「電子書籍で読める!おすすめガンダム本10選」は、数あるガンダム小説・マンガの中から厳選した“電子書籍が販売されている10作品”を、「 このマンガがすごい!」などで活動中のライター・山田幸彦氏が紹介していくコーナーです。
第8回は、劇場版『逆襲のシャア』とは異なるオリジナル展開を盛り込んだ富野由悠季監督による小説「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」をご紹介していきます。
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」(KADOKAWA)
もう一つの「宇宙の虹」
宇宙世紀0093年。
グリプス戦役以後、行方不明であったシャア・アズナブル率いるネオ・ジオン軍が、地球連邦政府に宣戦を布告した。
宇宙移民者を迫害し、地球を独占しようとする者たちを粛清するため、隕石落としを敢行するシャア。
そんな彼に、かつての仲間であり、最大のライバルでもあるアムロ・レイと、彼の所属する「ロンド・ベル隊」が立ち向かう。
父であるジオン・ズム・ダイクンの理想を背負うシャアと、恋人のベルトーチカ・イルマとの間に子をなしたことで、家族を背負うアムロ。
宿命のライバル同士の三度目の邂逅は、フィフス・ルナ攻防戦で幕を開ける。
一年戦争での出会いから10年以上を経て、数奇な運命に翻弄され続けてきた男たちの戦いが、終わりを迎えようとしていた。
父となったアムロの生き様
映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の脚本初期稿をベースとして、富野由悠季監督が1988年に発表した「ベルトーチカ・チルドレン」。
基本的なプロットの流れは映画と同様ながらも随所に違いがあり、全体の印象は大きく異なっている。
ギュネイ・ガスがグラーブ・ガス、ナナイ・ミゲルがメスタ・メスアに……といった名前の変更もあるが、最大の特徴は、アムロと『機動戦士Ζガンダム』に登場したベルトーチカ・イルマの関係が本作でも継続中で、彼女がアムロの子どもを妊娠していることだろう。
『Ζ』での登場初期は、アムロへの理解を深めようとするあまり、焦りを感じさせる言動が目立っていたベルトーチカだが、本作では落ち着きを持ってアムロを戦場へと送り出す女性へと成長。
アムロもまた父親になるという大きな環境の変化で、映画版以上に人間的な変化を遂げている(ララァに「守るべき人も、守るべきものもないというのに」と言われていた頃が懐かしい……)。
家族周りの描写では、シャアの意外な一面が垣間見えるシーンもあり、映画に慣れ親しんでいる人ほど驚かされるかも……?
Hi-νガンダム(作中では「νガンダム」)やナイチンゲールといった独自のモビルスーツの魅力も、本作が今でも高い人気を誇る理由の一つだ。
近年のキット化やゲーム作品での登場でしか本作のモビルスーツを知らない人は、Hi-νガンダムがラー・カイラムからのエネルギー供給を受けてハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーを放つシーンなど、迫力のメカ描写の数々を読むことで惚れ直すこと間違いなし!
凄まじい情報量の戦闘シーンと、大人になった各キャラクターの織りなすドラマがファンの心を掴んで放さない本家『逆シャア』を、小説という媒体を活かしてさらに凝縮した本作。
その家族観からメカ描写まで、富野監督が手がけるガンダム作品の魅力がぎっしりと詰まった集大成的作品と言えるだろう。
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書籍情報
【タイトル】 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン
【著者】 富野由悠季
【本文・カバーイラスト】 美樹本晴彦
【巻数】 全1巻
【定価】 713円(税込)
【出版社】 KADOKAWA
山田幸彦
1991年生まれ。「このマンガがすごい!」本誌&WEBや「東映ヒーローMAX」などで活動中。かすんだ地平の向こうを見たくて、馴れ合う奴らを忘れて走るライター
1991年生まれ。「このマンガがすごい!」本誌&WEBや「東映ヒーローMAX」などで活動中。かすんだ地平の向こうを見たくて、馴れ合う奴らを忘れて走るライター
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