バンダイナムコアーツより6月22日(金)に発売される「機動戦士ガンダムF91 4KリマスターBOX」のCM映像と、封入特典「ドキュメントコレクション」に収録されるインタビューの冒頭部分の一部が、本日公開された。
インタビューは、音響・藤野貞義さんとシーブック役の辻谷耕史さん、セシリー役の冬馬由美さんによる鼎談や、主題歌を担当する森口博子さん、設定制作・井上幸一さん、美術・池田繁美さん、撮影・奥井 敦さん、作画監督・村瀬修功さんが登場。
また、キャラクターデザイン・安彦良和さん、メカニカルデザイン・大河原邦男さん、原作・脚本も担当する富野由悠季監督のインタビュー冒頭も近日公開予定となっている。
封入特典「F91 ドキュメントコレクション」収録インタビュー冒頭公開(一部)
藤野貞義(音響)×辻谷耕史(シーブック・アノー役)×冬馬由美(セシリー・フェアチャイルド役)
――シーブックとセシリーのキャスティングはどのように決まったのでしょうか?
藤野: 『ガンダムF91』に音響制作で参加していた千田啓子さん(音響制作会社「クルーズ」の前社長、音響プロデューサー)と一緒に、安彦さんの描いたキャラクターデザインをいただいた後、そのイメージに合う方の候補を出して、その声を富野監督に聴いてもらって決めていったという感じです。だからオーディションは行っていないですね。シーブック役の辻谷さんは『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で主人公のバーニィを演じてもらって、シーブックにも合うと思って推しました。セシリー役の冬馬さんは『魔神英雄伝ワタル2』をはじめ、いくつかの作品で一緒にお仕事をしていたんですが、その頃は少年役を中心に演じていたので、「女性役をやってもらえたらいいな」という思いがあって、強く推薦したことで決まったという感じですね。
冬馬: 最初に、藤野さんと千田さんにとある音響スタジオのロビーに呼ばれて、「今度、あなたにこの役をやってもらうことになりました」って言われたのを覚えています。ただ、当時はガンダム作品であることや劇場版であることなども詳しくは教えてもらえなかったんですよね。
藤野: まだ詳細が発表される前の段階だったので、詳しくは伝えられなかったんだけど、たまたま会う機会があったのでちょうどいいと思って、決まったことだけ伝えておこうと思って。当時、女性の声優さんはハイトーンな声を出す人が多かったんですが、それを避けたいという思いがあったんです。シーブックをある程度リードする形で、しっとりとした中にも毅然とした部分が欲しかったので、冬馬さんはそのイメージに合っていたんですよね。
辻谷: 僕はある作品のCDドラマのレコーディングの時に、キングレコードの大月俊倫さんから、「辻谷君、ガンダムの主人公に決まったから」といきなり言われたのを覚えていますね。バーニィはオーディションだったんですが、シーブックの時はそんな感じでした。ただ、当時、僕自身が声優からスタートしたわけではないということもあって、ガンダムに関してはまったく知識がなくて。『ポケットの中の戦争』をやった時もあまり自分がガンダムをやっていたという認識もなかったくらいでした。そのせいか、あまり緊張しなかったのかもしれません。
一度歌っただけで、感動の空気が張り詰めるような力を感じました
主題歌歌手 森口博子
――主題歌のオファーを受けた当時、森口さんは“バラドル”として活躍中でしたが、どんな思いで仕事を引き受けましたか?
バラエティのお仕事をやらせて頂き、「歌を歌いたい」という気持ちがとても強かったので、本当にうれしかったです。私のデビュー曲は、『機動戦士Ζガンダム』の主題歌「水の星へ愛をこめて」でしたから、ガンダムは私の原点。そのガンダムの歌をまた歌わせて頂けるというのが、一番の喜びでした。
――「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」は挿入歌で、当初は「君を見つめて -The time I'm seeing you-」が主題歌だったそうですね。
そうなんです。レコーディングの時もカップリングのつもりで歌ったんですが、一度歌っただけで、感動の空気が張り詰めるような力を感じて、「これがカップリング?」と衝撃を受けたんです。あの時の感動は今も忘れられないのですが、歌い終わった後にみんなが「すごくいい曲だね」と感動して、「こっちが主題歌でもいいんじゃないか」という意見が集まって。レコーディングに立ち会ってた富野監督もそれを聴いていらっしゃって、実際に映像と合わせたときに変更なさったのだと思います
――2つの曲を聴いたときのイメージは、どうでしたか?
「君を見つめて」は、富野監督ご自身が作詞なさっていますが、私の楽曲には数少ないロックテイストで、かっこよさの中にデリケートでエレガントな部分がありましたね。ユーロロックのような少しやさしさのある曲調だったので、歌っていて心地よかったです。「ETERNAL WIND」は、1コーラス目は静かに蕩々と入ってきて、2コーラス目にマーチングドラムが入って、徐々にテンションがあがり、3コーラス目でマックスに!起承転結の構成がすばらしい楽曲でした。詞の内容も曲調も、すごく作品のテーマに寄り添っていながらに、アニメを知らない人にも感動が生まれる名曲だと思いました。
ガンダムの新基準を作ろうと思いました
設定制作 井上幸一
――『ガンダムF91』はどのように企画が始まったのでしょうか?
