アニメ・映像・音楽

2018年5月25日 (金)

「ガンダムF91 4KリマスターBOX」安彦良和・大河原邦男・富野監督の封入特典インタビュー冒頭公開!

製作当時の思いなどを語る必見の内容!

バンダイナムコアーツより6月22日(金)に発売される「機動戦士ガンダムF91 4KリマスターBOX」の封入特典「ドキュメントコレクション」に収録されるインタビューの冒頭部分が、本日5月25日(金)に公開された。

 

今回公開されたインタビューには、キャラクターデザイン・安彦良和さん、メカニカルデザイン・大河原邦男さん、原作・脚本も担当する富野由悠季監督が登場。(前回公開された分はこちら)

 

 

 

封入特典「F91 ドキュメントコレクション」収録インタビュー冒頭公開

 

富野由悠季が劇場作品を作るなら観てみたいと思っていた

キャラクターデザイン 安彦良和

――過去の資料を調べたところ、『ガンダムF91』は89年の秋くらいから作業が始まっていたようですね。

 

作業的にはアニメの『ヴイナス戦記』が89年の3月に公開した後で、その後アニメの仕事は辞めると決めた、ちょうどそのタイミングでした。

 

――では、実質的に最後のアニメの仕事だったということですか?

 

『ヴイナス戦記』でアニメの仕事は完全に終わったと思っていたから、『ガンダムF91』の時はアニメの仕事をしているという認識はなかったですね。キャラクターデザインはアニメの仕事だから、改めて言われるとやっていたのかと思うくらいですね。

 

――『ガンダムF91』どのような形でお仕事の依頼があったのでしょうか?

 

『機動戦士Ζガンダム』でキャラクターデザインをやっていたんだけど、その後もある時期まで何度か「ガンダムの続編に参加しないか?」という誘いがあったんですが、そうした誘いはもう無いだろうと思っていたあたりで話が来たのが『ガンダムF91』でした。でも、最初は乗り気じゃないという返事をしたと思います。

 

――では、なぜお仕事を受ける気になられたんでしょうか?

 

『Ζガンダム』での仕事のイメージが悪かったというのが、乗り気じゃなかった理由です。『Ζガンダム』は、打ち合わせを一切やらないで、キャラクターだけを描けばいいんだという感じで仕事をして、そのやり方がどうにも腑に落ちなくて。そこで、「仕事をするにあたって、きちんと打ち合わせをさせてくれるならいいよ」と返事をしたんです。その結果、富野由悠季氏との打ち合わせの場を設けてくれる話になって。当時のサンライズの本社の会議室に、僕と富野氏、大河原さん、当時のサンライズ社長の山浦栄二さんというメンツを集めて、約束通り打ち合わせをしてくれました。その時、富野氏から「『ガンダムF91』は家族がテーマなんだ」っていう話を聞いたことは覚えています。ただ、きちんとしたやり取りがあまりできなかった記憶がありますね。それでも、全然打ち合わせができなかった『Ζガンダム』の時よりはまだマシな感じかなと。打ち合わせをしたということで、多分その時にキャラの発注もあったんじゃないかな?

 

 

 

劇場作品としてデザイン的にもチャレンジした作品

メカニカルデザイン 大河原邦男

――『ガンダムF91』はどのような形で参加要請があったのでしょうか?

 

この作品は『機動戦士ガンダム』のメインスタッフで作って欲しいというサンライズの意向がありまして。私自身は『機動戦士Ζガンダム』で最初の頃に少しだけデザインに参加した後に若手デザイナーに引き継ぎ、『機動戦士ガンダムΖΖ』や『逆襲のシャア』では私も安彦さんも参加していない状況だったからか、再び旧スタッフでやって欲しいというところから始まったと記憶しています。当初は、バンダイさんとリンクしながら、主役となる新しいガンダムのデザインを進めていたんですが、富野監督から「劇場作品ということでもっとチャレンジングな作品にしたい」ということで、今までのガンダムにはない流れを入れたいと言われたんです。そこで、当時注目を集めていたF1レースなどのフォーミュラーカーのようなイメージで、ちょっと冒険したデザインを描き、それがガンダムF91とされました。その一方で、それまで主役として進めていたデザインは『ガンダムF90』という形でプラモデル展開をすることになったというのが大まかなデザインの流れですね。

 

――アニメとしては、久しぶりのガンダム作品だったんですね。

 

『Ζガンダム』では、引き継ぎという意味でガンダムMk-IIのデザインを描いて、それ以降はMSVなどのデザインは描いていましたが、映像ではガンダム作品はほとんどやっていなかったんです。本格的に関わる『機動武闘伝Gガンダム』や『新機動戦記ガンダムW』はそれよりも後ですからね。久しぶりのガンダムの映像作品ということで、少しは頑張ってみようと思ったのは覚えています。

 

――『ガンダムF91』は、大河原さんのところに話が来た時点ではすでに「劇場作品のデザイン」として発注されたのでしょうか?

