2007年10月9日 (火)
第13話「再会、母よ…」
カイやセイラの会話の端々には、地球と宇宙で暮らす人間の意識や階級の差がにじみ出ている。スペースコロニーのもつ棄民政策的側面と卑屈さが、随所に埋めこまれているのだ。
【棄てられた兵】
戦線が拡大するにつれ、補給も救助も断たれて部隊が孤立するのは太平洋戦争でもあった事件(キスカ島など)。ホワイトベースもまた棄てられているのではないかと疑惑を抱いているため、さらにそこが際だつ。
母親と男子は古来、微妙な関係である。母にとっては、かつては自分の一部であり、庇護を求める可愛い存在だったからだ。大人になりきってはいないが、目の前にある現実に必死で立ち向かっているアムロは、母のそんな部分が招く無理解に強い反発と断絶を感じたに違いない。
【空中換装登場】
スーパーヒーロー的なロボットであれば「空中合体」は当然のお務め。だが、現実には移動しながらの接触は戦闘機の空母との離発着陸でさえ難しい。次第にガンダムのヒーロー性が濃くなっていく中で登場した「合体」も、多大な困難が伴うというガンダム風な演出が徹底されている。
【母親の生活、女としての顔】
夫と別れて独り暮らしをしている割に、母の服装は色が派手目である。アムロとの別れに際しても、ワゴン車には彼女を待つ男が描かれている。母親という「役割」以外にも、生身の人間としてさまざまな顔があるということなのだ。
【ふりむくなアムロ】
砂丘のラストシーン、フラウ・ボゥがふりむくのに対し、アムロは前だけを見つめて去っていく。「彼は仲間とともにいる場所を選んだ」という図式は最終回と相似形を描いており、副主題歌の歌詞と重ねると全体の成長譚的テーマが大きく浮き彫りになる。極端な話、この第13話で打ち切られていたとしても、作品としては成立するに違いない。独立したエピソードにも見えながら、それほどガンダム全体を包括するような要素がここに集約されているのである。
氷川竜介(アニメ評論家)
(C) 創通・サンライズ
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