2007年12月15日 (土)
PS2「SD ガンダム ジージェネレーションスピリッツ」特集【第4回】
ついに発売されたGジェネ最新作!開発者インタビューをお届け! まだまだGジェネの進化は止まらない!
ついに発売された「SDガンダムジージェネレーションスピリッツ」まだまだプレイ中のガンダムファンも多いと思う。今回は「Gジェネ」の開発陣のインタビューをお届けするぞ!
■もう一度イチから「Gジェネ」を作り直してみる
―― 振り返ってみて、今一番印象に残っていることは何ですか?
広野:まずは「発売に間に合うのかな?」と。そこです(笑)。
一同:(笑)
広野:ゲーム製作というのはいつもギリギリまで、終わりのないものなんですが、「一番いい
売り時期に、いいものを導入したい」というのが会社的な思惑だったり、ブランドとして
の売り方だったりするので、そこを守っていかないといけないという部分があり、本当
にスリリングな日々を味わさせていただきました(笑)。
一同:(笑)
広野:まぁ、でも本当にきっちり間に合うかどうかというところだったんですが、長年Gジェネ
をやってきて骨の髄まで作られている方々の底力もあり、「トムクリエイトさんの
パワーはやっぱりちがうな」というのを改めて感じました。追い込みで本当に急に
安定したりとかするので、すごく面白かったですね(笑)。
―― 具体的に何か苦い思い出という感じでしょうか?
広野:いや、苦い思い出とか、そういうものはないんですが、「やばいかもしれないなー」
という空気はあったかもしれないものの、ある一時点から急にそれがフッと消えて、
「あ、これ大丈夫だー!」みたいな(笑)。そこに開発スタッフの底力と、すごいミラク
ルを感じましたね。
一番印象的に残っているというか、一番良かったと思うところです。
―― 宮城さんは印象に残っていることは何ですか?
宮城:そうですね。今の話の続きをさせてもらうとすれば、「絶対間に合わすぞ!!」と(笑)。
一同:(笑)
―― そこまで危機的状況だったんですか(笑)。
広野:いや、そこまで危機的状況ではなかったです。いいものを作って、なおかつ間に合わ
せるというのが、ゲーム製作で一番大切なところなので。
―― なるほど。今回ゲームからだいぶ熱意を感じますが、開発もとても熱かったのでは?
宮城:そうですね。でも本当に久しぶりにGジェネを作ったんですよ。3年ぶりなんですけど、
「SDガンダム GGENERATION NEO」「SDガンダム GGENERATION SEED」の路線と
違って、一番最初の「SDガンダム GGENERATION」のときの「Gジェネの作り」を
いい意味で目指していったのが今回の「スピリッツ」なんです。
正統派の「これぞGジェネ」として「Gジェネってどういうものなんだろう」「どういう作り方
をすればいいんだろう」ということを、もう一度イチから考え直して、今回作ったところ
があります。
まさに魂を入れて作ったというところがあって「スピリッツ」というタイトルにさせて
もらいました。正統派の「これぞGジェネ」という答えを求めてスタートした、答えの
ひとつがこの「ジージェネレーションスピリッツ」ですね。
―― 上瀧さんが今一番印象に残っていることはなんですか?
上瀧:最初にゲームを作る際に企画書を作るのですが、そこから「どういったものを作りた
いか」とテストをする評価版を最初に製作しました。
評価版ができたときに「これはイケる!」というのが見えたんです。そこをスタートに
して、「どいうったコンセプト作っていこうか」というのを固めていって、そこから製作
に入って作りこんでいくんですが「ジージェネレーションスピリッツ」が完成したときに、
当初に目指したものができたな、と思いました。
「最初に熱く感じたものを実現できた」という事が、うれしい感触ですね。
広野:でも上瀧さんが一番うれしいことは森口博子さんに会えたことですね。
一同:(笑)
上瀧:「俺のもう一つの夢がかなったぞ」と(笑)。
■宇宙世紀に絞った理由は「男らしく行こう!」
―― お話からしても開発陣は最初からボルテージが高かったんだな、と感じますね。
広野:全スタッフが最初から「新しいGジェネ」を作ろうと思ってましたからね。今までのGジェ
ネをぶち壊してもう一段階上に行ってみようという気持ちを常に持っていたんです。
―― 「宇宙世紀」に限定された経緯は?
