2007年10月11日 (木)
ひかりのくに編/小学館編
今回紹介する、
ひかりのくにと
小学館はいずれも、児童向け書籍の出版社としては老舗であり、現在も活動を続けています。その二社がどのようにガンダムに関わっていたか、じっくりと解き明かしていきましょう。
■ひかりのくに編
株式会社ひかりのくにが、テレビキャラクター関連の絵本を出し始めたのは1969年の『ひみつのアッコちゃん』が最初のようです。同社はそれ以前から、そのものズバリ「ひかりのくに」という題名の絵本を出版しておりました。フレーベル館の「キンダーブック」と同様に、幼稚園に直接の販路を持っていたので、その知名度は比較的高いのではないでしょうか。もちろんテレビキャラクター絡みの「ひかりのくにテレビ絵本」については、普通に書店で売られています。
さて、「ひかりのくにテレビ絵本 機動戦士ガンダム1」はその内容から、テレビ放送始まって間もなくの発売と思われます。さっそく中身を見てみましょう。
<あらすじ>
ブライト艦長に率いられ、サイド7に向かうホワイトベースをザクが急襲!! シャアの率いるザクはサイド7を破壊していきました。
「うふふふふ……これでおれのかちだ!」(原文ママ)とシャアがつぶやいた時、「きょだいなロボットがたちはだかった。せいぎのロボットガンダムだ」(原文ママ)。
ガンダムハンマーを振り回すガンダムに対し、ザクはミサイルで応戦します。さらにリュウとハヤトがコアファイター、ガンキャノンで出撃。さらに「ぼくはガンタンクだ!」(原文ママ)との頼もしい叫びとともに、ブライト艦長自らもガンダムを援護します。そして、ついにガンダムのビームサーベルがザクを切り裂きました。「つよいぞ、ガンダム! たたかえ、ガンダム! へいわのために」(原文ママ)。
まさに主題歌「翔べ!ガンダム」の歌詞そのままの、熱血ロボットアクションが繰り広げられます。一応、サイド7が物語の舞台ですが、背景はずっと宇宙のままでした。これはサイド7内部の美術設定が出来上がる前に、編集作業が完了したと考えるべきかもしれませんね。
「ひかりのくにテレビ絵本 機動戦士ガンダム(大百科)」は事実上の第2集です。あきらかに放送終了後の発売であり、その内容には映像作品の内容がしっかりと反映されています。内容はまさにモビルスーツ大百科。さっそく中身を見ていきましょう。
■小学館編
小学館とガンダム、その接点は普通に考えれば出てきません。 これまで、小学館の雑誌がガンダムの掲載誌になった事例はない(※1)からです。ところが、意外なところにガンダムが載っていました。それが「小学館のおもしろ図鑑11 びっくりロボットの世界」です。「小学館のおもしろ図鑑」は1970年代の人気叢書「なぜなに学習図鑑」の1980年代バージョンで、装丁などもそっくりでした。
この「びっくりロボットの世界」は写真やイラストを用いた図解を中心にした構成で、様々な角度からロボットを紹介しています。現実に存在するロボットから小説、映画……さらにはカレル・チャペックの『ロボット』の絵物語まで載っているという、きわめてアカデミックな内容でした。
そして、本書のトップで紹介されているロボットこそ……ガンダムなのです!!
実は、かようなテレビキャラクターを混ぜ込んだ構成は、前身である「なぜなに学習図鑑」でもよく見られました。例えば「スピードくらべ」の表紙に堂々とウルトラセブンが飛んでいたりとか、このなんとも言えない感覚は1970年代から引き継がれたものだったのです。
ちなみにガンダムは「アニメに出てくるロボットには、どんなものがありますか」という質問の回答として登場します。ガンダムは合計6ページに渡って掲載され、1982年(本書の発行年)を代表するロボットとして、堂々と巻頭ページを飾ったのです。なお、内容に関しては、映画化以降の本なので基本的には映像準拠で書かれています。
ガンダムの他には、トライダーG7、ダイオージャ、ゴーディアン、ゴールドライタン、大巨神(ヤットデタマン)、ゴライオン、ゴッドシグマ、イデオン、ダルタニアス、アラレちゃん、ドラえもん、鉄腕アトムが登場しました。さらに巻末には「ヒーローロボット名まえあて」なるクイズ企画もあり、図版に当時の玩具が使われています。もちろん、クローバーのガンダムの玩具(ガンプラではなく!)もズラリと載っていました。今となってはこれも貴重な資料と言えるでしょう。
※1 情報コーナーにチラリと載るくらいのことはあっても、マンガや連載記事が掲載されたことはありませんでした。
「びっくりロボットの世界」はガンダムそのものの本ではありませんが、小学館の本であることと、学習図鑑にガンダムが扱われていたという事象により、あえて取り上げさせていただきました。
