Gundam Meets Businessの9回目は、イノベーションを考えるときに見逃しがちなものについてお話しします。
激変するビジネス環境のなか、企業のトップから発せられる言葉としてよく挙げられるのが「グローバリゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」そして「イノベーション」です。
今回はイノベーションを成功に導くヒントをガンダムに当てはめてみましょう。
激変するビジネス環境のなか、企業のトップから発せられる言葉としてよく挙げられるのが「グローバリゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」そして「イノベーション」です。
今回はイノベーションを成功に導くヒントをガンダムに当てはめてみましょう。
次のような考え方に沿ったイノベーションを見かけることがあります。
「最近はあまり調子が良くないが、ビジネスの成長を続けなくてはならない。」
↓
「既存のラインナップでは不十分だと思われる。」
↓
「つまりイノベーションが必要だ。」
↓
「イノベーションは消費者に求められる新しいアイデアである。」
↓
「だから売れるはずだし、すぐに利益になるはずだ。」
そうして、1年目や2年目から利益を出すことを期待します。せっかく何年もかけて研究してきたのに、導入して1年目で投資を絞り始め、2年目で撤退が決まり、なかったこととして歴史に埋もれていきます。
なにが問題なのでしょう。この考え方は一見論理的に見えますが「イノベーション≒すぐに利益になるアイデア」と捉えているところに悲劇が隠れています。製品カテゴリーにもよりますが、初年度から利益を出せる新商品にお目にかかることはあまりありません。研究開発費は数年にわたって償却していくとしても、導入初期には投資も掛かるものです。
もうひとつの悲劇は、イノベーションの成功確率を高く見積もりすぎていることです。イノベーションは新製品と同義で使われることもありますが、そもそもの原義は「新結合」と解されます。いままでにない事物の繋げ方を通して新しい価値ある何かが生むことです。変数の多い組み合わせでは、正解に対して選択肢が膨大になっていきます。必然的に、確率は下がるでしょう。
以前、イノベーションの新しい考え方などを開発するチームにいたときのことです。ランチをいっしょにとっていた同僚が質問をしてきました。
「航空機技術の発展にもっとも寄与した発明を知っているかい?」
彼はマサチューセッツ工科大学の出身で、パイロットの免許を持つエンジニアでした。
「軽くて丈夫な素材かな?」
「違うね。素材じゃない」
「じゃあ、エンジンかな。レシプロエンジンからジェットエンジンに変わったとか。熱核ジェットエンジンとか」
「エンジンでもない。熱核ジェットエンジンってなんだ?実用化されてないだろう」
「素材でもエンジンでもないなら、航空力学とか流体力学とか、知識かな」
「知識は大事だね」
などという会話を経て、彼は答えを教えてくれました。
「パラシュートだよ。」
「!?」
「最近はあまり調子が良くないが、ビジネスの成長を続けなくてはならない。」
↓
「既存のラインナップでは不十分だと思われる。」
↓
「つまりイノベーションが必要だ。」
↓
「イノベーションは消費者に求められる新しいアイデアである。」
↓
「だから売れるはずだし、すぐに利益になるはずだ。」
そうして、1年目や2年目から利益を出すことを期待します。せっかく何年もかけて研究してきたのに、導入して1年目で投資を絞り始め、2年目で撤退が決まり、なかったこととして歴史に埋もれていきます。
なにが問題なのでしょう。この考え方は一見論理的に見えますが「イノベーション≒すぐに利益になるアイデア」と捉えているところに悲劇が隠れています。製品カテゴリーにもよりますが、初年度から利益を出せる新商品にお目にかかることはあまりありません。研究開発費は数年にわたって償却していくとしても、導入初期には投資も掛かるものです。
もうひとつの悲劇は、イノベーションの成功確率を高く見積もりすぎていることです。イノベーションは新製品と同義で使われることもありますが、そもそもの原義は「新結合」と解されます。いままでにない事物の繋げ方を通して新しい価値ある何かが生むことです。変数の多い組み合わせでは、正解に対して選択肢が膨大になっていきます。必然的に、確率は下がるでしょう。
以前、イノベーションの新しい考え方などを開発するチームにいたときのことです。ランチをいっしょにとっていた同僚が質問をしてきました。
「航空機技術の発展にもっとも寄与した発明を知っているかい?」
彼はマサチューセッツ工科大学の出身で、パイロットの免許を持つエンジニアでした。
「軽くて丈夫な素材かな?」
「違うね。素材じゃない」
「じゃあ、エンジンかな。レシプロエンジンからジェットエンジンに変わったとか。熱核ジェットエンジンとか」
「エンジンでもない。熱核ジェットエンジンってなんだ?実用化されてないだろう」
「素材でもエンジンでもないなら、航空力学とか流体力学とか、知識かな」
「知識は大事だね」
などという会話を経て、彼は答えを教えてくれました。
「パラシュートだよ。」
「!?」
パラシュートは航空機技術の一部という感じは全くありません。でも、パラシュートが開発されたことで、テストパイロットの安全が担保されるようになりました。パイロットの安全が担保されたことで、既存概念を超える、思い切った設計を実機で試せるようになったのです。
生還するから、また飛べます。そして、どのような不調が起きたのか、リアルなフィードバックを得られます。飛ぶたびに墜落しても、知識を持ち帰り開発は前に進みます。