宮城:開発期間も考えて、ざっくりと計算して出たユニット数の600体だったんです。
「SDガンダム GGENERATION PORTABLE」がGジェネで最高数の1200体ほど出る
んですよね。
本当はそこを目指していたんですが、全てのユニットを作り起こして、戦闘アニメも
作って、1200体をやろうとすると、とても1年や2年では済まないスケジュールになって
しまいます。
最初の「SDガンダム GGENERATION」が400体くらいなんですけれども、そこから
「SDガンダム GGENERATION-ZERO」に移っていって700体くらい。
そこから「SDガンダム GGENERATION-F」で1000体。つまり過去、新規タイトルが出る
たびに新規ユニットを300体くらい作ってきたんですが、今回はそれでも一気に全部
イチから作り起こして600体なんです。
それだけでも過去最高の規模になってくるんですね。
そこで計算していくと、「あ、この数、丁度宇宙世紀がうまくまとまる数じゃないの?」
というところが見えてきたんですよ。
それなら、もうここは男らしく、「宇宙世紀ってことでまとめていって、本当にGジェネ
らしいものを作るべきだろう!」と、いうのが宇宙世紀にまとめた流れですかね。
―― ガンダムの集大成でもあり、Gジェネの集大成という感じですか?
広野:Gジェネの集大成の一つ目の階段を上りはじめたのかな、という感じです。
平成系(G、W、Xなど)とかSEEDが抜けている時点でGジェネのブランドとしては
不完全であると思うんです。
本当は平成系(G、W、Xなど)とかちょっとだけ出そうという話もあったんですが、
「そうゆうのは男らしくない!」と言われて(笑)。
―― 今回のGジェネは本当に男らしいですね。
広野:アンケート率を見ても95%以上が男性です(笑)。
■若いガンダム世代のスタッフと作り上げる「Gジェネ」
―― 製作体制はどのような感じなのでしょうか?
宮城:全体では100人を超えますが、Gジェネの中心スタッフは40人くらいでやっています。
基本的にはステージ、MAPの画面と、戦闘アニメに分かれて製作しています。
最後にはそこはリンクしてまとめていくという作り方をしています。
―― 40人ものスタッフの意見をまとめるのは大変だったと思うんですが、やはり今回は
スタッフは「宇宙世紀」というテーマがあったから、まとまったのでしょうか?
宮城:実は今回、スタッフのメンバーは若手が多いんですよ。学校出たばっかりの子たちで、
丁度、宇宙世紀を知らない世代なんですね。
「GとかWからガンダムに入りました。」というメンバーがほとんどなんですよね。
そういうメンバーに宇宙世紀の良さとか、ガンダムの動き方、見せ方、例えばガン
キャノンひとつ取っても、どういう動き方、どういうカメラアングルがいいのかなど、
何度もトライ、トライみたいな感じでした(笑)。
今回で丁度10年経つんですけれども、今回は「Gジェネ作りたくて来ました」という人
もいました。製作で「Gジェネ作りたくて来ました」というメンバーがいたのは、今回が
はじめてだと思います。
ただ、作らせてみると、前のGジェネ作っちゃうんですよ。
「今回は、今までのGジェネじゃなくて、新しいGジェネを作るんだ」というところを分って
もらうまではトライを重ねさせていきました。
―― 難しいですよね。映像から見せ方などもエッセンスを引き出していったかと思うんで
すが、今のガンダムブームというのは、ガンプラなどで進化していってる部分も多いと
思います。その部分をスタッフに教えていったのも宮城さんだったんですか?
宮城:そこは上瀧君ですね。
上瀧:今回モデリングから改めて作り直しているんですね。最近のGジェネは実機はポリゴン
で作っているんですが、以前のモデリングではポリゴン数が制限されてました。
でも今回は新しい技術を使っているので、ポリゴン数は結構使えるんです。
それで表現力を上げることができるので、ディテールまで再現することができるよう
になりました。
そうなると、アニメの設定をそのまま作るのではなく、最新の資料も統括して、モデ
リングしていく必要性も出てきます。
そこでスタッフに話を聞くと、「ガンプラは好きだ!」という人もいるんですね。
プラモから入った人も多くて、「むしろ、こっち(ガンプラの設定)だと思っていた」と
いう人もいて、もう1回モデリングをやり直すのであれば、あえて機体の新しい解釈に
挑戦してみようと。
ワクにとらわれずに、色んなメカデザイナーさんが表現されているものを取り入れて、
ガンダムといっても色々な世界があるよ、というのを取り入れたいと思いました。
広野:「SD」という限界はあるんですが、リアルな8頭身の機体を小さくしながらも、カッコ
よくできるのはトムクリエイトさんならではの、巧みの技ですよ。
■ドラマティックに展開するシナリオ、臨場感ある戦闘シーン
―― シナリオの作りで苦労された点などはありますか?