『逆襲のシャア』がひと段落ついたところで、バンダイさんから「新しいガンダムをやりたい」という声掛けがあって企画がスタートしました。制作するにあたっては、監督から新しいチャレンジをしたいからということで、アムロもシャアも登場しない、全く新しい企画でやろうと。辞書をひくと、「規格」の英語訳に「Formula(フォーミュラ)」という言葉が出て来て、これは「基準」という意味も含まれていたので、ガンダムの新基準を作るという意味で『ガンダムF91』とタイトルが付けられることになりました。メカデザインに関しては、『Ζガンダム』以降、出渕 裕さんや伸童社さんにお願いしていたんですが、今回は原点に戻ろうということで、大河原さんに依頼しています。変形や合体といったギミックは付けないけど、何か新しい要素を加えたいとの検討の中で、「口があるガンダム」という案が出ていたので、そうした要素に対してメカデザインとして応えてくれるのは大河原さんしかいないというのもありました。そして、大河原さんにデザインをお願いして新基準を打ち立てるならば、キャラクターデザインは安彦さんに頼みたいという話になり、富野さん、大河原さん、安彦さんが再び揃うことになったという流れですね。
――そうした流れの中で、設定制作という立場はどのようなお仕事をしていたのでしょうか?
当初はシナリオの追いかけをして、脚本の伊東恒久さんのところに何度も通っていました。その後は、キャラクターデザインを追いかけつつ、メインとなるガンダムのデザインを大河原さんのところに依頼、その両名には監督の富野さんの更なる注文をも伝えつつ進行、さらにそこに美術の池田さんも参加することとなり、これらをまとめて追いかけていました。文芸関係の仕事はシナリオが終わると作業終了となるんですが、その後のコンテ作業にもいろいろと意見やアイデアを出しつつ、一方では監督の求める必要な資料の調査などもやっていました。のちに設定画が上がってきたらそれを整理して制作や作画に回したりと、画面作りの元となる作業をしていました。
富野監督作品で、一番好きなようにやらせていただきました
美術 池田繁美
――『逆襲のシャア』に引き続いて、『ガンダムF91』に参加したわけですが、同じ劇場版でも違いはあったのでしょうか?
『逆襲のシャア』は、『機動戦士ガンダムΖΖ』のテレビシリーズからの延長という形で、スタッフ的には慣れた状態で作業に入ったという感じだったんですが、『ガンダムF91』はそこからは時間が空いているのでスタッフも新たに組んでスタートしていて、慣れていないスタッフでの作業に苦労した記憶がありますね。
――『ガンダムF91』は、ガンダムシリーズの仕切り直しという要素が強いですが、美術としてそのような感覚はありましたか?
そうした感覚はなかったですね。それよりも描き込みの細かさが増したという印象が強いです。『逆襲のシャア』は、劇場版ですが「テレビシリーズのレベルアップ」という感覚がありました。それに対して『ガンダムF91』は「純粋な劇場作品として作る」という話ですから。その結果、自然と背景美術の密度も上がっているんです。準備期間も全然違いましたからね。『ガンダムF91』の準備期間はかなりありました。
TVの経験が生きた“分身”シーン
撮影 奥井 敦
――『F91』当時の撮影のことを教えてください。
アナログのカメラを使った撮影手法は80年代後半までにはだいぶ出尽くしていた感じではありました。ただ、撮影台のハード面での改良はすすんでいました。僕らが仕事を始めたころは、「三面台」と呼ばれて、素材を置く面が横に3分割されていて、それぞれが自由にスライドするようにはなっていました。でも、それだとBOOK(画面手前に置く背景素材)、キャラクター、背景を置いてFollow密着引きをするぐらいが精一杯なんです。それが、それを超えるようなカメラワークが求められるようになって、六面で素材を引けるようにしたり、ガラスへのはめ替えをせずに透過光が使えるように最初からガラスをはめたものになったりと、だんだんハード面が改良されていくような、そういう時期でした。
その後にも影響した思い出深い作品です。
作画監督 村瀬修功
――どういった経緯で『ガンダムF91』に関わることになったのでしょうか?
当時、僕は『鎧伝サムライトルーパー』のOVAに関わった流れから、サンライズに席があったんです。OVA作品などを中心に作業する、通称「ゼロスタ」と呼ばれる小規模な班があって、そこに常駐していまして。そこはサンライズの第2スタジオの分室的なスタジオだったんです。『ガンダムF91』が第2スタジオで制作されることに決定したので、その流れで声をかけてもらいました。劇場版を作るため、スタッフに選任されたというよりも、サンライズの2スタ関係者だから声がかかったという感じです。当時から、サンライズはスタジオごとに場所も別れていて、それぞれのプロデューサーがそれぞれのスタジオのスタッフとの関係を大切にしていて、スタジオごとの区分けがかなりはっきりしていたんですよね。『ガンダムF91』は劇場作品ということで、全スタジオに大号令がかかっているかと思いきや、担当スタジオでやってくれという感じでした。
――お話をいただいた時はどのように思われましたか?
僕はそれまでに、マッドハウスなどの劇場作品で動画の仕事にかかわる機会があって、その経験から、劇場アニメのレベルやクオリティを自分なりに規定していたように思います。この内容のカットだったら、このくらいの手間と枚数が必要だという、テレビシリーズとは違う密度でものを作っている仕事を経験して知っていたということですね。だから、基本的にはその感覚でガンダムをやる意気込みを持ってスタジオに入ったという感じです。でも、サンライズとしてはテレビシリーズの延長くらいの規模での制作を考えていたようでした。
6月22日(金)発売予定の「機動戦士ガンダムF91 4KリマスターBOX」は、フィルムの4Kスキャンとリマスターに加えてHDR化も実施し、これまでにない圧倒的映像美を実現。
さらに、絵コンテやラフスケッチなど秘蔵資料を収録したドキュメントコレクションが特典として封入されるほか、ドルビーサラウンド音声成分を分解・再配置し、低音成分を追加した4.1ch アドサラウンド音声を音声特典として収録する。
4K ULTRA HD Blu-ray(UHD BD)と通常のBlu-ray Discの2枚組で、価格は9,200円(税抜)。
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