いよいよ6月27日(水)に受注締め切りとなる『機動戦士ガンダム00』の版権イラスト&設定資料集「VEDA~MOBILE SUIT GUNDAM 00“Ultimate”ART WORKS&ILLUSTRATIONS」では、前回の中谷誠一氏に続き、アニメーションキャラクターデザイン・作画監督を務めた千葉道徳氏よりコメントが到着した。
高河ゆん氏のキャラクター原案を活かしたアニメーションデザイン、当時の作業や印象的なイラストについて語られているので、紹介していこう。
監督やスタッフと決めた、版権イラストの方針
版権イラストは一枚の絵で見せるものなので、アニメ本編より(表情や衣装を)細かくやっていたり、発注に合わせてアレンジしたようなイラストが多かったりしますね。特に「アニメディア」でのイラストでは、指定されている衣装や小物を設定として起こしていない場合も多かったので、そういった場合は設定を新たに起こしたり、(設定がなくても)描ける人が作画を担当しています。
『00』で行えた様々なチャレンジ
Blu-ray / DVDなどオフィシャルのパッケージに関しては、監督やデザイナーさんのプランがあった上で、中谷誠一さんと私とでレイアウトを交互に切り合いながら進めました。こういうパッケージ関係の表紙で意識していたのは、緊張感ですね。
劇場版のキービジュアルでは、イラストレーターのHIRONOXさんにペイントしてもらっていて。こういうことができるんだなと感動した覚えがありますね。
▲版権イラストはアニメーションと同様、線画、背景、仕上げ、特殊効果などを複数人で分担して作業をするのが主流。『00』では、本編参加メンバーによる分担だけではなく、HIRONOX氏のようにゲストメンバーが参加して一枚のイラストを完成させることもあった。
一度描いたら、発注がやってきた筆絵
筆を使ったイラストは、「ニュータイプ」の読者プレゼント用に描いたものが最初だったと思います。そのときはササッと描いたのですが、それから「ああいうテイストでお願いします」という発注が来るようになりました。もともとはラクガキに近い感じでしたし、筆絵の専門家でもないのですが、発注をいただけるのはありがたいことでしたね。
▲筆絵のイラストが多くあり、「VEDA」にも収録されている。色がないことで、キャラクターの目力が強調されているように見える。
マリナは描くのが大変だった
描くのが難しかったのは、マリナ・イスマイールですかね。加減が難しいんですよ。版権イラストなので雰囲気を出そうとすると、髪の毛をなびかせているようなシチュエーションで描かないといけない。最近、自分で久々に当時の原画を見たのですが、「細かく描いてるなぁ」とびっくりしました。本編もやりながらどうやってこれを描いていたのだろうかと思いを馳せました(笑)。
▲マリナの高貴さ、清潔さを表現するべく、髪の毛の扱いは丁寧に行われた。その分、時間もかかり、苦労したのは間違いないだろう。
ムービックのカレンダーで意識した「季節感」
劇場版が製作された年(2010年)に描き起こしたムービックのカレンダーは、何月にこのキャラクターで、という発注はあって、それ以外のシチュエーションはこちらで組み立てたり、発注側のスタッフが組み立てたりという感じでした。カレンダーでは、小ネタをどう入れているか、というチャレンジができます。例えば、『00』はあまり季節感のない作品ではあったので、こういうポスターやカレンダーでそれを表現したりできたかなと思います。
▲2010年のムービックカレンダー。表紙を千葉氏が手がけている。セカンドシーズンの最終回までで各キャラクターが行き着いた「決着」をコンセプトとしていた。背景の色合いなどを用い、巧みに季節感を演出しているのがわかる。
10周年記念映像で行った作監修正
10周年イベント(ガンダム00 Festival 10 “Re:vision”)の映像では、原画修正を担当しました。久々に『00』のキャラクターと向き合ってみて思ったのは、髪の毛が多くて大変ということ(笑)。ニールもかなり久々に描きましたが、彼の髪の毛にもうっすらウェーブがかかっているんですよ。それは高河さんの原案からそういう特徴があって。目の部分とかも、高河さんの特徴的な表現は意識しましたね。
▲ファーストシーズンで絶命したニールを、改めて描く貴重な機会となった。カット数は少ないため、その仕上げもかなり丁寧に行われている。
作為的に見せないバランスを探っていった
あまり作為的なものにするのは避けようとしていました。かといって作為が完全にないと不自然になってしまうので、そのバランスがイラストを描く上でも難しいところでした。同時期に『コードギアス』シリーズにも参加していたのですが、『コードギアス』は版権イラストでもヒロイックなポーズが多い一方で、『00』は作品のテイストを保つため、派手なポーズはあえてやらないようにしていました。シルエットで見せる方向性が多かったですね。例えばファーストシーズンのサントラのジャケットも、水島監督の提案で、刹那とエクシアがポーズを付けず、スッと立っている絵になっています。
セカンドシーズンでは、なるべくヒロイックに見せていこうということで、少しポーズも派手になっていきましたね。あとは、カメラ目線の発注が多かったので、あえて目線を外した絵にしませんかと提案したこともありました。カメラ目線にしてしまうと、構図やシチュエーションが固定されてしまうんです。目線を外すことで、そのキャラクターの考えや感情が読み取れたりする。『00』では、そういう提案をスタッフの方々がきちんと受け止めてくれて、こちらの提案通りやらせてもらえることが多かった記憶ですね。
▲目線を外すことで、キャラクターが何を見ているのか、「外の世界」を感じさせるものになっている。セカンドシーズンからはそこにヒロイックさを追加し、キャラクターとしての重みや人間性を強調する方向にシフトした。
『00』での仕事を振り返って
いろいろ時の運というのがあるじゃないですか。スタッフィングも含めて。こういう作品をやりたい、といって誰もができるものではないんですよ。それがタイミングよくやれたのが『00』で、これからもそういうタイミングが合えば続いていくんだと思います。『00』は一度完結していて、“終わり”という言葉が僕は好きなので、いい感じに終わったなという気持ちは今でもありますね。
以上、『00』への深い愛を感じさせる千葉氏の言葉の数々でした。
そんな千葉氏のイラストが大量に掲載される「VEDA」は、6月27日(水)までムービックJPとアニメイトオンラインにて好評予約受付中だ。ぜひとも内容盛りだくさんの本書をチェックしておこう。
VEDA~MOBILE SUIT GUNDAM 00“Ultimate”ART WORKS&ILLUSTRATIONS【受注限定生産】
価格:10,000円(税抜)
受注締切:2018年6月27日(水)
商品発送: 2018年8月上旬ごろ予定
【内容】
・合計4冊(各約200ページ)の計800ページ
・カラー版権イラスト集×2冊(A4縦 / カラー)
・設定画集×2冊(A4横 / モノクロ)
・4冊が収録できる化粧箱付き
【通販限定特典】
A2サイズ描き下ろしポスター
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