2010年9月18日 (土)
「ROBOT魂<SIDE MS> ストライクフリーダムガンダム」発売記念 重田智インタビュー
ガンダムSEEDシリーズのチーフメカ作監・重田氏に、監修の話やこだわりのポイントを伺う。
その商品化にあたっては、本編での活躍をイメージした造形と、ROBOT魂ならではの可動を両立すべく、「機動戦士ガンダムSEED」および、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」のチーフメカ作画監督・重田 智氏による徹底監修が行われた。
今回その重田氏に、監修の際の話や、こだわりのポイントなどを伺うことができたので、さっそく紹介していこう。
まだ手に入れていない人は購入の参考に、すでに手に入れている人は新たな発見があるかも?
ぜひご覧ください。
――「ROBOT魂<SIDE MS> ストライクフリーダムガンダム」の監修にあたって
同じキャラクター(ストライクフリーダムガンダム)なので、プラモデルでもROBOT魂でもサイズは違えど監修の方向性は基本的には同じだと思うんですよ。ですから、それを踏まえた上で、ROBOT魂という商品に特化したアイデアや指示を出していこうと考えました。
「MG ストライクフリーダムガンダム」のときはガンプラのアドバイス作業が初めてだったため、バンダイさんも私もどういった方法がいいのか分からなくて打ち合わせ時に口頭でのアドバイスのみで作業を進める、といった具合でした。下手にイメージ画を描いたり、門外漢なのに図面に細かく指示や数字を入れてしまって、立体化の際にイメージの縛りがキツクなってしまっては逆効果になりはしないかと思い、監修図面等は一切描かなかったんですね。
ところがバンダイさんの開発側とのイメージの共有化をより一層深めるには、やはり絵や文字での資料化は必要であろうという事になり、「MG デスティニーガンダム」以降、設定や図面に解釈の方向としての赤を入れたり、文字、数字での指示やイメージを出してゆくやり方が確立しました。
商品ジャンルは異なりますが、今回ようやくそのやり方で最初に戻ってストライクフリーダムガンダムの監修作業を行えたわけです。4年分のノウハウがたまった分、MGのときにやりきれなかったこと、商品化後で気がついたことなどをできるだけ反映できるようにと考えました。また、MGのプラモデルと違って塗装工程のあるROBOT魂なので色の解釈についてのアイデアもいろいろと考えました。
――「ROBOT魂」の監修作業でガンプラのときと異なった点は?
事前にこれまでの監修でも使用した資料などを渡してお願いしていたので、それらを参考に試作された立体物がある段階からスタートしました。ROBOT魂というジャンルの監修は初めてでしたが、全くのゼロから始めるのではなく、良いスタートラインを用意してくれたわけですよね。
しかもその立体物が、そのまま商品化されてもたぶん文句が出ないだろうほどに出来が良かった。意外とマッシブなスタイルで、それはそれで格好良いわけですが、育ての親(笑)としてはポーズを取らせたときに野暮ったさを感じてしまって。そこら辺がもう少し上手に表現できる様にと、試作の資料にネチネチと赤を入れました(笑)
ただ全長12センチというサイズの制約の中では(指示を出しても)表現できない部分もあると思いますし、それを考えると顔はホントに良く出来ていると思いますね。商品上、顔はすごく小さくなってしまうわけですが、だからと言ってボンヤリとしたもので良いわけではないでしょうし。
ガンダムを始めとするロボットアニメって、思った以上にロボットの頭のアップが多いものなのですが、お客さんは放送で観たそのアップの印象が強いし、人型をしている以上どうしても顔に目が行ってしまうと思うんです。MGの経験から技術的な制限があるとは思ったんですけど、それでも格好良くなるに越したことはないだろうと指示を出していったら、回を重ねるごとにどんどん良くなってきました。顔だけ眺めていても飽きないくらいに良く出来ていると思います。
「ROBOT魂」がガンプラと異なる点として、塗装済み完成品であるということがありますよね。商品コンセプトとしても「MS IN ACTION!!」より高品質・高価格ということでしたので、それに見合った質感を持たせたいと考えました。そこで贅沢を言わせてもらって、敢えてアニメーションのイメージ通りの解釈にはしなかったところがいくつもあります。メタリックのカラーリングはその最たるものですね。
