バンダイナムコアーツより6月22日(金)に発売される「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 4KリマスターBOX」のCM映像と、封入特典「ドキュメントコレクション」に収録されるインタビューの冒頭部分の一部が、本日公開された。
公開されたインタビューは、内田健二プロデューサー、美術監督・池田繁美さん、撮影監督の古林一太さんと奥井 敦さん、作画監督の大森英敏さんと磯 光雄さん、稲野義信さん。
さらに、キャラクターデザイン・北爪宏幸さん、モビルスーツデザイン・出渕 裕さん、メカニカルデザイン・庵野秀明さん、原作・脚本も担当する富野由悠季監督のインタビュー冒頭も近日公開予定となっている。
封入特典「逆襲のシャア ドキュメントコレクション」収録インタビュー冒頭公開(一部)
富野監督の作家性について
プロデューサー 内田健二
――そもそも『逆襲のシャア』の企画はどう始まったのでしょうか。
今では、具体的な発端は覚えていないんです。ただ大前提として『機動戦士ガンダム』の劇場版がヒットして、ガンダムのプラモデルも非常に売れたという状況があったわけです。その後、富野監督は『ガンダム』以外の作品を世に出してきたんですが、そこにまた“ガンダム待望論”が出てきたわけです。それが『機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムΖΖ』だったんですが、商業的実績は期待値は越えられませんでした。そこで「もうちょっと『ガンダム』をやろう」という雰囲気があったのが86年、87年のころなんです。富野監督も『ΖΖ』は若手に委ねた作品だったので、自分としてやりたいこともあったと思います。
――素朴な疑問ですが、そういう状況の中で『逆襲のシャア』の脚本が提出されたら、関係者は驚いたのではないかと思うのですが。たとえばあのラストシーンとか。
違和感はなかったですよ。僕自身は、ガンプラファン的なミリタリズムとか設定考証に重きを置くのはマズいと思っていたんです。ガンダムの魅力というのは、そこにはないだろうと。むしろ青春ものだったり人間ドラマだったりするのがガンダムなので、だから、マニアックなファンが喜びそうなところに細かく分け入らないほうがいいと。一方、富野監督は『伝説巨神イデオン』や『ダンバイン』で、『逆襲のシャア』のラストに通じるようなエンディングを描いてましたから、富野監督の作家性が生み出すものとして、すごく自然に受け止めていましたね。
フレームの違いを忘れないように
美術監督 池田繁美
――『機動戦士ガンダムΖΖ』の流れで『逆襲のシャア』に参加されたわけですよね。
そうです。劇場なので描き込みを細かくしなければいけないなとは思いましたが、TVからの流れもありましたから、がらっと変えることはなかったです。富野監督からのオーダーも、特に大きいものはありませんでした。富野監督は、少しアニメから離れていた後だと最初に必ず「背景が暗い」という指摘をするんです。そして制作していくうちに、そういう指摘は減ってくるんです。『逆襲のシャア』の時は、TVから連続していたので、そういうこともありませんでした。
――劇場版として意識した点はありますか?
意識したのはフレーミングの違いです。当時のTVは4:3のスタンダードで、劇場版はビスタサイズ。フレームが変わるというのは、簡単なように思えて意外に大変なんです。どうしても慣れたフレームで描いてきた時の意識が抜けなくて、横に長くなった左右の部分が絵として全然足りない状態になってしまったりするんです。そこは富野監督からも言われましたね。ただ富野監督の指摘は難しくて「劇場というのは華があるんだよ」なんて言い回しをするんです(笑)。
かなり挑戦的なことをやった作品です
撮影監督 古林一太、奥井 敦
――『逆襲のシャア』ではお二人が撮影監督としてクレジットされています。
古林: 旭プロダクションではサンライズ作品は基本的に奥井君がメインで担当だったんですよ。そんな中、私は『シティハンター』の撮影監督で、シリーズの終わり頃に会社から奥井君と2人でやってほしいと言われました。でも2人で雁首並べて打ち合わせに行ってもしょうがないですしね。自分は奥井君がまとめてきたことをやればいいんだなと思った記憶はあります。だから本格的に打ち合わせした覚えはないですね。そんな暇もなかったですし。
奥井: 暇はなかったですね。劇場版の仕事といっても、レギュラーのTVの仕事をやりながらなんです。スタッフを総動員して、その時のスケジュールの中に埋め込む形でやらざるを得ませんでした。当時は昼夜2交代制で、昼班と夜班に分かれていて、カメラは8台あったかな……。そこにカメラマンと助手の2人一組で撮影していました。
古林: 夜班は、昼班よりも人数が少なくて、5台ぐらいで撮っていた記憶があります。
奥井: 僕と古林さんが、交代班のチーフだったんです。サンライズ作品以外にも、シンエイ動画さんや東京ムービーさんの仕事も入っていたので、チーフは全体のスケジュールを見ながら、メンバーに仕事を差配していました。今考えるとよくやっていましたね(笑)。
古林: 旭プロダクションは、サンライズとの縁が深かったからサンライズの仕事はちょっと特別ではありましたね。だからエースの奥井君がずっと貼り付いていたし、その奥井君をヘルプするために私がいたんだと思います。
奥井: 改めて見直すと、冒頭のクオリティに比べて、後半はあっさりしていて、スケジュールの状況が見えてきますね(苦笑)。
エフェクトで世界観を作ることができた
作画監督 大森英敏
――大森さんはメカやエフェクトの作画監督を担当されたそうですが、本編の制作に先立って富野監督や内田プロデューサーから提案されたことなどありましたか?
