2007年12月4日 (火)
第21話「激闘は憎しみ深く」
ランバ・ラルの信頼に応えようとするハモンは、出撃に際して身を清める。2人の絆が、精神・肉体の両面であったことが浮かびあがる描写である。
【乏しい装備と人の信頼】
ラルへの仇討ちにしてはあまりに貧しいハモンたちの装備。しかし、ハモンは部下たちの信頼によって支えられている。出撃に際して語る演説にも隊員に声をかける様にも、ラル同様にハモンが慕われる理由がよく反映されている。貧弱な武装は逆に「それでもやる」という、ラル隊内部の結束の硬さと熱さを浮き彫りにする。
ラルの死を目の当たりにしたせいか、リュウが独房に訪ねてきたときのアムロの対応は、前回と違って落ち着いている。積み重ねによるこうした微妙な変化を、TVシリーズでは描くことが可能なのだ。
【損耗激しいホワイトベース】
エンジンは不調、艦内でのガンダムへの換装も不可と、かなり悲惨な状態だ。攻撃による物的破損も激しいが、深刻なのは人的損耗であることが、メカマンの怪我という言葉で示されている。
【ハモンたちの戦術】
ハモンたちは単に情だけで動いているわけではない。その戦い方は二段構え三段構えで、非常に理にかなったものとして描かれている。ガンダムの出方次第で、作戦がどの段階でつまずいても必中とする戦術は、リュウの死という大きなものと引換でないと勝てないほど強固なものだった。
『ガンダム』は人の死に対して、非常にドライでストイックな描写を中心としてきた。だが、コア・ファイターの残骸を前にして、残されたクルーは口々にリュウの死に対する自責の言葉を口にする。涙あふれるそのウェットさは、この局面までに積み重ねられたリュウの献身ぶりとともに、強い印象を残す。そして、リュウの命がけの主張は、ホワイトベースのクルーとその物語に、大きな節目をもたらすのである。
氷川竜介(アニメ評論家)
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