アニメーションの色というのは映像としてモニター画面やスクリーンでみたときに映えるように決められているので、その色を立体物で忠実に再現してしまうと、アニメーションの設定通りではあっても商品として大人の鑑賞に耐えられるのか?安っぽくならないだろうか?という疑問がありました。ですから、例えば赤い部分を別の白や黄の色に塗るわけにはいかないけれど、同じ赤でも別の表現手段があって良いのではないかと。1/1のガンダムだって、アニメーションと同じ解釈の色に塗装されてないから本物っぽく見えると言われていましたよね(笑)
ビームライフルのメタリック表現も、連結のロングライフルにして構えさせた時に目が行くポイントとしてアピールの強いイメージを狙っています。このメタリック塗装は商品の差別化という面でもチャレンジしたところです。こういうアプローチの商品があってもいいんじゃないだろうかと。アニメーション本編の色のイメージではなく、雑誌やポスター、パッケージなどの版権イラストのような大人っぽい表現、ライティングを意識した色と解釈してもらえるといいんじゃないでしょうか。
ただ、輝く関節に関しては素材の問題もあって、残念ながらいまだに及第点には達する事ができませんでした。可動させて遊ぶ事は難しくなってしまうのでしょうけれど、鑑賞用という事では完全塗装版なんて物が可能であれば、チャレンジしてみたいですね。
―― 造形、ギミックとしてこだわった部分は?
何箇所かありますが、特に足首(アンクルガード)とウイングにはこだわりました。
足首のガードは、アニメーションの設定画では脛の装甲が延長されたように(脛の装甲にくっついているように)描かれていて、実際に作画するときもそのように描いているんです。ところがMGの監修をするようになって、ガンプラの立体物だと解釈が異なることに気がついた。脛の装甲とつながるのではなく、くるぶしの部分にジョイントがあって独立して可動できるようになっているんですね。それで、これは可動部のジョイントの強度の問題なんでしょうが、アンクルガードが脛の方の高い位置に保持できずに足の甲の方に下がって足の甲の上に乗ってしまうんですね。
これが自分としてはだらしなく見えて耐えられない(笑) アンクルガードが下がって空いた隙間から関節部分が見えてしまっては装甲の意味がないし、デザイン上も脛からのラインが途切れてしまってせっかくの脚の長さが短く見えてしまうんですよ。ですから、脛の装甲側にアンクルガードのジョイントを作って、脛からアンクルガードまでがひとつのラインになるようにとお願いしました。動かせるから動かすというのではなく、可動によってデザインの持っている良さを損なわないようにというアプローチです。
ウイングについては、やはりストライクフリーダムにとってウイング展開は見せ場のひとつですから一番綺麗に迫力がある様に見える作画にするわけですが、それは必ずしも設定通りの可動では再現できないという場合があります。
実は設定そのままでアニメーション的に展開させると一番上のウイング基部のスラスターブロック部分が頭上で干渉してしまうんですね。アニメーションの作画ではなんとかごまかしてしまうんですが、これはMGのときに対処しきれなかった所で、今回は別ブロックにして可動させるなどのアイデアで対応してもらいました。これでアニメーションのように綺麗な放射状にウイングを展開する事ができるようになりました。
―― 発売された「ROBOT魂<SIDE MS> ストライクフリーダムガンダム」の感想、
購入者へのメッセージ
12センチというスケールの中にいろいろなものを詰め込みました。その中には、これまでのストライクフリーダムのモデルと比較して、捨てたものもあり、新しく入れたものもあります。
ただ、単純に評判の良かったMGの縮小コピーにはしたくありませんでした。小さいサイズなりの表現もあるだろうし、現在新しく出すものですから以前のものより良くなっている部分がなければ作っている我々も面白くないし、お客さんも納得しないだろうと考えていました。そういう意味では、発売された商品はなかなか良い線を行っているんじゃないかなと思います。MGのときから何段階かのステップアップができたと思います。MG ストライクフリーダムを持っている人が手に取ってくれて、商品ジャンルの違いを越えて進化を実感してくれたら嬉しいですね。
また「ROBOT魂」ファンの方には、このストライクフリーダムで「ROBOT魂」のグレードが上がったと感じてもらえたら、監修者としてはしめしめと言ったところですよね(笑)
同じキャラクター(ストライクフリーダムガンダム)なので、プラモデルでもROBOT魂でもサイズは違えど監修の方向性は基本的には同じだと思うんですよ。ですから、それを踏まえた上で、ROBOT魂という商品に特化したアイデアや指示を出していこうと考えました。
