戦闘に急激に威力を発揮し始めるのも、納得のいくところ。
【スレッガーの平手打ち】
アムロの経験と音楽で言えば対旋律を奏でるように、いくつか「大人のドラマ」が描かれる。良妻賢母的に思われていたミライが見せる意固地な痴話喧嘩はそのひとつ。ここでスレッガーの言う「気合いの問題」とは、どれだけ他人に真剣に迫れるかという意味で、歳をとるにつれて重くなるセリフだ。アムロに「子どもには関係ないの」と言うのもお茶目で、スレッガーのキャラも第36話に向けてぐっと引き立つ。
劇場版ではひとつにまとめられているが、TVシリーズでは第2回戦がある。サイド6のTV中継、父親の反応など妙に生々しい迫力がある。歴戦のジオン兵たちが眩惑戦法を取り、アムロがその上を行って敵兵を驚愕に陥れるという忍者もののような殺陣は見応えがある。
【マスクをしたシャア】
ララァとホテルに落ち着いたシャアは、TVシリーズではマスクを着用しているが、2人の間に明らかにプラトニック以上の愛情関係があるというニュアンスは、ララァのじゃれている言動から伝わってくる。
氷川竜介(アニメ評論家)
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