組織人とは「組織に忠誠を誓う人々」とされていますが、組織に忠誠を誓うと言っても様々です。働き方が多様化している現代では、組織に属さずに仕事をする「プロフェッショナル(仕事人)」も少なくありません。
一方でなにかしらの組織に所属している場合は、レポートライン(いわゆる報告・連絡・相談のコミュニケーション・フロー)内で、自分が上司(先輩)だったり部下(後輩)だったり、同時にいろいろな立場にあります。一億総中間管理職時代と言えそうです。
この場合、どんな振る舞いが自身のキャリアやチームのビジネスに良い効果をもたらすでしょうか。第18回もガンダムに学んでまいります。
一方でなにかしらの組織に所属している場合は、レポートライン(いわゆる報告・連絡・相談のコミュニケーション・フロー)内で、自分が上司(先輩)だったり部下(後輩)だったり、同時にいろいろな立場にあります。一億総中間管理職時代と言えそうです。
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組織のメンバーの一人ひとりに、部下の側面と上司の側面があります。たとえ社長であったとしても、株主や投資家には上司に対するのと似た接し方をすることも多いでしょう。また、組織図上は直接の部下がいなくても、指導する相手として後輩をもつ人は少なくありません。組織人の多くは上から下まで誰かの部下や後輩で、誰かの上司や先輩です。加えて、似た階層にある同僚、斜め上、斜め下などと日常的に関係を持って活動します。
さらに、それぞれ組織全体だけでなく、部門や部、課や室といった、より小さな部分に帰属しています。社内では、社員というよりも部員や課員の立場や役割に注目されがちです。このように多くの人の自我は多義的で、随時、さまざまな役割や帰属先などもふまえつつ、複数の自我のバランスをとりながら働いています。
ところが、ひとつの自我だけが色濃く現れる人もいます。例えばマ・クベはジオン公国軍の大佐でオデッサ駐屯部隊を率いる立場ですが、隊員たちの上司という立場よりもキシリアの直系の部下としての自我が圧倒的に強そうです。
常にキシリアへの忠義を貫いているのは、自身の立身出世の野心のためともとれますが、好意的に捉えるなら彼固有の組織人としての美学や哲学によるものかもしれません。あの有名な「いいものだ」と言われる壺は、キシリアへの忠義だけでなく、自身が大事にしている美学も象徴しているように思われます。
さらに、それぞれ組織全体だけでなく、部門や部、課や室といった、より小さな部分に帰属しています。社内では、社員というよりも部員や課員の立場や役割に注目されがちです。このように多くの人の自我は多義的で、随時、さまざまな役割や帰属先などもふまえつつ、複数の自我のバランスをとりながら働いています。
ところが、ひとつの自我だけが色濃く現れる人もいます。例えばマ・クベはジオン公国軍の大佐でオデッサ駐屯部隊を率いる立場ですが、隊員たちの上司という立場よりもキシリアの直系の部下としての自我が圧倒的に強そうです。
常にキシリアへの忠義を貫いているのは、自身の立身出世の野心のためともとれますが、好意的に捉えるなら彼固有の組織人としての美学や哲学によるものかもしれません。あの有名な「いいものだ」と言われる壺は、キシリアへの忠義だけでなく、自身が大事にしている美学も象徴しているように思われます。
組織ではなく個人への忠誠を強要するのは劇中ではあまり見られませんし、現代の多くの組織でもいささか奇異なことです。とはいえ、そうした上司は今でも存在します。老いつつも重要な立場にいて、極端な忠義を要求するかもしれません。資源の有限性を鑑みれば、個人的な忠誠を強要するのは効率的でも建設的でもなさそうです。
対してヤザンは、大佐より何階級も低い中尉(後に大尉)です。野獣と呼ばれることもある粗暴な男として知られていますが、部下思いの描写もあります。また仲間を大事にしている様子も伺えます。個人的な行動特性は攻撃的で、ときに狡猾ですが、部下や仲間から見れば頼りになる存在なのかもしれません。
組織の中でより高位にある大佐が自身を「部下」として意識し、より下位にある中尉が自らを「上司」と認識して行動しているのは、一見、階位と自我が逆転しているような、不思議な印象を受けます。
上司よりも部下の方が多くなった時点で、上司の自我をうまく発揮してもらいたいと思いますが、実態は意外と逆なことも多そうです。現場のリーダーであれば戦場の臨機応変の意思決定や柔軟な立ち回りを要求され、そうした活躍が戦績や評価につながることでしょう。それが本社や本部付けになった途端、組織の政治的なダイナミズムとは無縁ではいられなくなります。シャアでさえ、少佐として木馬を追いかけていた頃の方が、大佐になってからよりも上司っぽい様子が伺えます。
