文化功労者は、文化の向上発達に関し特に功績顕著な者を顕彰する制度で、令和3年度は21人が選出。
富野監督の選出理由は「物事の本質をつく視点で壮大な世界観をもつ作品を創造し、我が国のアニメーション界に新たな表現を切り拓いてきたものであり、アニメーションを文化として発展させた功績は極めて顕著」として顕彰された。
アニメーション映画監督・原作者 富野由悠季(とみのよしゆき)
(本名:富野喜幸)
昭和16年11月5日生
昭和39年3月 日本大学芸術学部映画学科
同 39年4月 (株)虫プロダクション入社(同42年3月まで)
同 47年4月 『海のトリトン』で監督デビュー
同 54年4月 『機動戦士ガンダム』を監督
平成15年4月 金沢工業大学客員教授(令和2年3月まで)
同 28年9月 (一社)アニメツーリズム協会会長(現在まで)
令和元年6月 「富野由悠季の世界」展開催
【賞】
昭和50年5月 児童福祉文化賞(映画部門)(『しあわせの王子』)
同 50年7月 教育映画祭(一般部門)最優秀作品賞(『しあわせの王子』)
平成18年2月 デジタル・コンテンツ・オブ・ザ・イヤー2005 AMD功労賞
同 18年2月 デジタルコンテンツグランプリ優秀賞(『機動戦士ΖガンダムII A New Translation 恋人たち』)
同 18年2月 シカゴ国際映画祭アニメーション功労賞
同 21年8月 ロカルノ国際映画祭名誉豹賞
令和元年12月 文化庁長官表彰
氏は昭和39年に日本大学芸術学部映画学科を卒業後、手塚治虫が率いる虫プロダクションに入社、『鉄腕アトム』で脚本演出等も手掛けるようになった。その後、フリーとなってテレビアニメーション(以下テレビアニメ)界で活躍するようになり、同47年には手塚治虫の同名原作漫画をもとに独自の世界を展開した『海のトリトン』で、連続テレビアニメの総監督としてデビューする。氏は『勇者ライディーン』(同50年)で、それまで漫画原作をベースに制作されるのが常だったロボットアニメの常識を超え、オリジナルのシリーズを開拓する。
同54年には、原作・総監督として『機動戦士ガンダム』を発表。今日に続く「ガンダム」シリーズの原点を打ち立てた。モビルスーツを兵器とした人間同士の戦いという現実社会を反映させた壮大な世界観は、新たに「リアルロボット」という呼称を生み、勧善懲悪的ストーリーを退けたシリアスな人間ドラマは、子供向けとされていたテレビアニメの視聴層を広げ、クリエイターの存在を大きく高めることに貢献した。氏はテレビシリーズを手がける一方、劇場版『機動戦士ガンダム』(同55年)など映画制作にも力を注ぎ、多くのシリーズ作品を生み出して、後進にも大きな影響を与える。このような氏の活躍は、アニメーション界に革命を引き起こしたとして国内外で評価され、シカゴ国際映画祭アニメーション特別功労賞やロカルノ国際映画祭名誉豹賞などを受賞している。
また、平成15年からは金沢工業大学の客員教授として公開講座「ガンダム創出学」を担当し、同28年にはアニメツーリズム協会の初代会長に就任して、シンポジウムやイベント等で講演を行うなど、アニメーション文化の振興のために積極的な活動を続けている。
以上のように、氏は物事の本質をつく視点で壮大な世界観をもつ作品を創造し、我が国のアニメーション界に新たな表現を切り拓いてきたものであり、アニメーションを文化として発展させた功績は極めて顕著である。
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