宮城:今回はフルボイスなので、シナリオが先にないとアフレコができないので、そこが
一番苦労した点ですね。
従来のGジェネのシナリオは最後の最後までいじくるんですね、調整のために。今回
それがNGだったので、前段階で完成状態のシナリオを作らなければならなかった
のが大変な点でしたね。
―― 逆に「ここが良かった」という点は?
宮城:過去のGジェネのシナリオというのは、作中の戦闘場面を中心にシナリオを持って
きたのですが、今回は人間的なドラマティックな場面を多く入れていますね。フル
ボイスで声優さんの演技が入ってくるという点があったので。
今まではなかったパターンでいくと、「ポケットの中の戦争」ではアルというキャラを入
れてみたり、ドラマティックな部分にこだわったシナリオ作成というものを心がけて作り
ました。
―― そして、今回はさらに戦闘シーンに迫力が増したと思いますが?
上瀧:そうですね。コンセプトに「臨場感」というのがあります。気を使っているのが、マップ
にはスケール感を出しつつ、戦闘に入ったときに、ユニットたちが「その中で戦闘
しているんだな」と自然な流れに見えるようにしたかったんですよ。
戦闘で区切るのではなく、「自分がそこにいて、戦闘をしているんだな」というのを
プレイヤーに見せようと思いました。
要はプレイヤーがカメラマンというか、プレイヤーがゲームの戦場を一歩引いて見て
いるのではなく、右を見たらリックディアスがいて、左を見たら百式がいるように、
マップ上で配置しているユニットがあたかもそのままの配置で戦っていて、1個の
戦場にいるんだな、というのを表現したかったんですね。
やはり原作はアニメーション作品でもあり、そういった「ガンダムらしさ」というポイント
を抑えて、ゲームと融合した作りにしています。
宮城:基本の作りというのは80年代のアニメがあったんですね。今回コクピットインという
新システムもそこから来たアイデアです。
モビルスーツの戦闘シーンの見せ方というのが、モビルスーツの戦闘中、人の声が
飛び交ったりしますよね。まさにアレが当時は斬新で画期的な見せ方でした。
今回そういったアニメーションのテクニックを、ゲームの方で戦闘や演出で入れて
みよう、と思ったわけです。
でも1回作りこみすぎちゃって、交戦状態をそのままリアルタイムで出してみたら、
ビームは踊りまくるわ、自分はいつの間にか攻撃されているとか、わけわからなく
なっちゃった時がありましたね(笑)。
一同:(笑)
■森口博子が歌うテーマソング
―― 今回森口さんを起用された経緯を教えていただければ
広野:最初はすごく軽い話からですね「今回は新しくテーマソング付けたいですよね?「付け
ましょうか?」「Gジェネ初ですね?森口さんに歌ってもらうのは?」
上瀧:「森口さんいいですねー!」みたいな(笑)。
―― ものすごい軽いノリですね。
上瀧:最初ムリだと思ってましたから(笑)。
最初にそのお話をいただいたときに、スタッフの間で「テーマソング入れてみたいね」
という話にはなったんですね。 そこで誰にするかという話になって、宇宙世紀のガン
ダムならば、僕のイメージは完全に森口博子さんになったんです。
まだ、本当に歌ってもらえるかどうかは、わかりませんでしたけど、僕の夢だったの
で、やりたいということで、広野さんに話を持っていってもらったんですね。
広野:宇宙世紀を代表する人といったら森口さんしかいないでしょう、ということで音楽出版
社さんにお話を持っていったんですよ。そしたら「ぜひやらせてほしい」と快諾してくれ
たので、いい形で進みました。
森口さんも、非常にノリノリで快諾してくれました。森口さん自身「Zガンダム(OP)」
でデビューされてますし、紅白歌合戦も「ガンダムF91(テーマソング)」で出ています
し、「節目にガンダムがあった」ということをおっしゃってくださったので、非常に積極
的に参加してくださいました。
―― OPを見ていると、曲とのマッチング感がすごいですね。
広野:いっしょに作ったからこそというのがありますね。タイアップというのはよく曲だけが先行
しがちなんですが、今回の曲は同じ方向を向いて曲と映像の制作ができたというの
がありますね。
今回リサーチした中で、女性のコメントで「ガンダムは知らないけどカッコイイ曲だと
思う」という意見が多かったようです。硬派というか、戦場を感じさせてくれるような、
そういう意味では「ガンダムらしい」曲だと思いました。ラブソングとかではなく、
ガンダムのための曲だと思いましたね。
上瀧:森口さん自身も壮大な曲だとおっしゃってましたね。
広野:うん。すごくハマりました。
■Gジェネはユーザーに「遊び方」をゆだねているソフトである。
そしてこれからの「Gジェネ」とは――
―― ガンダムファンに対する意識というのはどのくらいありますか?
