「電子書籍で読める!おすすめガンダム本10選」は、数あるガンダム小説・マンガの中から厳選した“電子書籍が販売されている10作品”を、「 このマンガがすごい!」などで活動中のライター・山田幸彦氏が紹介していくコーナーです。
第6回は、『∀ガンダム』や『コードギアス 反逆のルルーシュ』など、数多くのアニメ作品の脚本を手掛けてきた脚本家・大河内一楼氏による小説「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」をご紹介していきます。
「機動戦士ガンダム 第08MS小隊(上)」(KADOKAWA)
「甘ちゃん」に突きつけられる過酷な戦場
宇宙世紀0079年。
地球連邦とジオン公国の戦いが繰り広げられる中で、連邦軍の新米士官であるシロー・アマダは、膠着状態となっている東南アジア戦線への配属を命じられた。
作中の大人気戦争ドラマ「キャプテン・ジョー」に憧れを持ち、ジオン軍の悪行をその目で見たことから、戦場で敵を倒すことに何の疑問も持っていなかったシロー。
だが、地球への道中で遭遇したジオン軍の女パイロット、アイナ・サハリンとの奇妙な出会いにより、普通の将校とはまるで異なる運命を辿ることとなる。
その後、モビルスーツ小隊を指揮することとなった彼を待っていたのは、ヒーローも悪役も存在しない戦場だった。
灼熱のジャングルの中で、シローは理想と現実のギャップに苦しみながらも、部下の命を預かる隊長として人間的に成長を遂げていく。
OVAとは異なるアプローチで戦場を描いた意欲作
1996年に発表されたOVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』。
本作は脚本家の大河内一楼が本文を、アニメにおいて作画監督を努めた杉浦幸次が挿絵を手がける小説版だ。
OVAでも描かれた戦場の厳しさをよりクローズアップした作風が特徴的で、サイド2へのジオン軍による毒ガス注入に始まり、シローたちと交流を持っていた現地住民、キキ・ロジータの住む村を略奪目的で襲撃する連邦軍など、両軍の行う正義なき所業の数々が濃厚な筆致で描かれている。
例えるならば、OVAの第8話で描かれた、トップ小隊とゲリラたちの悲惨な戦い……あのやりきれなさが、全編に漂っているのだ。
主人公・シローは勧善懲悪な戦争ドラマ「キャプテン・ジョー」に憧れる子供っぽい一面が追加されたことで、原作の魅力の一つ、「甘ちゃん」と「生死が交錯する戦場」という両極端な要素の対立が、より強調されている。
終盤で成長を遂げたシローが、その理想の象徴だった「キャプテン・ジョー」を思わぬ形で戦いに用いるシーンがあったりと、型にはまらない戦術家ぶりは小説版でも健在だ。
モビルスーツの活躍も読者を唸らせる内容に仕上がっている。
ガンダムと共通規格のパーツを使う、陸戦型ガンダムとEz-8の設定を活かしたとあるシーンは、『機動戦士ガンダム』本編を観た人、特にザクレロ好きな人は、思わずニヤリとすること間違いなし!
暗い戦場だけでなく、そんなマニア度の高さにも注目して欲しい1作である。
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書籍情報
【タイトル】 機動戦士ガンダム 第08MS小隊
【著者】 大河内一楼
【挿絵】 杉浦幸次
【原案】 矢立 肇
【巻数】 全3巻(上・中・下)
【定価】 583円(税込) ※上巻のみ562円(税込)
【出版社】 KADOKAWA
山田幸彦
1991年生まれ。「このマンガがすごい!」本誌&WEBや「東映ヒーローMAX」などで活動中。かすんだ地平の向こうを見たくて、馴れ合う奴らを忘れて走るライター
1991年生まれ。「このマンガがすごい!」本誌&WEBや「東映ヒーローMAX」などで活動中。かすんだ地平の向こうを見たくて、馴れ合う奴らを忘れて走るライター
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