(第4回/終)
次回の更新は11月15日(木)17時予定です。
【プロフィール】
五十嵐浩司(いがらし・こうじ)
ファーストガンダムを朝6時から放送し、あまつさえ26話で打ち切った青森県で生まれ育つ。本業は編集者。
サンライズ作品関連では「ガンプラ・ジェネレーション」(講談社)、「蒼き流星SPTレイズナーコンプリートワークス」(新紀元社)、「ガンダムX」「バイファム」「トライダーG7」「ダイオージャ」「ゴウザウラー」「メタルジャック」「エクスカイザー」~「ダグオン」(以上、DVD解説書)などを手がける。
最新作はファンコレ「ウルトラマンメビウス アーカイブドキュメント」(朝日ソノラマ)。
タルカス所属。
■ひかりのくに編
株式会社ひかりのくにが、テレビキャラクター関連の絵本を出し始めたのは1969年の『ひみつのアッコちゃん』が最初のようです。同社はそれ以前から、そのものズバリ「ひかりのくに」という題名の絵本を出版しておりました。フレーベル館の「キンダーブック」と同様に、幼稚園に直接の販路を持っていたので、その知名度は比較的高いのではないでしょうか。もちろんテレビキャラクター絡みの「ひかりのくにテレビ絵本」については、普通に書店で売られています。
さて、「ひかりのくにテレビ絵本 機動戦士ガンダム1」はその内容から、テレビ放送始まって間もなくの発売と思われます。さっそく中身を見てみましょう。
<あらすじ>
ブライト艦長に率いられ、サイド7に向かうホワイトベースをザクが急襲!! シャアの率いるザクはサイド7を破壊していきました。
「うふふふふ……これでおれのかちだ!」(原文ママ)とシャアがつぶやいた時、「きょだいなロボットがたちはだかった。せいぎのロボットガンダムだ」(原文ママ)。
ガンダムハンマーを振り回すガンダムに対し、ザクはミサイルで応戦します。さらにリュウとハヤトがコアファイター、ガンキャノンで出撃。さらに「ぼくはガンタンクだ!」(原文ママ)との頼もしい叫びとともに、ブライト艦長自らもガンダムを援護します。そして、ついにガンダムのビームサーベルがザクを切り裂きました。「つよいぞ、ガンダム! たたかえ、ガンダム! へいわのために」(原文ママ)。
まさに主題歌「翔べ!ガンダム」の歌詞そのままの、熱血ロボットアクションが繰り広げられます。一応、サイド7が物語の舞台ですが、背景はずっと宇宙のままでした。これはサイド7内部の美術設定が出来上がる前に、編集作業が完了したと考えるべきかもしれませんね。
▲サイド7に向かうホワイトベース。「みろ、あれがわれわれのきちサイドセブンだ」(原文ママ)とブライトが叫ぶ。しかしご覧のとおり、紙面にいるのはアムロである。この絵本は登場人物の名前が入っていないので、ガンダム本編を知らない人には誤解をまねく恐れもあったのだ。
▲ザクがサイド7に襲いかかる場面……だが、どう見てもザクが巨大すぎる。ビグ・ザムやサイコガンダムだって比べものにならないくらい大きい!! ホワイトベースは生きのびることができるか!?
▲「いくぞ! モビル・スーツ! ガンダムがあいてだ」「なまいきな。これをうけてみろ!」(原文ママ)ザクはどこからかミサイルを発射して、ガンダムを攻撃!! よく見たら、本書に登場するザクはすべて手ぶらだったのだ。「EMシリーズ」の第1集、「栄光社TVうたのえほん」も同様であり、ザクマシンガンはかなりギリギリまでデザインが決まらなかったことが伺える。
「ひかりのくにテレビ絵本 機動戦士ガンダム(大百科)」は事実上の第2集です。あきらかに放送終了後の発売であり、その内容には映像作品の内容がしっかりと反映されています。内容はまさにモビルスーツ大百科。さっそく中身を見ていきましょう。
▲いきなりコロニー落とし作戦からスタート。ザクの仕様が説明されている。どう見ても、ガンダムよりもザクが目立っていることがわかる。この頃のジオン軍モビルスーツは、人気キャラクターとして認知されていたようだ。
▲第12話を彷彿とさせる、ガンダムとグフの闘い。ハイパー・バズーカが第9話まで使用されたツートンカラータイプになっているところが、むしろマニアック。グフのヒートサーベルがビーム・サーベルと表記されている点にも注目したい。この頃はまだ公式名称が存在しなかったのである。
▲こちらは第30話をモチーフにしたと思しき、ガンダム対シャアのズゴック。しかし、本文によると「さいごはひっさつビーム・サーベルでこなごなにはかいされてしまった」(原文ママ)……。ズゴックの爪は「アイアン・ネール」と呼ばれている。このように児童書から生まれた名称が後に公式になった例も存在していた。