「MG ストライクフリーダムガンダム」のときはガンプラのアドバイス作業が初めてだったため、バンダイさんも私もどういった方法がいいのか分からなくて打ち合わせ時に口頭でのアドバイスのみで作業を進める、といった具合でした。下手にイメージ画を描いたり、門外漢なのに図面に細かく指示や数字を入れてしまって、立体化の際にイメージの縛りがキツクなってしまっては逆効果になりはしないかと思い、監修図面等は一切描かなかったんですね。
ところがバンダイさんの開発側とのイメージの共有化をより一層深めるには、やはり絵や文字での資料化は必要であろうという事になり、「MG デスティニーガンダム」以降、設定や図面に解釈の方向としての赤を入れたり、文字、数字での指示やイメージを出してゆくやり方が確立しました。
商品ジャンルは異なりますが、今回ようやくそのやり方で最初に戻ってストライクフリーダムガンダムの監修作業を行えたわけです。4年分のノウハウがたまった分、MGのときにやりきれなかったこと、商品化後で気がついたことなどをできるだけ反映できるようにと考えました。また、MGのプラモデルと違って塗装工程のあるROBOT魂なので色の解釈についてのアイデアもいろいろと考えました。
――「ROBOT魂」の監修作業でガンプラのときと異なった点は?
事前にこれまでの監修でも使用した資料などを渡してお願いしていたので、それらを参考に試作された立体物がある段階からスタートしました。ROBOT魂というジャンルの監修は初めてでしたが、全くのゼロから始めるのではなく、良いスタートラインを用意してくれたわけですよね。
しかもその立体物が、そのまま商品化されてもたぶん文句が出ないだろうほどに出来が良かった。意外とマッシブなスタイルで、それはそれで格好良いわけですが、育ての親(笑)としてはポーズを取らせたときに野暮ったさを感じてしまって。そこら辺がもう少し上手に表現できる様にと、試作の資料にネチネチと赤を入れました(笑)
ただ全長12センチというサイズの制約の中では(指示を出しても)表現できない部分もあると思いますし、それを考えると顔はホントに良く出来ていると思いますね。商品上、顔はすごく小さくなってしまうわけですが、だからと言ってボンヤリとしたもので良いわけではないでしょうし。
ガンダムを始めとするロボットアニメって、思った以上にロボットの頭のアップが多いものなのですが、お客さんは放送で観たそのアップの印象が強いし、人型をしている以上どうしても顔に目が行ってしまうと思うんです。MGの経験から技術的な制限があるとは思ったんですけど、それでも格好良くなるに越したことはないだろうと指示を出していったら、回を重ねるごとにどんどん良くなってきました。顔だけ眺めていても飽きないくらいに良く出来ていると思います。
「ROBOT魂」がガンプラと異なる点として、塗装済み完成品であるということがありますよね。商品コンセプトとしても「MS IN ACTION!!」より高品質・高価格ということでしたので、それに見合った質感を持たせたいと考えました。そこで贅沢を言わせてもらって、敢えてアニメーションのイメージ通りの解釈にはしなかったところがいくつもあります。メタリックのカラーリングはその最たるものですね。
アニメーションの色というのは映像としてモニター画面やスクリーンでみたときに映えるように決められているので、その色を立体物で忠実に再現してしまうと、アニメーションの設定通りではあっても商品として大人の鑑賞に耐えられるのか?安っぽくならないだろうか?という疑問がありました。ですから、例えば赤い部分を別の白や黄の色に塗るわけにはいかないけれど、同じ赤でも別の表現手段があって良いのではないかと。1/1のガンダムだって、アニメーションと同じ解釈の色に塗装されてないから本物っぽく見えると言われていましたよね(笑)
ビームライフルのメタリック表現も、連結のロングライフルにして構えさせた時に目が行くポイントとしてアピールの強いイメージを狙っています。このメタリック塗装は商品の差別化という面でもチャレンジしたところです。こういうアプローチの商品があってもいいんじゃないだろうかと。アニメーション本編の色のイメージではなく、雑誌やポスター、パッケージなどの版権イラストのような大人っぽい表現、ライティングを意識した色と解釈してもらえるといいんじゃないでしょうか。
ただ、輝く関節に関しては素材の問題もあって、残念ながらいまだに及第点には達する事ができませんでした。可動させて遊ぶ事は難しくなってしまうのでしょうけれど、鑑賞用という事では完全塗装版なんて物が可能であれば、チャレンジしてみたいですね。
―― 造形、ギミックとしてこだわった部分は?
