2008年12月25日 (木)
【BD版Ζガンダム特集】ここまで、見える!私にも見えるぞ!! Blu-ray Disc『機動戦士Ζガンダム メモリアルボックス』視聴レポート
BD版の制作過程から高画質の秘密に迫る。TV版ならではのエピソードガイドもあるぞ!
【BD版Ζガンダム特集】 第1回 Blu-ray Disc『機動戦士Ζガンダム メモリアルボックス』Part.I 12月19日(金)発売! ファンなら見逃せないその特徴に迫る!! 第2回 HDテレシネされた鮮烈なBlu-rayの色をガンプラで再現! MG「ガンダムMk-II Ver.2.0 HDカラー」完全限定発売!! |
まるでセル画が動いているようだ!
『Ζガンダム』Blu-ray Discの実力を確認するために、制作現場でDVD版とBlu-ray Disc版の画質を比較させていただいた。セル画で制作されているので、あたりまえなのだが、あたかもモニターの中でセル画が動いているのが見えるのである。トレス線の1本1本から塗り分けの色トレスの部分まではっきりと確認できる。おかげで宇宙などの暗いシーンだと、ちょっとセルのキズが目立ってしまうこともある。だが、画面の揺れやゴミやキズはかなり修正しているという。
実はこのBlu-ray Disc版の制作には根気の要る作業をこなす職人がいた。LD時代から『Ζガンダム』を担当されているというキュー・テックの菅原さんは「Ζガンダムマイスター」ともいわれるほど、ガンダム作品とは長いおつきあいだという。菅原さんに今回のBlu-ray Dics『機動戦士Ζガンダム メモリアルボックス』のポイントを伺った。
「今回は普段使用しない保管用のマスターポジからインターマスターポジといわれる本来は複製の元に使われるマスターを新たにプリントしました。フィルムからフルHDのHDCAM-SRに変換(テレシネ)し、色味を調整するカラーコレクションを経て、デノイザー処理、ガタ(フィルム走行ゆれ)を補正するスタビライズ処理、そして最後にパラキズ除去を行いました。
特に富野監督の指示のあった、色味については微妙な調整を必要としたため、カラーコレクションは1日に2話が限界でした。ノイズやゴミの修正もあまりやりすぎるとセル画の質感を損ねることもあるので、取りすぎてセル画の質感を無くさないように気をつけました。
また、音声についてもマスターテープが現存していたので、そちらから非圧縮のリニアPCMで収録いたしました。」
▲Ζガンダムの製品化に20年以上たずさわっているという菅原さん。大容量が収録できるBlu-rayのおかげで、画質や音には妥協せずに臨めたという。
▲Blu-ray Disc解像度(約207万画素)のイメージ。
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▲DVD解像度(約34万画素)と拡大イメージ。
DVDに比較してBlu-ray Discの圧倒的な情報量がよく分かる。 |
富野監督からの指示は「色を出し過ぎないように」というものだったという。BDの場合ともすれば、鮮やかになりすぎてしまう。特に赤い色が顕著に感じられ、肌色などが赤っぽくなりやすいのだ。筆者もオープニングを見て、ブライトの髪の緑色がすごく鮮やかなのにはびっくりした。カミーユのノーマルスーツの色が実はジェガンの色に近かったり、黒いリック・ディアスも単純な黒じゃないなど、微妙な色使いに感動した。リニアシートなどの描き込みも実は細かい部分まで描いてあったりする。単純に言うと、いままで暗いイメージだった『Ζ』に関する考え方が変わるほど、色鮮やかでシャープな映像だった。
この映像を見た当時の作画スタッフからは「そういえば、セル画ってこんな色だったよね~」という言葉や「こうだったんだよな~。でも見え過ぎちゃう部分もあって、恥ずかしい」などの声が上がっていたという。制作スタッフはセル画やフィルムで見ていたので、この映像を見ていたんだなぁと、あたらめて感慨深いものがあった。
TV版ならではのシーンをピックアップ
新訳とされた劇場版『Ζガンダム』には、TV版からカットまたは改変されたシーンがいくつかある。その辺りも今回のBlu-ray Disc版での見どころとなると思う。人気の高いシーンをピックアップしてご紹介しよう。
なお、以下に掲載した画像はBlu-ray Disc『機動戦士Ζガンダム メモリアルボックス』に収録された映像のHDマスターからキャプチャーしたHD解像度の画像を、そのまま縮小したもので、色の調整などは行っていない。BD版の色の鮮やかさが見て取れるだろう。
■第36話「永遠のフォウ」 劇場版ではホンコン編で退場したフォウとカミーユのキリマンジャロでの再会。専用MSディジェで活躍する、復活したアムロ。カミーユ、フォウ、ジェリドの間で再現されたララァの悲劇。フォウというTVシリーズでの重要キャラクターの最期は劇場版とはまったく異なり、見どころが満載だ。 |
■第37話「ダカールの日」 これも劇場版では省かれたエピソード。地球連邦議会で、自らのことを「シャア・アズナブルと呼ばれた男」と明かし、全世界に向けて演説をするシャア。それを成功させるため潜入工作をするベルトーチカ。支援の戦闘をしかけるカミーユやアムロたち。そして、その演説を彼方で聞いていたセイラたち。『ガンダム』ファンには見逃せない名シーンだ。 |
■第50話「宇宙(そら)を駆ける」 エゥーゴとティターンズが互いにつぶし合い、疲弊した地球連邦軍。次の戦い、地球圏制圧のために敢えて手を引いたアクシズ。そしてシロッコを倒したものの、心を壊されたカミーユ。ラストはいずこかへと姿を消したシャアの描写以外、劇場版ではハッピーエンドに置き換えられていた。だが、このTVシリーズの悲劇的な結末も捨てがたいものがある。 |
16ミリの解像度を超えたクオリティ
新たなメディアが出て来たとき、いつ買うかは悩むところだ。ちょっと、今後の視聴モニターの進化を検証&予想してみた。
モノクロテレビ【1960年】>カラーテレビ【1973年】>ハイビジョン【2007年】>スーパーハイビジョン【2030年】
(【 】は50%程度普及時期)になりそうだ。
あくまで私見だが、ガンダム30周年が「ハイビジョン(HD)」の時代で、50周年が「スーパーハイビジョン(SHD)」の時代になると予想される。そうなるかどうかわからないが、20年待って、SHDを見るという方法もあるかとは思う。
しかし、16ミリフィルムで現存するセルアニメについてはSHDになったとしても、それほど画質の変化はない気がする。それほど、HD画質は満足できる画質だった。ただ、比較して見比べないと、意外と画質の良さ、色の鮮やかさを、それほど感じないのも事実だ。昔見た映像の記憶は、脳によって美しく補完されているからだ。初恋の思い出は美しいけど、同窓会で会ってびっくりするというのにどこか通じる部分があるような気がする。
逆に言うと、過去の作品なのに、あたかも最近作ったかのごとく、色鮮やかに、シャープに再現されているのである。塗りムラやセルキズにびっくりしないで、新たな感動を味わってみて欲しい。
協力 : バンダイビジュアル
ガンダムインフォ編集部
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