▲クライマックスはガンダムとジオング。ズゴックを粉々に破壊されたシャアだが、脱出の名人ぶりを発揮し、ガンダムとの最終決戦に臨んだということだろうか? なお、本書のセル画は中村一夫作画監督回のごときタッチで描かれており、非常に映像のイメージに近づけられている。
▲「ひかりのくにテレビ絵本」として発売された『機動戦士ガンダム』シリーズは全2巻。第2集「大百科」の表紙イラストは児童誌のグラビアでお馴染みの渡辺正美氏による。背景のドムがいかにも当時っぽい。
▲裏表紙。同じセル画のガンダムでも、描き方によってここまで印象が変化するのだ。ちなみに定価は第1集は280円で、後に 300円に値上げされている。第2集は300円であった。
■小学館編
小学館とガンダム、その接点は普通に考えれば出てきません。 これまで、小学館の雑誌がガンダムの掲載誌になった事例はない(※1)からです。ところが、意外なところにガンダムが載っていました。それが「小学館のおもしろ図鑑11 びっくりロボットの世界」です。「小学館のおもしろ図鑑」は1970年代の人気叢書「なぜなに学習図鑑」の1980年代バージョンで、装丁などもそっくりでした。
この「びっくりロボットの世界」は写真やイラストを用いた図解を中心にした構成で、様々な角度からロボットを紹介しています。現実に存在するロボットから小説、映画……さらにはカレル・チャペックの『ロボット』の絵物語まで載っているという、きわめてアカデミックな内容でした。
そして、本書のトップで紹介されているロボットこそ……ガンダムなのです!!
実は、かようなテレビキャラクターを混ぜ込んだ構成は、前身である「なぜなに学習図鑑」でもよく見られました。例えば「スピードくらべ」の表紙に堂々とウルトラセブンが飛んでいたりとか、このなんとも言えない感覚は1970年代から引き継がれたものだったのです。
ちなみにガンダムは「アニメに出てくるロボットには、どんなものがありますか」という質問の回答として登場します。ガンダムは合計6ページに渡って掲載され、1982年(本書の発行年)を代表するロボットとして、堂々と巻頭ページを飾ったのです。なお、内容に関しては、映画化以降の本なので基本的には映像準拠で書かれています。
ガンダムの他には、トライダーG7、ダイオージャ、ゴーディアン、ゴールドライタン、大巨神(ヤットデタマン)、ゴライオン、ゴッドシグマ、イデオン、ダルタニアス、アラレちゃん、ドラえもん、鉄腕アトムが登場しました。さらに巻末には「ヒーローロボット名まえあて」なるクイズ企画もあり、図版に当時の玩具が使われています。もちろん、クローバーのガンダムの玩具(ガンプラではなく!)もズラリと載っていました。今となってはこれも貴重な資料と言えるでしょう。
※1 情報コーナーにチラリと載るくらいのことはあっても、マンガや連載記事が掲載されたことはありませんでした。
▲「小学館のおもしろ図鑑11 びっくりロボットの世界」は『めぐりあい宇宙』公開直前の1982年2月20日発行。定価 690円。表紙のガンダムとアムロが相当にインパクト強し!!
▲巻頭からいきなりガンダムとザクの対決!! ストーリーダイジェストも掲載されている。なぜかカットのセレクトは第34話が中心となっていた。他にガンダムの内部図解も掲載。
▲「ガンダムに登場するロボットたち」……一応、ロボットの図鑑なので、モビルスーツもこう呼ばれているようだ。なぜかシャア専用カラーのモビルスーツが一体もいない。ゲルググもわざわざ量産型をチョイスしている。
「びっくりロボットの世界」はガンダムそのものの本ではありませんが、小学館の本であることと、学習図鑑にガンダムが扱われていたという事象により、あえて取り上げさせていただきました。
(第4回/終)
五十嵐浩司(タルカス)
次回の更新は11月15日(木)17時予定です。
【プロフィール】
五十嵐浩司(いがらし・こうじ)
ファーストガンダムを朝6時から放送し、あまつさえ26話で打ち切った青森県で生まれ育つ。本業は編集者。
サンライズ作品関連では「ガンプラ・ジェネレーション」(講談社)、「蒼き流星SPTレイズナーコンプリートワークス」(新紀元社)、「ガンダムX」「バイファム」「トライダーG7」「ダイオージャ」「ゴウザウラー」「メタルジャック」「エクスカイザー」~「ダグオン」(以上、DVD解説書)などを手がける。
最新作はファンコレ「ウルトラマンメビウス アーカイブドキュメント」(朝日ソノラマ)。
タルカス所属。
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