2007年11月15日 (木)
秋田書店編
創刊当初は、宮崎駿氏も愛読していたという『砂漠の魔王』(作・福島鉄次)など絵物語中心の雑誌でしたが、次第にマンガが中心となっていきます。1970年代初めの『仮面ライダー』ブーム時にはテレビキャラクターのマンガ作品をメインに据えた内容になり、その後一時期、アイドル歌手に寄った時期もありました。
そして『ガンダム』は再びテレビキャラクターが活気を取り戻していた時代に掲載されています。なお、「冒険王」はサンライズ作品のマンガ作品を多数連載しています。この機会ですし、列挙してみましょう。カッコ内は執筆を担当したマンガ家さんです。
● 『無敵超人ザンボット3』 (岩田廉太郎)
● 『無敵鋼人ダイターン3』 (岡崎 優)
● 『機動戦士ガンダム』 (岡崎 優)
● 『科学冒険隊タンサー5』 (金沢 博)
● 『無敵ロボ トライダーG7』 (木村知生)
● 『最強ロボ ダイオージャ』 (津原義明)
● 『伝説巨神イデオン』 (古城武司)
● 『太陽の牙ダグラム』 (岡崎 優)
● 『戦闘メカ ザブングル』 (愛沢ひろし)
● 『聖戦士ダンバイン』 (杉山たかゆき)
● 『装甲騎兵ボトムズ』 (岡崎 優)
● 『銀河漂流バイファム』 (シュン・タロー)
● 『重戦機エルガイム』 (杉山たかゆき)
● 『巨神ゴーグ』 (のなかみのる)
こうして見てみると、「冒険王」は1977年から休刊の1984年6月号まで、サンライズが制作したテレビシリーズ全作品のマンガを掲載していることがわかります。1981年10月の「コミックボンボン」創刊以前は、マンガ掲載権を事実上独占していたわけです。
なお、この中でコミックスが発売されたのは『ガンダム』と『イデオン』のみで(2007年11月現在)、今後の単行本化を強く望みたいところです。
話を本線に戻しましょう。先に述べた通り、『機動戦士ガンダム』のマンガ連載は突発的なものではなく、あくまでサンライズ作品を掲載していく流れの中で行われたことがおわかりになると思います。作画は『ダイターン3』に続き、ダイナミックプロ出身の岡崎優氏が担当しました。岡崎氏は過去に『キューティーハニー』『UFOロボ グレンダイザー』(ともに「テレビマガジン」)など、多くのテレビマンガを手がけたベテラン作家です。なお、「冒険王」連載分の単行本は秋田書店と大都社から発刊されていました。
▲『ガンダム』は、主に「冒険王」付録の「冒険王コミック文庫」に掲載された。「冒険王」は昔ながらの別冊付録スタイルを、長い間に渡って続けていた雑誌であった。画像は第2回扉。サブタイトルは単行本収録時と異なっている。連載は1979年5月号から行われており、TVの放送終了に合わせて1980年2月号で終了した。
マンガ連載以外の企画としては、1979年8月号の第1付録「機動戦士ガンダム デラックスバインダー」が挙げられます。これは表紙には厚手の紙を使用した、文房具プラス手帳的な体裁の付録でした。ちなみに第2付録は「バトルフィーバーJスーパーメカ完全図解」ポスターです。
内容は「秘密書類集め・クイズ」「ボックス・クイズ」「ホワイト・ベース迷路」「ニセのガンダム・クイズ」「ガンダムわんぱくメモ」「なかよし住所録」のほか、カレンダーや主題歌紹介ページがあります。いかにも児童誌の付録という感じですね。
この後、映画化を機にガンダムの雑誌付録は加速的に増加していきます。例えば「アニメージュ」1981年4月号の「機動戦士ガンダム効果音集」(フォノシート)のような変わり種まで作られるわけですが、その原点として、デラックスバインダーは記憶に留められるべき存在かもしれません。
▲デラックスバインダーの表紙。銀と蛍光ピンクという特色インクを2色使用した、ゴージャスなものとなっている。表紙イラストは、いたはししゅうほう氏。いたはし氏はこの時期、『バトルフィーバーJ』のキャラクターデザイン、『ザ☆ウルトラマン』のマンガ連載(「小学五年生」)にも携わっていた。
▲中には1979年8月のカレンダーが綴じ込まれている。この間にTVでオン・エアされたエピソードは第18話から第21話。ランバ・ラル隊と死闘を繰り広げている頃である。奇しくも、今年2007年と曜日が合致していることが判明(笑)。
▲総扉を開くと、いきなりセイカノートとタイアップしたプレゼントコーナーが登場。スケッチブックの表紙を見る限り、ガンキャノン、ガンタンクがガンダムと同格に扱われていることがわかる。スプレーミサイルランチャーを装着したガンキャノンが表紙の「セイカフレッシュ50」は、資料としても貴重ではないだろうか。
▲最終ページは主題歌が掲載。歌詞の前に入っているカウントダウンに注目したい。「翔べ!ガンダム」のけっこう長いイントロに、実はカウントダウンが入る予定だとしたら……!? ちょっと気になるページである。
その後「冒険王」は映画公開に合わせて「別冊冒険王ビッグまんがBOOK 機動戦士ガンダムまんが特集号」を発売します。これは、「冒険王」に連載された全10話を収録したもので、雑誌掲載バージョンをまとめて読める唯一の本となっています(2007年11月現在)。
▲「ビッグまんがBOOK」の判型はA5判、発行日は1981年8月15日。映画『ガンダムⅡ』の公開に合わせて発売されている。定価は390円であった。なお、表紙イラストは映画『ガンダムⅢ』公開時に発売された「サンデー・コミックス」第1巻に流用。
▲第1話の扉絵は岡崎氏の手によって、カラーで新たに描き下ろされた。また、この時点で各話のサブタイトルは、TVに近いものへ変更されている。
▲巻頭には「ガンダムジャンボポスター」が綴じ込まれていた。こちらは岡崎氏の絵ではないようだ。
のちに発売された「サンデー・コミックス」(秋田書店)と「STコミックス」(大都社)ではエピソードが欠けたまま刊行されており、“完全収録”を謳っていた「AKITA TOP COMICS WIDE」(秋田書店)で全話収録されたものの、「STコミックス」刊行時に手を加えられた原稿を使用しているため、雑誌とは若干内容が異なっているのです。それゆえ、この「機動戦士ガンダムまんが特集号」は重要な資料と言えるでしょう。
なお、「機動戦士ガンダムまんが特集号」は、岡崎氏による映画『ガンダムⅢ』のマンガ作品を掲載した第2集も発売されています。
(第5回/終)
五十嵐浩司(タルカス)
次回の更新は12月13日(木)17時予定です。
【プロフィール】
五十嵐浩司(いがらし・こうじ)
ファーストガンダムを朝6時から放送し、あまつさえ26話で打ち切った青森県で生まれ育つ。本業は編集者。
サンライズ作品関連では「ガンプラ・ジェネレーション」(講談社)、「蒼き流星SPTレイズナーコンプリートワークス」(新紀元社)、「ガンダムX」「バイファム」「トライダーG7」「ダイオージャ」「ゴウザウラー」「メタルジャック」「エクスカイザー」~「ダグオン」(以上、DVD解説書)などを手がける。最新作は「ライダーヒーロー大全」「トランスフォーマービジュアルワークス」(ともにミリオン出版)。
タルカス所属。
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