はい。富野(由悠季)監督から「エフェクトをどうしようか」と相談されました。劇場作品ということで、僕としてもこれまでのTVシリーズとは明らかに違う熱量を加えたいと思いました。
――何か参考にしたものはありましたか?
特にはありませんでした。例えば、サザビーとνガンダムではファンネルのビームの発射構造自体が違います。そういう部分もかなり考えさせられました。ビーム・サーベルの切り合いについても、『スター・ウォーズ』でやっているような表現にはしたくなかったので、最終的にサザビーとガンダムのサーベルが交わったときは丸くしたんです。ビーム同士が干渉し合うことで、エネルギーボールになってしまう。その次の瞬間、どっちの出力が高いかによってエネルギーボールが消されてしまうんです。その流れから、相手を切断できるのではないかという考え方を設定に載せました。あと宇宙空間の爆発ですね。基本は丸でいきましょうと。富野監督から「煙を出したくない」というオーダーもあったので、光球をフェイドアウトさせる方向で考えました。
多くの学びがあった作品でした
作画監督 磯 光雄(小田川幹雄)
――どういう経緯で参加されたのでしょうか。
『Ζガンダム』で動画、『ガンダムΖΖ』で原画と動画で参加していたので、その流れで制作デスクの高森宏治さんに呼ばれました。当時はスタジオ座円洞にいて『ゲゲゲの鬼太郎』(第3期)をやっていたんですが、ペンネームでアルバイトの原画をやらないかとお話を頂きまして。ギュネイとガンダムの戦闘がほとんどでしたが、その後、「座円洞にも100カットぐらいやってもらえない?」と相談を受けて、当時の社長の向中野(義雄)さんに話をしたら引き受けてくださって。その結果、会社に行って本名で『ガンダム』描いて、帰宅してまたペンネームで『ガンダム』描いて、ってことになっちゃいました(笑)。その後さらに高森さんから作画監督も頼まれることになり。そんな経緯でペンネームと本名の両方でクレジットされています。
「痛み」を感じさせるような演技を
作画監督 稲野義信
――どういう経緯で参加されたのでしょうか。
記憶がだんだんと薄れているんですが……。『戦闘メカ ザブングル』などで仕事をしたことがあった内田(健二)プロデューサーから声をかけられました。スタジオに入ったのが87年10月ごろだったと思うので、だいぶ制作が押し迫ってからですね。北爪さんの手がまわらない部分の、キャラクターの作画監督ということだったので、北爪さんと打ち合わせをしました。その時に、外国人ぽい感じを出したいので首を長めに描いてほしいと言われたことは覚えています。ただ僕自身はキャラクターは似ないほうなので、芝居を修正することが中心で、キャラクターの顔の修正は作画監督だった南 伸一郎さんがやってくださっていたはずです。
6月22日(金)発売予定の「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 4KリマスターBOX」は、フィルムの4Kスキャンとリマスターに加えてHDR化も実施し、これまでにない圧倒的映像美を実現。
さらに、絵コンテやラフスケッチなど秘蔵資料を収録したドキュメントコレクションが特典として封入されるほか、ドルビーサラウンド音声成分を分解・再配置し、低音成分を追加した4.1ch アドサラウンド音声を音声特典として収録する。
4K ULTRA HD Blu-ray(UHD BD)と通常のBlu-ray Discの2枚組で、価格は9,200円(税抜)。
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