上瀧:ガンダムファンを考えたとき、Gジェネを作っていて思うのは、ガンダムタイプや
主人公はもちろん活躍しますが、あまり活躍できなかったキャラやモビルスーツを
「もっと出してあげたい」という事です。Gジェネシリーズのコンセプトでもありますね。
実際のユーザーの声を聞くと、「自分はこれを使ってやっている、自分が一番好き
なのはこのモビルスーツだ!」という声が本当に様々なんですね。
宮城:戦略シミュレーションゲームというのは、実は結構、遊び方というのは決まっている
ものなんですね。
ですが、Gジェネというのは遊び方をユーザーにゆだねているところがあるんです。
それこそ「プロフィール率を100%になるまでやるんだ!」という人もいれば「好きな
モビルスーツを使って、それ1体をどんどん強くしていくんだ!」という人もいます。
ユーザーによって遊び方が違うので、ユーザーに十分に遊んでもらえるように意識
して作っています。
―― これからのGジェネについてお聞きしたいのですが。
広野:う~ん…「こうしなきゃいけない」というのはわかるんですよ。より多くのユーザーに
触れてもらわなくちゃいけない。そして「ガンダム」という名を冠している以上、もはや
ガンダムは国民的キャラクターですし、知らない人はいないので、「Gジェネ」もその
くらいになれたら一番すばらしいと思うんです。ガンダムがあって、「ゲームやるん
だったらGジェネだよね」となったら、キャラクターゲームとしてはこれ以上すばらし
いものはないわけで。
その辺まで「国民的ゲームにする」ことがGジェネの目的のような気がしますね。
より間口を広げて、より遊びやすく、です。
SDではあるんですが、カッコよさは誰しも認めている部分ですし、「Gジェネ」でしか
できないこともやりつつ、新しいことにもドンドンチャレンジして、Gジェネの中でも
「ジェネレーション」が出来て、その先に進めたらいいかな、と思いますね。
―― 次のステップでは、さらなるボリュームに挑戦しなければならないと思うんですが…。
宮城:逆にボリュームネタにはあまり心配はしていないんですね。新しいガンダムもドン
ドン出てきますから。
むしろ、遊び方のほうですね。今回この「Gジェネ魂」に持ってこれたものを、「次の
段階としてはどう持っていくのか」というところが、今やらなくてはいけないところかな
と思いますね。
そこが出来てから、次のボリュームへ、というところへ行きますので。ボリュームに
関してはそれをどうまとめていくか、というのが大切なところだと思います。
―― さらに若いスタッフたちがさらにどう作ってくのかな、というのが楽しみですね。
宮城:実は今、「Gジェネ魂」完成した時点で、「いいものできたね」という感覚よりはむしろ
「できなかったよね」という感覚のほうが多いんですよ。
―― ここまでやったのにですか?
宮城:ええ。「あそこ失敗しちゃったよね」とか「ココこうすればよかったよね」という意見が
圧倒的に多いんですね。
広野:やりたいことは実はものすごく多いんですね。これでもやりきれなかった、出せな
かったネタは多いんです。
でも、それはきっと次につながる大きな糧であると信じています。
―― 今後も期待してます。本日はありがとうございました。
(インタビュー内敬称略)
Gジェネを作る男たちは日夜、Gジェネの開発に取り組んでいるということを感じたインタビューだった。広野氏、宮城氏、上瀧氏はすでに次のGジェネに目線が向かっているようだ。これからもGジェネの進化に期待しよう!
▲(右から)株式会社バンダイナムコゲームス 広野 啓氏、株式会社トムクリエイト 宮城嘉樹氏、株式会社トムクリエイト 上瀧圭一郎氏
■もう一度イチから「Gジェネ」を作り直してみる
―― 振り返ってみて、今一番印象に残っていることは何ですか?
広野:まずは「発売に間に合うのかな?」と。そこです(笑)。
一同:(笑)
広野:ゲーム製作というのはいつもギリギリまで、終わりのないものなんですが、「一番いい
売り時期に、いいものを導入したい」というのが会社的な思惑だったり、ブランドとして
の売り方だったりするので、そこを守っていかないといけないという部分があり、本当
にスリリングな日々を味わさせていただきました(笑)。
一同:(笑)
広野:まぁ、でも本当にきっちり間に合うかどうかというところだったんですが、長年Gジェネ
をやってきて骨の髄まで作られている方々の底力もあり、「トムクリエイトさんの
パワーはやっぱりちがうな」というのを改めて感じました。追い込みで本当に急に
安定したりとかするので、すごく面白かったですね(笑)。
―― 具体的に何か苦い思い出という感じでしょうか?
