全国35館にて大ヒット劇場上映中の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 誕生 赤い彗星』では、5月8日(火)に東京・新宿ピカデリーにてスタッフトーク付き上映会第1弾が開催された。
トークショーでは「THE ORIGIN 音楽の世界」と題して、音楽プロデューサーの藤田純二さんと音楽を担当した服部隆之さん、谷口 理プロデューサーが登壇。前回の「激突 ルウム会戦」のトークショーでは、盛り上がり過ぎて話し足りなかった感があったということで、今回再び集結した。
平日にも関わらず会場は満席に。多くの観客が見守る中、『THE ORIGIN』の音楽について濃密な内容が語られた。
今回の第6話をもって完結する『THE ORIGIN』アニメプロジェクト。長期にわたっての劇伴制作を振り返り、服部さんは「5年という歳月を1つの作品に関わってやるというのは初めての体験」としみじみ。「初めは地球連邦軍とかジオンとかまるで関係が頭に入ってこなかった。ようやくガンダムの世界観が血や肉になったところで終わる」と完結を惜しみつつ、「素晴らしいプロジェクトに関わらせて頂いて本当に幸せな5年だった」と語った。
藤田さんは、自身のキャリアを振り返り、初めての仕事が『機動戦士ガンダム』であり、そしておそらく今回の『THE ORIGIN』が最後の仕事になるだろうと語った。
「最初がガンダムで最後がガンダムとなれば、まるで指輪が完成したみたいに、最初と最後が閉じる。非常に縁起のよい作品に巡り会えたと思って喜んでいます」と笑顔を見せた。
「深い物語に音楽をつけていくので、自然と音楽も深くなっていった」と語った服部さん。そのため「深掘りした音楽を、あらゆるテクニックを、あらゆる色彩を意識して作ったような5年だった」と制作期間中の心境を明かした。
また「安彦先生から無茶振りもありました(笑)」と暴露する場面も。安彦良和総監督からは、歌手や曲のイメージなどに強いオーダーがあり、それに応えながら、なるべく総監督の思いが観客に届くように、藤田さんと相談しながら劇伴制作に取り組んだという。
「あまりずっと喋っていると僕も50歳を過ぎているので涙脆くなってしまう。これで終わりかと思うと、なかなか」と途中で涙ぐむ場面もあった。「ひとつの作品を長く続けていくというのはそれなりに重みが自分の背中に掛かってくるので。非常に稀有な経験」と打ち明けた。
▲左から藤田純二さん、服部隆之さん、谷口 理プロデューサー。
藤田さんは、服部さんには「言う必要ないことをある程度分けて、最小限言うべきことだけを言って作曲をお願いした」とのこと。色々な音楽を幅広く手掛けている服部さんは引き出しを多く持っている。その中でガンダムに使って欲しい引き出しはこのくらいじゃないか、とだけ伝え、そこから先は細々したことを伝えなかったそうだ。藤田さんが注力したのは、とにかくガンダムのテンションや雰囲気を伝えること。「それでこのような音楽が手に入ったわけなので、それは服部先生のお力が見事に発揮された」と嬉しそうに語った。
また谷口プロデューサーは感極まった様子で、「本当に泣きそうになりますね」と言葉を詰まらせながら、主題歌の制作が1番思い出深いと述べ、作詞家の森 雪之丞さん、松井五郎さん、そして昨年亡くなられた山川啓介さんの名前を挙げながら、「今回はこういう話数ですっていうのを“谷口話せ!”と藤田さんにいつも指示されて、毎回自分が説明させていただいていた。本当に一緒に仕事ができてよかった」と思い出を語った。
続いて話題は印象に残っている楽曲へ。
『THE ORIGIN』では、劇伴・主題歌・アレンジ曲を含め、全6話で120曲以上の楽曲が制作されているが、1番多くエピソードが語られたのは、第1話『青い瞳のキャスバル』の主題歌にあたる「星屑の砂時計」だった。