 

劇場作品だという話だったと思います。その当時から、劇場作品はTVシリーズと違って、クオリティの高いものが作れるということがあったので、関わるクリエイターもそれに応じたデザインや作業をしますよね。そういう意味では、私自身も意識はかなり違ったと思います。

 

 

 

設定を“劇”に昇華するために

原作・脚本・監督 富野由悠季

――88年の『逆襲のシャア』でアムロとシャアの物語に決着をつけ、91年に改めて『機動戦士ガンダムF91』がスタートします。

 

僕が『F91』をどう考えて演出していたかといえば、“巨大ロボットもの”なんだけれど、それをちゃんと映画にしなければいけないんだ、ということです。映画にするということは、メカのディテールを細かく描くということではありません。物語、つまり“劇”を描くことでなくてはいけない。でも、モビルスーツという道具は物語を発生させるものではない。だから劇を描こうとするなら、モビルスーツのルックスから入ってはいけないんです。でも一方で、巨大ロボットものというジャンルである以上、メカのルックスがスペクタクルとして楽しめるように演出もしなくてはいけない。この相反する二つの要素を、一挙に見せる入り口というのを用意しなければ、“巨大ロボットもの”でかつ映画というものにはならないんです。そういう意味では『F91』も『逆襲のシャア』と同じ意識でもって演出をしています。

 

――『F91』はクロスボーン・バンガードがフロンティアIVに攻め入るところから始まります。サンライズ資料室にあった絵コンテを見ると冒頭が、また別のカット構成になっていたのですが?

 

それは……決定に至る前の状態のコンテではないかと思います。自分としては現状の入り方が『F91』の入り方だと思っています。『F91』で目指したのは巨大ロボットのルックスから入って、すみやかにキャラクターが出てくるという構成です。そういう点では“ガンダム”を見ようと思っている方にとっては、『逆襲のシャア』よりも『F91』のほうが見やすいかもしれません。でも、作品全体としては、そういうことを意識しすぎたために、『F91』のほうが話としてよくわからなくなって、いい加減に終わっていますね。

 

――それは段取りを追って物語を展開したことが失敗だったということでしょうか?

 

段取りの問題ではないですね。キャラクターの造形ですね。カロッゾというキャラクターを作ってしまったら、僕はそれでよいと思ってしまったんですね。それが一番の間違いでした。

 

――カロッゾ=鉄仮面は、非常にユニークなキャラクターだと思います。

 

だから、そこが間違いのもとだったんです。キャラクターを思いついたことで安心してしまったんです。なぜ鉄仮面を被らなければならなかったのかを、もうちょっと突き詰めておかないと、結局は上っ面だけをなぞるような話になってしまうのに、それを考えていなかったということが、『F91』という作品にとっては、ものすごく大きな欠点になっています。たとえばセシリーが「お父さん、あなたはなんて酷い男だったんだ。情けないんだ!」なんていうことを言うとか、そういうところまで踏み込まなければいけないキャラクターだったのに……それを忘れていたんです。

 

――なぜだったのでしょうか。

 

自分が親になっていたからです。子供から非難されることから逃げたんです。そういう劇は作りたくなかった。お父さんの存在を認めてほしいという心理があったことを、今思いだしました。今回のカラコレ(Blu-ray化するにあたっての色調の調整。カラーコレクション)の時に、ラストのラフレシアとの戦闘を見ていたんですが、絵面的にはいろいろやっているんだけれど、「どうもよくわからないよね」ということがあって、その時にはその理由がわからなかったんです。わからないのは、あのシーンの問題ではないんです。その前の段階で、セシリーとカロッゾの間に、鉄仮面になる前にどんなことがあったのか、そこを劇として組んでいなかった。だからラストのバトルが曖昧になってしまっている。そういう反省点があったにも関わらず、僕が今日まで気づくのをやめていたのは、自分が子育てを間違ったと認めたくなかったからですね。

 

――当時のお嬢さんたちとの関係が影響してしまったわけですね。

 

『逆襲のシャア』のインタビューで、地球連邦軍がスポンサーと重なって見えるという話があったでしょう。それと同じことです。アニメといっても、こういうレベルで作劇をしようと考えていった時には、絶対にリアリズムが入り込んでくるんです。だから自分のことは隠せないんです。そのときのその人の人生観や人生論、悔しさみたいなものがものすごく出てしまいます。今、こういうふうにようやく説明ができるようになったのは、先月、松本清張原作の映画をまとめて見たからです。

 

――松本清張ですか。

 

そうです。なかでも『張込み』(野村芳太郎監督)は、役者を含めかなり本気になって作っている映画でした。そこで驚いたのは夕立のシーンです。20カットぐらいある長いシーンで、かなりのロングショットも入っているんだけれど、ロケで撮影していて、雨の降り方がずっと同じなんです。何気なく見てしまって後で「あれっ?」て気がついたのだけれど、解説を見たら「あのシーンは実際にまさに僥倖で撮れた」と書いてありました。本当の雨が降っていたからこそあの画面になっていたわけです。作品のストーリーであれ、映像であれ、そういうふうにして“本物”との接点が生まれなければ、映像の中にリアリズムというのは生まれないんです。『F91』はそこから逃げたきらいがあるんです。

 

 

 

 

6月22日(金)発売予定の「機動戦士ガンダムF91 4KリマスターBOX」は、フィルムの4Kスキャンとリマスターに加えてHDR化も実施し、これまでにない圧倒的映像美を実現。

さらに、絵コンテやラフスケッチなど秘蔵資料を収録したドキュメントコレクションが特典として封入されるほか、ドルビーサラウンド音声成分を分解・再配置し、低音成分を追加した4.1ch アドサラウンド音声を音声特典として収録する。

4K ULTRA HD Blu-ray(UHD BD)と通常のBlu-ray Discの2枚組で、価格は9,200円(税抜)。

 

 

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