実世界を眺めていても、どうやら階級が高ければ自然に上司っぽくとなる、というわけではさそうです。むしろ、階級が高くなることで部下の数が増え、個々人との日常的なコンタクトは失われがちです。反対に直接の報告や会議などで上司との接触頻度が増え、それまでよりも内向きにならざるを得なくなっていくのかもしれません。
日々の習慣や行動が、自我や役割意識を強めていくというのは理解しやすいことです。顧客中心の社風を作ろうとか、社外に目を向けようというスローガンが掲げられることがあります。その解決には、日常的な接触頻度などといった簡単なことが、意外と役に立つ影響をもたらすのかもしれません。
組織の中では多種多様な役割や階層が存在し、様々なダイナミズムの中で、複数の自我や役割を意識する必要があります。自身が最もうまく貢献できる立ち位置と自我を探してみるのは、キャリアを模索する過程で、役に立つヒントをもたらすかもしれません。
Gundam Meets Businessでは、皆様からのご意見・ご感想をお待ちしております。「ぜひこんなテーマを扱って欲しい」「ビジネスでこんな課題を抱えている」「こんな用語をガンダムで解説すると?」など、お寄せください。連載の参考にさせていただきます。お便りは、ガンダムインフォのお問い合わせフォームよりお願い致します。
GMBとは
ガンダムをこよなく愛し、ガンダムでビジネスを語る、謎でもないマーケターユニット。
音部 大輔
日米P&G、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、資生堂などで、マーケティング担当副社長やCMOとしてマーケティング組織を構築・指揮し、持続的成長を実現。2018年より株式会社クー・マーケティング・カンパニー代表取締役。国内外のさまざまなクライアント企業にマーケティング組織強化など提供。博士(経営学 神戸大学)。日本マーケティング学会 理事。日経BPマーケター・オブ・ザ・イヤー審査員、日経BtoBデジタル・マーケティングアワード審査員。著書に『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(宣伝会議)、『マーケティングプロフェッショナルの視点』(日経BP)
田中 準也
新卒でクレディセゾン入社。その後ジェイアール東日本企画、電通、トランスコスモス、メトロアドエージェンシー、電通レイザーフィッシュ(現電通アイソバー)を経て、2015年インフォバーン入社。2017年に取締役に就任。2019年より取締役COO。マスからデジタルまで精通し、オンラインとオフラインを横断する総合的なコミュニケーションデザイン及び新規事業開発・推進が得意。
一般社団法人マーケターキャリア協会 代表理事。
豊後 祐紀
29歳。新卒でデジタルマーケティング支援会社、読売広告社 シンガポール支店を経て、2017年12月より子供の頃の夢だったゲームのマーケターとしてDMM.com(現 DMM GAMES)に所属。eスポーツ(PUBG JAPAN SERIES)におけるマーケティングやスポンサードを担当。自社のeスポーツのファン層拡大だけでなく、eスポーツ全体を視聴層を広げるために尽力している。
新卒でクレディセゾン入社。その後ジェイアール東日本企画、電通、トランスコスモス、メトロアドエージェンシー、電通レイザーフィッシュ(現電通アイソバー)を経て、2015年インフォバーン入社。2017年に取締役に就任。2019年より取締役COO。マスからデジタルまで精通し、オンラインとオフラインを横断する総合的なコミュニケーションデザイン及び新規事業開発・推進が得意。
一般社団法人マーケターキャリア協会 代表理事。
豊後 祐紀
29歳。新卒でデジタルマーケティング支援会社、読売広告社 シンガポール支店を経て、2017年12月より子供の頃の夢だったゲームのマーケターとしてDMM.com(現 DMM GAMES)に所属。eスポーツ(PUBG JAPAN SERIES)におけるマーケティングやスポンサードを担当。自社のeスポーツのファン層拡大だけでなく、eスポーツ全体を視聴層を広げるために尽力している。
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