2007年8月30日 (木)
『父よ、それはソルティックだ!』
皆さんこんにちは。
ドラクエI(*1)初回プレイ時ではコロリと 竜王(*2)に 騙された(*3)、 とってもピュア(*4)な岸本みゆきです。あと、 ガライの墓(*5)では少し 中身が出ました(*6)。
(*1) ドラクエI…日本のTVゲーム史上に燦然と輝くRPGの金字塔。
筆者が中学一年生の時に発売され、生まれて初めて徹夜を経験した。
(*2) 竜王…ドラクエIのラスボス。
あまりに巨体のため、画面表示の一部が隠れてしまう迷惑な敵。
レベル17程度で挑戦すると、絶望的な敗北感を味わえる。
(*3) 騙された…竜王は、世界の半分をやるから仲間にならないかと誘ってくる。
これに乗ってしまうとどうなるか。ネタバレになるので書かないが、
純粋な少年の心を打ち砕くには十分すぎる、悲惨な結末が待っている。
(*4) とってもピュア…今ではすっかりゲスな大人。
(*5) ガライの墓…ドラクエI中盤のロングダンジョン。
Iのダンジョンは少し歩くごとに明かりの範囲が狭まる、階下に下りると
BGMの音階が低くなっていくなど、非常に恐怖感を煽られる。
(*6) 中身が出ました…部屋の明かりを消し、夜中にこっそりドラクエをプレイしていた筆者。
前述のガライの墓の最深部、恐怖も最高潮に達した所で死神の騎士と遭遇、
ショックのあまり我慢していたものが出た。
1/144ザクを入手せよ!
さて、このままタイトルを「ほろ苦ドラクエ道」に変えちゃってもいいぐらいの勢いですが、担当さんに激怒されかねないので、そろそろガンプラの話をしたいと思います。
前回(*7)も書きました通り、僕たちの少年時代は大変なガンプラブームの真っ只中でした。大量に入荷される新作はともかく、初期に発売された1/144 ザク(*8)などは非常に人気で、とても手に入らない状態。
僕は1/60ザクをすでに持っていたんですが、この品薄の1/144ザクがどうしても欲しかった。1/60スケールも迫力があっていいんですが、なにせ1/144スケールは圧倒的に キットの種類(*9)が豊富なので、ガンプラコレクターとしてはこちらのサイズで 統一して(*10)集めたかったんですよ。
今みたいに
ネットオークション(*11)もない時代ですし、自分の足で探すしかない。けど小学生だから、電車に乗って遠出もできないわけですよ。手に入らないとなると、余計に欲しくなるのが
人間のサガ(*12)。もう明けても暮れてもザク、ザク、ザクです。ついにみゆき少年は最終手段、
「親に頼む」(*13)コマンドを使うことにしたのです。
(*7) 前回…読んでね。→ 第1回
(*8) ザク…昔から主人公サイドよりも、敵キャラに興奮することが多かった。
(*9) キットの種類…1stガンダムは劇中に登場する全てのメカが発売された。
それどころか、設定資料にしか存在しないデザインまでもが商品化。
今にして思えば、よくアッグなんかが商売として成立したなと思う。
(*10) 統一して…並べて鑑賞するときに、綺麗に整列されている。
これこそがコレクターの愉悦というか、醍醐味だと思う。
たとえどんなコレクションであれね。
(*11) ネットオークション…筆者はオークション以外でもよくネットで買い物をするのだが、
そのせいかどうかはわからないが、1日に100通以上ものダイレクトメールや
迷惑メールが来る。
(*12) 人間のサガ…手に入れるまでが一番楽しい。色々と深い意味でな。
(*13) 親に頼む…なぜ最終手段かというと、大抵はロクな結果にならないから。
「凄い…5倍以上の入荷量がある!」
