2007年10月15日 (月)
第14話「時間よ、とまれ」
【唯一の富野脚本】
富野総監督が自ら脚本でクレジットされている唯一の回。絵コンテの斧谷稔も監督のペンネームなので、純度の高い富野アニメと言える。
【題名は手塚作品から?】
手塚治虫は「ふしぎな少年」という超能力テーマのSFコミックを描いている。TVドラマ化もされたその作品の決めゼリフが「時間よ、止まれ!」なのである。
【ダイターン3からの継続性】
冒頭のマジシャン、エドウィンは前作『無敵鋼人ダイターン3』からのゲスト出演。よく見るとジオン兵士の中には波嵐万丈やギャリソン時田そっくりの人物もいる。
【一人乗りのホバー兵器】
大活躍するワッパには、富野監督のアイデアラフが存在し、「パーソナル・ソーサー」と名づけられている。ソーサーとはコーヒーなどの受け皿のこと。似たような乗り物に『戦闘メカ ザブングル』のホバギーがあり、『機動戦士Vガンダム』にはワッパそのものが再登場している。どうやらお気に入りメカのようだ。
【連邦軍の内情】
マチルダの口から語られる連邦軍の情勢は、実に聞き応えがある。特にレビル将軍の考え方は、官僚主義が横行する連邦軍の中では貴重なもの。特に最前線で常に失敗と成功の間にたつ「開発」に携わる人間には、実に興味深いもののはず。
【マチルダへの想い】
アムロは完全にマチルダの「追っかけ」になっている。その嬉しそうな表情、フラウ・ボゥと対する滑った会話などは、実に見もの。
【宇宙と地球の生活差】
今回、なぜか「虫」の描写に力が入っている。クワラン曹長たちの動機にも直結し、宇宙移民と地球暮らしの微妙なメンタリティの差も象徴されるからだろう。いったん違いを認識した上で、それを超え、戦場ではお互い生死を賭けて必死なんだという、敵味方を超えた独特の共感が生まれることで、観客はカタルシスを覚える。こうした幾重にも折りたたまれた多層構造は、TVシリーズ特有のもの。
氷川竜介(アニメ評論家)
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