2007年7月17日 (火)
第1話「ガンダム大地に立つ!!」
第1話でまず圧倒されるのは、宇宙世紀0079の世界を伝えるイントロ部分だ。70年代のロボットアニメは無国籍的な舞台で物語が展開する作品が多かった。ところが『ガンダム』では物語開始以前に百年(世紀)単位の宇宙開拓史があり、そこに生きる人が国家を打ち立て、しかしいまだに戦争を止めないという大規模な物語世界と歴史観を提示したのだ。このストーリーは、壮大な叙事詩の一部に過ぎない――そのスケール感は、画期的なことだった。
第1話がもつ最大の魅力は、1本のフィルムとして開巻からラストまで完全な一体感を示して迫ってくることだ。アニメーションディレクターの安彦良和は、第1話に関して全351カットのラフ原画(第一原画)とレイアウトを一人で描きぬいた。その結果産まれた一体感なのである。キャラクターの表情のニュアンスに留まらず、メカの動きのタイミングや空間のボリューム感まで、このフィルムは見事に一人のセンスに貫かれている。
【映画的に緊密な構成】
『ガンダム』では全般に映画的な連続感(コンティニュイティ)を強く感じるが、それは第1話の構成によく現れている。冒頭、ザクの視点で宇宙空間からコロニーを目ざし、その内部に侵入成功するとジーンの視線で民家とフラウ・ボゥを見つめる。すると今度はフラウの視点で民家に入ってアムロを見て、2人がエレカに乗るとベイへとカメラが動く。するとそこにいたサイド7司令からホワイトベースを見て、カメラは艦内へ移動……と、リレーのように緊密な視点のバトンタッチが連綿と続いていくのだ。だからこそ、独特な臨場感が「場」として発生しているのである。
フィルムに引き込まれる感覚を強く抱くのは、誰が何を見ているかが富野監督の演出上で明確だからだ。たとえばアムロが2機目のザクを仕留めるときには、カメラがスッと動いてザクの右胸(コクピットのある位置)へとスライドする。これはコクピットのアムロからの主観的な視線移動を表現している。ビーム・サーベルをザクに挿して抜くまで、その位置関係は緊密で崩れない。この緊迫感が、TV版だけがもつネイティブな持ち味なのだ。
氷川竜介(アニメ評論家)
(C) 創通・サンライズ
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