2007年10月30日 (火)
第16話「セイラ出撃」
【連邦軍の暗号】
無線の使えない世界のため、レビル将軍の使いは通信ではなく、なんと直接メッセージを持ってくる。「砂漠に蝶は飛ぶのか?」「砂漠に蝶は……。砂漠に飛ぶのはサボテンの棘」という命がけの合言葉が、戦場の緊迫感を盛りあげてくれる。
【オデッサ・デー】
現在では「オデッサ作戦」と呼ばれることが多いレビル将軍の反攻作戦は、最初のうちは開始日を指すこの暗号で呼ばれていた。第二次世界大戦で連合国側が行ったノルマンディ上陸作戦「Dデー」にちなんでいるのだ。連邦軍の目標はジオン軍マ・クベ
大佐の統括する鉱山であると、当面の敵がはっきりする。物資の補給路を断つという戦略目的、ホワイトベースの経路と移動に要する時間と、世界大戦規模のスケール感はTVシリーズの長い時間でこそ表現可能なもの。
【食糧補給と塩】
日本でも「敵に塩を贈る」という故事成語があるように、戦争を継続する際に兵士への補給として重要なのが「塩分」である。シルクロードの「移動する湖」という本来ロマンに属するものが、人体生理と戦争に絡むあたりが実にガンダム的。
【マ・クベ登場】
マ・クベとは何者? という新キャラへの関心に応えるのが、ランバ・ラルとの応酬。初登場シーンなのに部下に居留守を使わせているのが驚きだ。その裏にあるドズルとキシリアの権勢争いや、自分の上司に便を図って小細工を労するマ・クベの上昇志向、制服にスカーフをつけ骨董品好みという虚飾に充ちた性格、疑問を抱くハモンの勘の良さとラルの実直さなど、一瞬にして多くのディテールが描かれている。
「こんなはずでは」という作劇はガンダムで定番のもの。無断で出撃したセイラも、熟練していたつもりが実機訓練をしておらず、発進の加速に気分を悪くしてしまう。美貌のヒロインが胃の中身を逆流させそうになる描写に、かつてないほどの生身の感覚を覚えたシーンでもある。
氷川竜介(アニメ評論家)
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