「究極のガンプラ」とも言われるMG(マスターグレード)シリーズ。バンダイの若き開発マンである野口勉氏が、『ガンダムSEED DESTINY』シリーズのMGを新たに担当するにあたって、「今までの“究極”を超える商品を!」という意気込みの下、これまでにない試みに取り組んだ。それはアニメ本編のチーフメカ作画監督である重田智氏に協力を仰ぐことで、設定や映像資料だけでは踏み込めないキャラクター性や作画演出法を理解した商品作りをすることであった。野口氏は、理解を深めることで、新しいギミックやより良い商品が生まれると確信していた。かねてよりホビー商品に興味を持っていた重田氏もこれを快諾。ここに2人の強力タッグ体制が確立されたのである。
こうして完成されたMGアイテムは今までに3体。「MG ストライクフリーダムガンダム」、「MG デスティニーガンダム」、「MG フォースインパルスガンダム」。新作「MG インフィニットジャスティスガンダム」を紹介する前に、まずはこれまで2人が手掛けた3体を振り返ってみよう。
■MG ストライクフリーダムガンダム
重田氏からは、作画の際に注意している点や画面上で見せたい部分を強調するためには機体にどのようなポーズをつけさせるかなど、アニメ作画上での演出法が主に伝えられた。良い意味で「立体を無視した」こうした切り口は、どれもホビー畑の野口氏にとっては新鮮なアイデアに映ったという。これらの話を踏まえた上で、MGストライクフリーダムガンダムは力強さとしなやかさを併せ持った女性アスリート体型にまとめられた。また、関節の動きと連動してスライド開放される装甲など、『SEED』系MGで好評だった機構も随所に引き継がれている。
野口「重田さんからは『アスリートをイメージ』ということで、人体的表現について……特に腕やふくらはぎの筋肉的なラインのメリハリについてよくお話をうかがいましたね。また、作画演出法を理解することで、新たなギミックアイデアも生まれてきました。レールガンや翼の伸縮は、その代表的なものです。
これらの要素は、その後のシリーズにも引き継がれています。
これらの要素は、その後のシリーズにも引き継がれています。
■MG デスティニーガンダム
「怒りにかられてキラたちと敵対した悪鬼」ということで、MGデスティニーの目指すべきイメージは重田・野口の両氏の間でも当初からかなり明確であった。これを表現すべく、女性アスリート体型であったストライクフリーダムに対し、デスティニーではより筋肉質な男性アスリート体型が志向されている。また、ウイングや肩のブーメランなど、アウトラインを形成する突起部と本体とのバランスにも気が遣われた。
野口「この頃はMSの持つ個性・キャラクター性をどう表現してゆくか、どう形に反映させるかについて、よくお話をうかがいました。全体のプロポーションや機構の他にも、悪役っぽい顔つきや渋めの色合いなどに特にそれが反映されています」
■MG フォースインパルスガンダム
元々劇中ではニュートラルな立ち位置で、ストライクフリーダムやデスティニーほどキャラクター性が明瞭だったわけではないインパルス。重田氏らとの話し合いの中で、この機体をMGとして押し出すにあたり、PHASE-34「悪夢」などで見られるデスティニーの前身たる「シンの怒りを体現している姿」をイメージソースとして開発することとなった。ただ、それが露骨に表れすぎると嫌われてしまうので、インパルスのアクのなさで適度に引き締めてもいる。このあたりのさじ加減も絶妙で、結果として良い意味で「誰も見たことがないインパルス」に仕上がり、機体人気を超える高評価を集める傑作となった。雷光の中フリーダムを貫いたシーンをイメージしたという長大な対艦刀エクスカリバーも迫力満点! また、コアスプレンダー、チェストフライヤー、レッグフライヤーの3体に分離した際に、より航空機らしいシルエットを描くようにデザインと機構の両面で気が遣われている。
野口「『今までにないインパルス』をテーマとして取り組みました。デスティニーの前身というイメージを重田さんからうかがっていたので、顔付きや色合いなどはデスティニーを意識しています。こういう印象に仕上げたければ、形にこう反映させればいいという、ノウハウもかなり蓄積されてきた時期ですね。」
このように、『ガンダムSEED DESTINY』シリーズのMGアイテムでは、毎回機体のキャラクター性を商品開発に取り込むというアプローチをおこない、魅力的な作品を創り上げてきた。今回発表となった「MG インフィニットジャスティスガンダム」も、こうしたノウハウを最大限活用しつつ、新しいチャレンジを取り入れた作品となっている。
次回の更新からは、「MG インフィニットジャスティスガンダム」の第1回目の打ち合わせから重田氏による修正指示、反映されたCADデータ、完成したテストショットに至るまでの道程を順次紹介して行く予定だ。
協力:バンダイ ホビー事業部
ガンダムインフォ編集部
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