広野:いや、苦い思い出とか、そういうものはないんですが、「やばいかもしれないなー」
という空気はあったかもしれないものの、ある一時点から急にそれがフッと消えて、
「あ、これ大丈夫だー!」みたいな(笑)。そこに開発スタッフの底力と、すごいミラク
ルを感じましたね。
一番印象的に残っているというか、一番良かったと思うところです。
―― 宮城さんは印象に残っていることは何ですか?
宮城:そうですね。今の話の続きをさせてもらうとすれば、「絶対間に合わすぞ!!」と(笑)。
一同:(笑)
―― そこまで危機的状況だったんですか(笑)。
広野:いや、そこまで危機的状況ではなかったです。いいものを作って、なおかつ間に合わ
せるというのが、ゲーム製作で一番大切なところなので。
―― なるほど。今回ゲームからだいぶ熱意を感じますが、開発もとても熱かったのでは?
宮城:そうですね。でも本当に久しぶりにGジェネを作ったんですよ。3年ぶりなんですけど、
「SDガンダム GGENERATION NEO」「SDガンダム GGENERATION SEED」の路線と
違って、一番最初の「SDガンダム GGENERATION」のときの「Gジェネの作り」を
いい意味で目指していったのが今回の「スピリッツ」なんです。
正統派の「これぞGジェネ」として「Gジェネってどういうものなんだろう」「どういう作り方
をすればいいんだろう」ということを、もう一度イチから考え直して、今回作ったところ
があります。
まさに魂を入れて作ったというところがあって「スピリッツ」というタイトルにさせて
もらいました。正統派の「これぞGジェネ」という答えを求めてスタートした、答えの
ひとつがこの「ジージェネレーションスピリッツ」ですね。
―― 上瀧さんが今一番印象に残っていることはなんですか?
上瀧:最初にゲームを作る際に企画書を作るのですが、そこから「どういったものを作りた
いか」とテストをする評価版を最初に製作しました。
評価版ができたときに「これはイケる!」というのが見えたんです。そこをスタートに
して、「どいうったコンセプト作っていこうか」というのを固めていって、そこから製作
に入って作りこんでいくんですが「ジージェネレーションスピリッツ」が完成したときに、
当初に目指したものができたな、と思いました。
「最初に熱く感じたものを実現できた」という事が、うれしい感触ですね。
広野:でも上瀧さんが一番うれしいことは森口博子さんに会えたことですね。
一同:(笑)
上瀧:「俺のもう一つの夢がかなったぞ」と(笑)。
株式会社トムクリエイト 宮城嘉樹氏 「SDガンダム ジージェネレーションスピリッツ」 ディレクター 一番最初の「SDガンダム GGENERATION」から製作されてきたゲームデザイナー。今回多くの若手スタッフに「ガンダムとはこういうものだ!」という熱い魂を吹き込まれていたということで、おっしゃる通りゲームは魂を感じる熱い出来栄えだ! |
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株式会社トムクリエイト 上瀧圭一郎氏 「SDガンダムジージェネレーションスピリッツ」 プランナー ゲームの見せ方については、新しいことに挑戦しながらも、地道な職人技が込められているのだという。600体のモデリングに関しては、色んなスタッフの解釈やデザインを反映していったとのことで、SDでありながら、ガンプラのMGやHGUCなど、最新のエッセンスがジェネスピリッツには注がれているのだ! |
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株式会社バンダイナムコゲームス 広野 啓氏 「SDガンダム ジージェネレーションスピリッツ」 プロデューサー 様々なゲーム雑誌でインタビューなどに答えているガンダムゲームの名物プロデューサー。今回「Gジェネ魂」には全社的にかなり力を入れているという。「まだまだこれからもGジェネの進化は続きます!」と熱く語ってくれた。 |
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■宇宙世紀に絞った理由は「男らしく行こう!」
―― お話からしても開発陣は最初からボルテージが高かったんだな、と感じますね。
広野:全スタッフが最初から「新しいGジェネ」を作ろうと思ってましたからね。今までのGジェ
ネをぶち壊してもう一段階上に行ってみようという気持ちを常に持っていたんです。
―― 「宇宙世紀」に限定された経緯は?