「どういう曲を最初の『THE ORIGIN』の主題歌にあてたらいいのか」悩んだという服部さん。「キャスバルとアルテイシアが脱出するシーンにあてるというのもあり、暗中模索だったが、山川先生の詞は本当に曲がつけやすかった。詞を読んでいるだけで曲をかくのが掻き立てられる。この曲は僕にとっても思い出深い曲になりました」と、山川さんの詞に助けられたことを明かすと、藤田さんも「いい詞だといい曲がするっとできる。見本みたいないい詞でしたね」と同意。
なお、「星屑の砂時計」は当時すでに引退していた、yu-yuさんが歌を担当。この異例の出来事について藤田さんは「そういう人を起用してまでこういう曲を作る作品は、滅多にないですよね。エンディング曲というのは、話題性とか色々なことを入れ込んで、特筆的な曲を作ることが多いのですけれど、これは本編のイメージに合わせて、曲も詞も歌も全部作られた。今回のシリーズの中でも象徴的な曲ですね。」と絶賛した。
また、藤田さんは、『THE ORIGIN』制作中に亡くなられた山川さん、松山祐士さんの名前を挙げ、「5年、6年の間に人の命もなくなってしまうというのは、非常に残念なことです。でもこうやって作品が残っている」と語り、山川さんに修正を依頼した際には「僕はそういうのは直さないんです、とか言われたりして(笑)。ああいうところが作家のポリシーってすごいなと思いました。」と楽しそうに思い出を語った。
ここで時間が押していると司会からアナウンスが入り、残念ながらタイムアウト。前回に続き、今回もまだまだ話足りない様子であったが、最後に第6話『誕生 赤い彗星』で山崎まさよしさんが歌う主題歌「破線の涙」について触れつつ、3人から挨拶があり、今回も大いに盛り上がったスタッフトークショー第1弾は幕を下ろした。
服部隆之(音楽)
この物語はここから『機動戦士ガンダム』へと続くわけです。次へ続くこの第6話『誕生 赤い彗星』に関しては、手を上げて壮大に歌い切るような大きなバラードは絶対に書かないと最初から決めていました。
どちらかといえば、次に進むんだという意識を入れようというのがありましたし、実は僕もまだこの仕事やりたいんだよ!っていう意識がちょっと入っています(笑)。
今日本編をご覧になっていただくと、その辺りの意思が皆さんに伝わってるのではないかと思っております。
藤田純二(音楽プロデューサー)
今回の主題歌では弦楽器を使わずに、ロックバンドみたいな編成で、服部さんがよくご存知の山崎まさよしさんを起用することになりました。我々スタッフとしては、子どもから大人になって戦争に巻き込まれていく少年たち。その中でもとりわけアムロくんをイメージし、アムロくんに繋がっていく楽曲で6話目を終わりたい、という気持ちがありました。それで詞をお願いして、曲もお願いしてという事になっていますので、そこを感じ取ってくれればと思います。よろしくお願いします。
谷口 理(プロデューサー)
今日はありがとうございました。僕は山崎さんと服部さんが作業されているときに、お二人は本当に親しいんだなぁと感じ、その関係性が羨ましくて。すごく信頼されているんだというのを側で見ていて、羨ましい!てずっと思っていました。
僕も山崎さんと仲良くなりたいと思っていましたけど、なかなか近寄れなかったです(笑)
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』第6話『誕生 赤い彗星』は、全国35館にて大ヒット上映中。5月15日(火)には「艦船で紐解くルウム会戦」をテーマに、メカニカルデザインの明貴美加さん、メカニカルレイアウトの宮本 崇さんが登壇してスタッフトーク付き上映会の第2弾を開催。第3弾の5月22日(火)「ORIGIN VR制作秘話」は、VR映像の演出を手掛けた京極尚彦さんとCGプロデューサー・井上喜一郎さんが出演し、5月29日(火)の最終回は「ガンダムプロデューサートーク」として、谷口 理プロデューサーと発表されたばかりの『機動戦士ガンダムNT』より小形尚弘プロデューサーが登場予定。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
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