賢明な読者の皆さんには、すでにある程度 オチ(*14)が見えているとは思いますが、まあ最後まで読んでください。
みゆき少年の父親は、大阪の ミナミ(*15)で美容室を経営しているオーナー美容師でした。ミナミには高島屋を始め、大丸やそごうなど老舗の 大型百貨店(*16)が軒を連ねており、ガンプラの入荷量もハンパではありません。
みゆき少年はここに目をつけ、この三軒の百貨店を全てチェックしてもらうよう、父親に頼みこみました。1/60ザクのパッケージをよく見せ、「この絵と同じロボットが描かれた少し小さ目の箱があるから、それを買ってきてほしい」。みゆき少年の指示は完璧…のはずでした。
(*14) オチ…関西人は話にオチをつけたがる、などとよく言われるが、
別に我々は笑いの専門教育を受けているわけではない。
(*15) ミナミ…大阪の難波から心斎橋あたりに広がる繁華街。
梅田から北新地にかけての「キタ」と並ぶ、一大歓楽スポットでもある。
中心には道頓堀川が流れており、1985年の阪神タイガース優勝時には、
多くの若者が六甲おろしを斉唱しながら、その身を宙に躍らせた。
ちなみに現在は完全封鎖されており、ダイブは不可能となっている。
(*16)大型百貨店…一時は量販店の安さに押されがちだったが、
最近は落ち着いた上質の接客などで見直されている。
「父さん、酸素欠乏症に…」
まあ顔のパイプの意匠とかね、確かにちょっと似てる部分はありますよ。同じ 大河原邦男先生(*17)のデザインですしね。頑張ればザクに見えないこともない…わきゃねーだろ!どっからどう見ても ソルティック(*18)だろうがコレは!
皆さんも写真を見比べてみてください。これが同じに見えますか?見えませんよね?まあ世の中にはソルティックどころか、間違って クラブガンナー(*19)を買ってくる親御さんもいたらしいですから、ウチの親はまだマシか…。
「どこにも売ってないなんてお前が言うから、パパかなり覚悟を決めて探しに行ってきたけど、一軒目でちゃんと売ってたぞ?」「マジでっ!?」
笑顔で袋の中から箱を取り出す父。あの時ほど父の顔が頼もしく、大きく見えたことがあったでしょうか。そして袋から出てきたソルティック。あの時ほど父が頼りなく見えたことも、おそらくないでしょう。
(*17) 大河原邦男先生…神。
(*18) ソルティック…『太陽の牙ダグラム』に登場するコンバットアーマー。
筆者はあまりダグラムには詳しくないので、興味のある方は御自分で
ネット検索するなりして調べるように。
(*19) クラブガンナー…四本足のコンバットアーマー。もはや人型ですらない。
そして、新たなる戦いの渦へ…
みゆき少年の最終手段は案の定、無念な結果に終わりました。しかしたとえそれがザクでなくとも、ソルティックの箱には親の情愛がいっぱい詰まっているわけです。後日ソルティックを組み上げたみゆき少年は、親の愛に報いるべく、父のお気に入りの メッサーシュミット(*20)の横に並べてあげました。
並び立つコンバットアーマーとドイツ軍戦闘機…合うわけがありませんね。
さて、すっかり親の威厳を失ってしまった父は、息子の信用を取り戻すべく、ある作戦に打って出ました。果たして、その秘策とは…!?
それは、次回の講釈で(*21)。
(*20) メッサーシュミット…第二次大戦で活躍した、ドイツ軍の傑作戦闘機。
筆者がガンダムよりもジオン贔屓なのは、ドイツ軍マニアだった父の
影響があるのかもしれない。
(*21) それは、次回の講釈で…このフレーズを聞くと、
ゴダイゴのガンダーラのイントロが思い浮かぶ人、挙手。
次回は第3回『おもちゃ売り場に戦場を見た』
君は、生き延びることができるか!