宮城:開発期間も考えて、ざっくりと計算して出たユニット数の600体だったんです。
「SDガンダム GGENERATION PORTABLE」がGジェネで最高数の1200体ほど出る
んですよね。
本当はそこを目指していたんですが、全てのユニットを作り起こして、戦闘アニメも
作って、1200体をやろうとすると、とても1年や2年では済まないスケジュールになって
しまいます。
最初の「SDガンダム GGENERATION」が400体くらいなんですけれども、そこから
「SDガンダム GGENERATION-ZERO」に移っていって700体くらい。
そこから「SDガンダム GGENERATION-F」で1000体。つまり過去、新規タイトルが出る
たびに新規ユニットを300体くらい作ってきたんですが、今回はそれでも一気に全部
イチから作り起こして600体なんです。
それだけでも過去最高の規模になってくるんですね。
そこで計算していくと、「あ、この数、丁度宇宙世紀がうまくまとまる数じゃないの?」
というところが見えてきたんですよ。
それなら、もうここは男らしく、「宇宙世紀ってことでまとめていって、本当にGジェネ
らしいものを作るべきだろう!」と、いうのが宇宙世紀にまとめた流れですかね。
―― ガンダムの集大成でもあり、Gジェネの集大成という感じですか?
広野:Gジェネの集大成の一つ目の階段を上りはじめたのかな、という感じです。
平成系(G、W、Xなど)とかSEEDが抜けている時点でGジェネのブランドとしては
不完全であると思うんです。
本当は平成系(G、W、Xなど)とかちょっとだけ出そうという話もあったんですが、
「そうゆうのは男らしくない!」と言われて(笑)。
―― 今回のGジェネは本当に男らしいですね。
広野:アンケート率を見ても95%以上が男性です(笑)。
▲今回は600体のモデリングをイチから作り直したのだ。
■若いガンダム世代のスタッフと作り上げる「Gジェネ」
―― 製作体制はどのような感じなのでしょうか?
宮城:全体では100人を超えますが、Gジェネの中心スタッフは40人くらいでやっています。
基本的にはステージ、MAPの画面と、戦闘アニメに分かれて製作しています。
最後にはそこはリンクしてまとめていくという作り方をしています。
―― 40人ものスタッフの意見をまとめるのは大変だったと思うんですが、やはり今回は
スタッフは「宇宙世紀」というテーマがあったから、まとまったのでしょうか?
宮城:実は今回、スタッフのメンバーは若手が多いんですよ。学校出たばっかりの子たちで、
丁度、宇宙世紀を知らない世代なんですね。
「GとかWからガンダムに入りました。」というメンバーがほとんどなんですよね。
そういうメンバーに宇宙世紀の良さとか、ガンダムの動き方、見せ方、例えばガン
キャノンひとつ取っても、どういう動き方、どういうカメラアングルがいいのかなど、
何度もトライ、トライみたいな感じでした(笑)。
今回で丁度10年経つんですけれども、今回は「Gジェネ作りたくて来ました」という人
もいました。製作で「Gジェネ作りたくて来ました」というメンバーがいたのは、今回が
はじめてだと思います。
ただ、作らせてみると、前のGジェネ作っちゃうんですよ。
「今回は、今までのGジェネじゃなくて、新しいGジェネを作るんだ」というところを分って
もらうまではトライを重ねさせていきました。
―― 難しいですよね。映像から見せ方などもエッセンスを引き出していったかと思うんで
すが、今のガンダムブームというのは、ガンプラなどで進化していってる部分も多いと
思います。その部分をスタッフに教えていったのも宮城さんだったんですか?
宮城:そこは上瀧君ですね。
上瀧:今回モデリングから改めて作り直しているんですね。最近のGジェネは実機はポリゴン
で作っているんですが、以前のモデリングではポリゴン数が制限されてました。
でも今回は新しい技術を使っているので、ポリゴン数は結構使えるんです。
それで表現力を上げることができるので、ディテールまで再現することができるよう
になりました。
そうなると、アニメの設定をそのまま作るのではなく、最新の資料も統括して、モデ
リングしていく必要性も出てきます。
そこでスタッフに話を聞くと、「ガンプラは好きだ!」という人もいるんですね。
プラモから入った人も多くて、「むしろ、こっち(ガンプラの設定)だと思っていた」と
いう人もいて、もう1回モデリングをやり直すのであれば、あえて機体の新しい解釈に
挑戦してみようと。
ワクにとらわれずに、色んなメカデザイナーさんが表現されているものを取り入れて、
ガンダムといっても色々な世界があるよ、というのを取り入れたいと思いました。
広野:「SD」という限界はあるんですが、リアルな8頭身の機体を小さくしながらも、カッコ
よくできるのはトムクリエイトさんならではの、巧みの技ですよ。
▲最新のモビルスーツの解釈を取り入れつつも、モビルスーツ1機1機の動きなどは映像作品のイメージをそのまま反映している。SDと言っても、ガンダムのカッコよさはそのまま表現されているのだ。
■ドラマティックに展開するシナリオ、臨場感ある戦闘シーン
―― シナリオの作りで苦労された点などはありますか?
