2007年10月23日 (火)
第15話「ククルス・ドアンの島」
TVアニメのシリーズ構成では「本筋から少し離れて寄り道をして個別エピソードを展開する」というブロックは“島編”と呼ばれている。この業界用語は『ふしぎの海のナディア』が出典とされているが、実は大元はこの第15話にヒントを得たもの。もともと番外編的なブロックではあるが、第15話は格別。なにせ米国に輸出されたTVシリーズでは1本まるごとスキップされてしまったほど、番外度が高いのである。
【ガンダムパーツを外すコア・ファイター】
腕をついたガンダムの状態から上半身をスライドさせ、コア・ファイターがBパーツから射出される。思わずリュウに「ガンダムのこんな姿は見たくもないな」と言わせるほどヒーローらしからぬ状態だ。コア・ブロックの内部図解含めてこの回のみ登場する形態だが、実は最終回の伏線にもなっている?
【子どもたちのダブルイメージ】
ドアンの育てている子どもたち、タチ、チヨ、クムを注意してみると、実はカツ、レツ、キッカとダブルイメージになっている。ドアンとは「ひょっとしてこうなったかもしれないアムロの姿」として描かれているわけだ。
ロランもまた、フラウ・ボゥにイメージを重ねた存在かもしれない。ドアンに付きそうとき見え隠れする彼女の思慕に注目すると、フィルムで描かれていない部分への想像が膨らむだろう。人を殺したことによる心理的外傷、脱走兵の物語はベトナム戦争の影響。日本もそれと無縁ではいられなかった時代の空気が写っている。
【ザク対ザクの格闘戦】
本エピソードでは、初のザク同士による格闘戦が登場。なんとガンダムの活躍場面がほとんど描かれていない。ガンダム以前は地球連邦軍側には格闘すべきモビルスーツがいなかったはずだが、このドアンも第3話に登場したガデムも格闘戦の経験者。こうしたところにも、視聴者が妄想をたくましくできる余白が残っているのだ。
氷川竜介(アニメ評論家)
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