次回の更新は 9月27日(木)17時予定です。
【プロフィール】
岸本みゆき(きしもと・みゆき)
1973年生まれ、フリー脚本家。巨大ロボと変身ヒーロー、時代劇をこよなく愛する熱血関西人。現在はテレビアニメ『結界師』のシナリオの他、『SDガンダム三国伝』の構成なども手がけている。
ドラクエI(*1)初回プレイ時ではコロリと 竜王(*2)に 騙された(*3)、 とってもピュア(*4)な岸本みゆきです。あと、 ガライの墓(*5)では少し 中身が出ました(*6)。
(*1) ドラクエI…日本のTVゲーム史上に燦然と輝くRPGの金字塔。
筆者が中学一年生の時に発売され、生まれて初めて徹夜を経験した。
(*2) 竜王…ドラクエIのラスボス。
あまりに巨体のため、画面表示の一部が隠れてしまう迷惑な敵。
レベル17程度で挑戦すると、絶望的な敗北感を味わえる。
(*3) 騙された…竜王は、世界の半分をやるから仲間にならないかと誘ってくる。
これに乗ってしまうとどうなるか。ネタバレになるので書かないが、
純粋な少年の心を打ち砕くには十分すぎる、悲惨な結末が待っている。
(*4) とってもピュア…今ではすっかりゲスな大人。
(*5) ガライの墓…ドラクエI中盤のロングダンジョン。
Iのダンジョンは少し歩くごとに明かりの範囲が狭まる、階下に下りると
BGMの音階が低くなっていくなど、非常に恐怖感を煽られる。
(*6) 中身が出ました…部屋の明かりを消し、夜中にこっそりドラクエをプレイしていた筆者。
前述のガライの墓の最深部、恐怖も最高潮に達した所で死神の騎士と遭遇、
ショックのあまり我慢していたものが出た。
1/144ザクを入手せよ!
さて、このままタイトルを「ほろ苦ドラクエ道」に変えちゃってもいいぐらいの勢いですが、担当さんに激怒されかねないので、そろそろガンプラの話をしたいと思います。
前回(*7)も書きました通り、僕たちの少年時代は大変なガンプラブームの真っ只中でした。大量に入荷される新作はともかく、初期に発売された1/144 ザク(*8)などは非常に人気で、とても手に入らない状態。
僕は1/60ザクをすでに持っていたんですが、この品薄の1/144ザクがどうしても欲しかった。1/60スケールも迫力があっていいんですが、なにせ1/144スケールは圧倒的に キットの種類(*9)が豊富なので、ガンプラコレクターとしてはこちらのサイズで 統一して(*10)集めたかったんですよ。
(*7) 前回…読んでね。→ 第1回
(*8) ザク…昔から主人公サイドよりも、敵キャラに興奮することが多かった。
(*9) キットの種類…1stガンダムは劇中に登場する全てのメカが発売された。
それどころか、設定資料にしか存在しないデザインまでもが商品化。
今にして思えば、よくアッグなんかが商売として成立したなと思う。
(*10) 統一して…並べて鑑賞するときに、綺麗に整列されている。
これこそがコレクターの愉悦というか、醍醐味だと思う。
たとえどんなコレクションであれね。
(*11) ネットオークション…筆者はオークション以外でもよくネットで買い物をするのだが、
そのせいかどうかはわからないが、1日に100通以上ものダイレクトメールや
迷惑メールが来る。
(*12) 人間のサガ…手に入れるまでが一番楽しい。色々と深い意味でな。
(*13) 親に頼む…なぜ最終手段かというと、大抵はロクな結果にならないから。
「凄い…5倍以上の入荷量がある!」
賢明な読者の皆さんには、すでにある程度 オチ(*14)が見えているとは思いますが、まあ最後まで読んでください。
みゆき少年の父親は、大阪の ミナミ(*15)で美容室を経営しているオーナー美容師でした。ミナミには高島屋を始め、大丸やそごうなど老舗の 大型百貨店(*16)が軒を連ねており、ガンプラの入荷量もハンパではありません。
みゆき少年はここに目をつけ、この三軒の百貨店を全てチェックしてもらうよう、父親に頼みこみました。1/60ザクのパッケージをよく見せ、「この絵と同じロボットが描かれた少し小さ目の箱があるから、それを買ってきてほしい」。みゆき少年の指示は完璧…のはずでした。
(*14) オチ…関西人は話にオチをつけたがる、などとよく言われるが、
別に我々は笑いの専門教育を受けているわけではない。
(*15) ミナミ…大阪の難波から心斎橋あたりに広がる繁華街。
梅田から北新地にかけての「キタ」と並ぶ、一大歓楽スポットでもある。
中心には道頓堀川が流れており、1985年の阪神タイガース優勝時には、
多くの若者が六甲おろしを斉唱しながら、その身を宙に躍らせた。
ちなみに現在は完全封鎖されており、ダイブは不可能となっている。
(*16)大型百貨店…一時は量販店の安さに押されがちだったが、
最近は落ち着いた上質の接客などで見直されている。
「父さん、酸素欠乏症に…」
まあ顔のパイプの意匠とかね、確かにちょっと似てる部分はありますよ。同じ 大河原邦男先生(*17)のデザインですしね。頑張ればザクに見えないこともない…わきゃねーだろ!どっからどう見ても ソルティック(*18)だろうがコレは!