宮城:今回はフルボイスなので、シナリオが先にないとアフレコができないので、そこが
一番苦労した点ですね。
従来のGジェネのシナリオは最後の最後までいじくるんですね、調整のために。今回
それがNGだったので、前段階で完成状態のシナリオを作らなければならなかった
のが大変な点でしたね。
―― 逆に「ここが良かった」という点は?
宮城:過去のGジェネのシナリオというのは、作中の戦闘場面を中心にシナリオを持って
きたのですが、今回は人間的なドラマティックな場面を多く入れていますね。フル
ボイスで声優さんの演技が入ってくるという点があったので。
今まではなかったパターンでいくと、「ポケットの中の戦争」ではアルというキャラを入
れてみたり、ドラマティックな部分にこだわったシナリオ作成というものを心がけて作り
ました。
▲オリジナル声優によるドラマが展開することで、ゲーム全体を盛り上がることに成功している。
―― そして、今回はさらに戦闘シーンに迫力が増したと思いますが?
上瀧:そうですね。コンセプトに「臨場感」というのがあります。気を使っているのが、マップ
にはスケール感を出しつつ、戦闘に入ったときに、ユニットたちが「その中で戦闘
しているんだな」と自然な流れに見えるようにしたかったんですよ。
戦闘で区切るのではなく、「自分がそこにいて、戦闘をしているんだな」というのを
プレイヤーに見せようと思いました。
要はプレイヤーがカメラマンというか、プレイヤーがゲームの戦場を一歩引いて見て
いるのではなく、右を見たらリックディアスがいて、左を見たら百式がいるように、
マップ上で配置しているユニットがあたかもそのままの配置で戦っていて、1個の
戦場にいるんだな、というのを表現したかったんですね。
やはり原作はアニメーション作品でもあり、そういった「ガンダムらしさ」というポイント
を抑えて、ゲームと融合した作りにしています。
宮城:基本の作りというのは80年代のアニメがあったんですね。今回コクピットインという
新システムもそこから来たアイデアです。
モビルスーツの戦闘シーンの見せ方というのが、モビルスーツの戦闘中、人の声が
飛び交ったりしますよね。まさにアレが当時は斬新で画期的な見せ方でした。
今回そういったアニメーションのテクニックを、ゲームの方で戦闘や演出で入れて
みよう、と思ったわけです。
でも1回作りこみすぎちゃって、交戦状態をそのままリアルタイムで出してみたら、
ビームは踊りまくるわ、自分はいつの間にか攻撃されているとか、わけわからなく
なっちゃった時がありましたね(笑)。
一同:(笑)
▲今回のGジェネの戦闘シーンの特徴としてあるのが、「コクピットイン」という新システム。コクピット内のキャラクターが表示され、しかもモニターにはマップ上の僚機が投影される。あたかもその場で戦っているように見える演出がなされているのだ。
■森口博子が歌うテーマソング
―― 今回森口さんを起用された経緯を教えていただければ
広野:最初はすごく軽い話からですね「今回は新しくテーマソング付けたいですよね?「付け
ましょうか?」「Gジェネ初ですね?森口さんに歌ってもらうのは?」
上瀧:「森口さんいいですねー!」みたいな(笑)。
―― ものすごい軽いノリですね。
上瀧:最初ムリだと思ってましたから(笑)。
最初にそのお話をいただいたときに、スタッフの間で「テーマソング入れてみたいね」
という話にはなったんですね。 そこで誰にするかという話になって、宇宙世紀のガン
ダムならば、僕のイメージは完全に森口博子さんになったんです。
まだ、本当に歌ってもらえるかどうかは、わかりませんでしたけど、僕の夢だったの
で、やりたいということで、広野さんに話を持っていってもらったんですね。
広野:宇宙世紀を代表する人といったら森口さんしかいないでしょう、ということで音楽出版
社さんにお話を持っていったんですよ。そしたら「ぜひやらせてほしい」と快諾してくれ
たので、いい形で進みました。
森口さんも、非常にノリノリで快諾してくれました。森口さん自身「Zガンダム(OP)」
でデビューされてますし、紅白歌合戦も「ガンダムF91(テーマソング)」で出ています
し、「節目にガンダムがあった」ということをおっしゃってくださったので、非常に積極
的に参加してくださいました。
―― OPを見ていると、曲とのマッチング感がすごいですね。
広野:いっしょに作ったからこそというのがありますね。タイアップというのはよく曲だけが先行
しがちなんですが、今回の曲は同じ方向を向いて曲と映像の制作ができたというの
がありますね。
今回リサーチした中で、女性のコメントで「ガンダムは知らないけどカッコイイ曲だと
思う」という意見が多かったようです。硬派というか、戦場を感じさせてくれるような、
そういう意味では「ガンダムらしい」曲だと思いました。ラブソングとかではなく、
ガンダムのための曲だと思いましたね。
上瀧:森口さん自身も壮大な曲だとおっしゃってましたね。
広野:うん。すごくハマりました。
▲森口博子さんの歌うOP「もうひとつの未来~starry spirits~」はガンダムらしい楽曲で、OP映像と見事にマッチしている。
■Gジェネはユーザーに「遊び方」をゆだねているソフトである。
そしてこれからの「Gジェネ」とは――
―― ガンダムファンに対する意識というのはどのくらいありますか?