何箇所かありますが、特に足首(アンクルガード)とウイングにはこだわりました。
足首のガードは、アニメーションの設定画では脛の装甲が延長されたように(脛の装甲にくっついているように)描かれていて、実際に作画するときもそのように描いているんです。ところがMGの監修をするようになって、ガンプラの立体物だと解釈が異なることに気がついた。脛の装甲とつながるのではなく、くるぶしの部分にジョイントがあって独立して可動できるようになっているんですね。それで、これは可動部のジョイントの強度の問題なんでしょうが、アンクルガードが脛の方の高い位置に保持できずに足の甲の方に下がって足の甲の上に乗ってしまうんですね。
これが自分としてはだらしなく見えて耐えられない(笑) アンクルガードが下がって空いた隙間から関節部分が見えてしまっては装甲の意味がないし、デザイン上も脛からのラインが途切れてしまってせっかくの脚の長さが短く見えてしまうんですよ。ですから、脛の装甲側にアンクルガードのジョイントを作って、脛からアンクルガードまでがひとつのラインになるようにとお願いしました。動かせるから動かすというのではなく、可動によってデザインの持っている良さを損なわないようにというアプローチです。
ウイングについては、やはりストライクフリーダムにとってウイング展開は見せ場のひとつですから一番綺麗に迫力がある様に見える作画にするわけですが、それは必ずしも設定通りの可動では再現できないという場合があります。
実は設定そのままでアニメーション的に展開させると一番上のウイング基部のスラスターブロック部分が頭上で干渉してしまうんですね。アニメーションの作画ではなんとかごまかしてしまうんですが、これはMGのときに対処しきれなかった所で、今回は別ブロックにして可動させるなどのアイデアで対応してもらいました。これでアニメーションのように綺麗な放射状にウイングを展開する事ができるようになりました。
―― 発売された「ROBOT魂<SIDE MS> ストライクフリーダムガンダム」の感想、
購入者へのメッセージ
12センチというスケールの中にいろいろなものを詰め込みました。その中には、これまでのストライクフリーダムのモデルと比較して、捨てたものもあり、新しく入れたものもあります。
ただ、単純に評判の良かったMGの縮小コピーにはしたくありませんでした。小さいサイズなりの表現もあるだろうし、現在新しく出すものですから以前のものより良くなっている部分がなければ作っている我々も面白くないし、お客さんも納得しないだろうと考えていました。そういう意味では、発売された商品はなかなか良い線を行っているんじゃないかなと思います。MGのときから何段階かのステップアップができたと思います。MG ストライクフリーダムを持っている人が手に取ってくれて、商品ジャンルの違いを越えて進化を実感してくれたら嬉しいですね。
また「ROBOT魂」ファンの方には、このストライクフリーダムで「ROBOT魂」のグレードが上がったと感じてもらえたら、監修者としてはしめしめと言ったところですよね(笑)
重田 智(しげた さとし)
アニメーター。特にメカ系のアニメに数多く参加している。ダイナミックで迫力のある構図が特徴的。
代表作は『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』ビデオシリーズ(メカ作画監督)、『GEAR戦士 電童』
(総メカ作画監督)、『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(チーフメカ
作画監督)など。
アニメーター。特にメカ系のアニメに数多く参加している。ダイナミックで迫力のある構図が特徴的。
代表作は『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』ビデオシリーズ(メカ作画監督)、『GEAR戦士 電童』
(総メカ作画監督)、『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(チーフメカ
作画監督)など。
ROBOT魂<SIDE MS> ストライクフリーダムガンダム 発売日: 2010年8月28日 価 格 : 3,675円(税込) |
関連サイト
あなたへのオススメ
編集部イチオシ
PREMIUM BANDAI
プレミアムバンダイ