(左)ソルティック H8 ラウンドフェイサー
機体名称は「ラウンドフェイサー」だが、開発社名の「ソルティック」で呼ばれることが多い。
(右)おなじみ MS-06 ザクII
機体名称は「ラウンドフェイサー」だが、開発社名の「ソルティック」で呼ばれることが多い。
(右)おなじみ MS-06 ザクII
皆さんも写真を見比べてみてください。これが同じに見えますか?見えませんよね?まあ世の中にはソルティックどころか、間違って クラブガンナー(*19)を買ってくる親御さんもいたらしいですから、ウチの親はまだマシか…。
「どこにも売ってないなんてお前が言うから、パパかなり覚悟を決めて探しに行ってきたけど、一軒目でちゃんと売ってたぞ?」「マジでっ!?」
笑顔で袋の中から箱を取り出す父。あの時ほど父の顔が頼もしく、大きく見えたことがあったでしょうか。そして袋から出てきたソルティック。あの時ほど父が頼りなく見えたことも、おそらくないでしょう。
(*17) 大河原邦男先生…神。
(*18) ソルティック…『太陽の牙ダグラム』に登場するコンバットアーマー。
筆者はあまりダグラムには詳しくないので、興味のある方は御自分で
ネット検索するなりして調べるように。
(*19) クラブガンナー…四本足のコンバットアーマー。もはや人型ですらない。
みゆき少年の最終手段は案の定、無念な結果に終わりました。しかしたとえそれがザクでなくとも、ソルティックの箱には親の情愛がいっぱい詰まっているわけです。後日ソルティックを組み上げたみゆき少年は、親の愛に報いるべく、父のお気に入りの メッサーシュミット(*20)の横に並べてあげました。
並び立つコンバットアーマーとドイツ軍戦闘機…合うわけがありませんね。
さて、すっかり親の威厳を失ってしまった父は、息子の信用を取り戻すべく、ある作戦に打って出ました。果たして、その秘策とは…!?
それは、次回の講釈で(*21)。
(*20) メッサーシュミット…第二次大戦で活躍した、ドイツ軍の傑作戦闘機。
筆者がガンダムよりもジオン贔屓なのは、ドイツ軍マニアだった父の
影響があるのかもしれない。
(*21) それは、次回の講釈で…このフレーズを聞くと、
ゴダイゴのガンダーラのイントロが思い浮かぶ人、挙手。
次回は第3回『おもちゃ売り場に戦場を見た』
君は、生き延びることができるか!
次回の更新は 9月27日(木)17時予定です。
岸本みゆき(フリー脚本家)
【プロフィール】
岸本みゆき(きしもと・みゆき)
1973年生まれ、フリー脚本家。巨大ロボと変身ヒーロー、時代劇をこよなく愛する熱血関西人。現在はテレビアニメ『結界師』のシナリオの他、『SDガンダム三国伝』の構成なども手がけている。
(C) 創通・サンライズ
(C) サンライズ
(C) サンライズ
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