上瀧:ガンダムファンを考えたとき、Gジェネを作っていて思うのは、ガンダムタイプや
主人公はもちろん活躍しますが、あまり活躍できなかったキャラやモビルスーツを
「もっと出してあげたい」という事です。Gジェネシリーズのコンセプトでもありますね。
実際のユーザーの声を聞くと、「自分はこれを使ってやっている、自分が一番好き
なのはこのモビルスーツだ!」という声が本当に様々なんですね。
宮城:戦略シミュレーションゲームというのは、実は結構、遊び方というのは決まっている
ものなんですね。
ですが、Gジェネというのは遊び方をユーザーにゆだねているところがあるんです。
それこそ「プロフィール率を100%になるまでやるんだ!」という人もいれば「好きな
モビルスーツを使って、それ1体をどんどん強くしていくんだ!」という人もいます。
ユーザーによって遊び方が違うので、ユーザーに十分に遊んでもらえるように意識
して作っています。
―― これからのGジェネについてお聞きしたいのですが。
広野:う~ん…「こうしなきゃいけない」というのはわかるんですよ。より多くのユーザーに
触れてもらわなくちゃいけない。そして「ガンダム」という名を冠している以上、もはや
ガンダムは国民的キャラクターですし、知らない人はいないので、「Gジェネ」もその
くらいになれたら一番すばらしいと思うんです。ガンダムがあって、「ゲームやるん
だったらGジェネだよね」となったら、キャラクターゲームとしてはこれ以上すばらし
いものはないわけで。
その辺まで「国民的ゲームにする」ことがGジェネの目的のような気がしますね。
より間口を広げて、より遊びやすく、です。
SDではあるんですが、カッコよさは誰しも認めている部分ですし、「Gジェネ」でしか
できないこともやりつつ、新しいことにもドンドンチャレンジして、Gジェネの中でも
「ジェネレーション」が出来て、その先に進めたらいいかな、と思いますね。
―― 次のステップでは、さらなるボリュームに挑戦しなければならないと思うんですが…。
宮城:逆にボリュームネタにはあまり心配はしていないんですね。新しいガンダムもドン
ドン出てきますから。
むしろ、遊び方のほうですね。今回この「Gジェネ魂」に持ってこれたものを、「次の
段階としてはどう持っていくのか」というところが、今やらなくてはいけないところかな
と思いますね。
そこが出来てから、次のボリュームへ、というところへ行きますので。ボリュームに
関してはそれをどうまとめていくか、というのが大切なところだと思います。
―― さらに若いスタッフたちがさらにどう作ってくのかな、というのが楽しみですね。
宮城:実は今、「Gジェネ魂」完成した時点で、「いいものできたね」という感覚よりはむしろ
「できなかったよね」という感覚のほうが多いんですよ。
―― ここまでやったのにですか?
宮城:ええ。「あそこ失敗しちゃったよね」とか「ココこうすればよかったよね」という意見が
圧倒的に多いんですね。
広野:やりたいことは実はものすごく多いんですね。これでもやりきれなかった、出せな
かったネタは多いんです。
でも、それはきっと次につながる大きな糧であると信じています。
―― 今後も期待してます。本日はありがとうございました。
(インタビュー内敬称略)
Gジェネを作る男たちは日夜、Gジェネの開発に取り組んでいるということを感じたインタビューだった。広野氏、宮城氏、上瀧氏はすでに次のGジェネに目線が向かっているようだ。これからもGジェネの進化に期待しよう!
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