航空機のイノベーションと同様、ビジネスでも創造的で独創的な新結合のアイデアがなくては、そもそもイノベーションは始まりません。同時に、そうしたアイデアのほとんどは失敗します。失敗によるダメージを軽減する仕組みこそが、イノベーションを促すのです。新商品は1,000個のアイデアに対して3個しか成功しない、という業界もあります。ハズレることを前提にすることで、パラシュートを装着するように、ハズレを大きなダメージにしない方法が必要です。
所属していたイノベーションチームには、"Make small, fail fast, learn a lot" という言葉がありました。「少し作り、早く失敗し、大きく学ぼう」といった意味です。
ジオン軍機にはそうした機体が数多くあり、イノベーションを尊ぶ組織の気風が伺えます。リックドムの下半身をもつ高機動試作型ザクや、ビグロに先行するザクレロ、形式番号がYMS-ではじまる各種の実験機は、いずれも "Make small, fail fast and learn a lot" を具現化したものだったでしょう。
こうしたイノベーションは実験として実戦に投入されました。結果として実績を出すことはあっても、戦況に関わる戦績を期待されることはなかっただろうと思います。
ビジネスのイノベーションも、年間の売り上げ計画には組み込まず、あくまで「実験の一環として市場にテスト導入」をしてみましょう。そうすれば、失敗時の大きなダメージを回避できます。イノベーションに閉塞した状況の打破を期待するならば、失敗を前提としダメージコントロールとラーニングの収集を意識した計画進行をすることで、実質的な成功の確率を高められるでしょう。
GMBとは
ガンダムをこよなく愛し、ガンダムでビジネスを語る、謎でもないマーケターユニット。
音部 大輔
日米P&G、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、資生堂などで、マーケティング担当副社長やCMOとしてマーケティング組織を構築・指揮し、持続的成長を実現。2018年より株式会社クー・マーケティング・カンパニー代表取締役。国内外のさまざまなクライアント企業にマーケティング組織強化など提供。博士(経営学 神戸大学)。日本マーケティング学会 理事。日経BPマーケター・オブ・ザ・イヤー審査員、日経BtoBデジタル・マーケティングアワード審査員。著書に『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(宣伝会議)、『マーケティングプロフェッショナルの視点』(日経BP)
田中 準也
新卒でクレディセゾン入社。その後ジェイアール東日本企画、電通、トランスコスモス、メトロアドエージェンシー、電通レイザーフィッシュ(現電通アイソバー)を経て、2015年インフォバーン入社。2017年に取締役に就任。2019年より取締役COO。マスからデジタルまで精通し、オンラインとオフラインを横断する総合的なコミュニケーションデザイン及び新規事業開発・推進が得意。
一般社団法人マーケターキャリア協会 理事。
豊後 祐紀
2017年4月30日までトライバルメディアハウス コンサルティング営業部 熱狂ブランドマーケティングチームに所属。大手製菓会社や、大手化粧品メーカーなどのブランディングを提案し、実行。その後、2017年4月より読売広告社のシンガポール支店であるFLP YOMIKOに所属し、主に日清食品シンガポールのブランディングを担当。2017年12月より子供の頃の夢だったゲームのマーケターとなるべく、DMM.comに所属。ブランディングやプロモーションを担当する。
新卒でクレディセゾン入社。その後ジェイアール東日本企画、電通、トランスコスモス、メトロアドエージェンシー、電通レイザーフィッシュ(現電通アイソバー)を経て、2015年インフォバーン入社。2017年に取締役に就任。2019年より取締役COO。マスからデジタルまで精通し、オンラインとオフラインを横断する総合的なコミュニケーションデザイン及び新規事業開発・推進が得意。
一般社団法人マーケターキャリア協会 理事。
豊後 祐紀
2017年4月30日までトライバルメディアハウス コンサルティング営業部 熱狂ブランドマーケティングチームに所属。大手製菓会社や、大手化粧品メーカーなどのブランディングを提案し、実行。その後、2017年4月より読売広告社のシンガポール支店であるFLP YOMIKOに所属し、主に日清食品シンガポールのブランディングを担当。2017年12月より子供の頃の夢だったゲームのマーケターとなるべく、DMM.comに所属。ブランディングやプロモーションを担当する。
[Gundam Meets Business] Back Number
- 新連載「ビジネスのヒントは宇宙世紀にあり! ~ Gundam Meets Business ~」はじめます
- #01 ビジネスで大事な「戦略」のコツをガンダムで考える<目的編>
- #02 ビジネスで大事な「戦略」のコツをガンダムで考える<資源編>
- #03 大きな環境変化のときこそ重要視される「パーパス」をガンダムで語る
- #04 リーダーであってもなくても必要な「リーダーシップ」をガンダムで語る
- #05 リーダーシップを構成する5つの要素をガンダムで例える
- #06 ブランドの理解に不可欠な機能とベネフィット
- #07 日々の現場の活動やオペレーションで、正しく意思決定するために「OODAループ」をガンダムで理解する
- #08 競合の動きに踊らされることなく目的を遂行するには?
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