全国35館にて大ヒット劇場上映中の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 激突 ルウム会戦』では、9月12日(火)に東京・新宿ピカデリーにてスタッフトーク付き上映会第1弾が開催された。
イベントには、音楽を担当する服部隆之さんと音楽プロデューサーの藤田純二さん、谷口 理プロデューサーが登壇。「音楽について語る」をテーマに、『THE ORIGIN』の世界をより深く楽しめる内容のトークが展開された。
まず始めに、初めてガンダムシリーズに参加することになった服部さんが、当時の心境を振り返る。
声がかかったのは、『半沢直樹』の終了直後で、「なんでぼくに?」という思いと「うわ!ガンダムがきた!」という驚きに加え、音楽を担当した1994年の『ゴジラVSスペースゴジラ』への賛否両論の批評を思い出し、「『否』の意見の方には叩かれまくったんです。また同じ事態が起こるんだろうなぁと想像した」と苦笑いを浮かべる。しかし、安彦良和総監督からのリクエストでもあったことから快諾。日本を代表するコンテンツを担当することに対して「光栄でありながら、めちゃ怖かった」と当時の純粋な心境を明かした。
▲音楽プロデューサー・藤田純二さん、音楽・服部隆之さん、谷口 理プロデューサー
服部さんが安彦総監督から最初に言われたのは、『THE ORIGIN』が群像劇であり、人間の物語であるということ。大河ドラマのように熱いストーリーが折り重なっているので、劇伴にありがちな「シャアのテーマ」や「MSのテーマ」ではなく、「歴史絵巻のような『THE ORIGIN』を体現する曲を作って欲しい」とお願いされたそうだ。
そして一番初めに作られたのは、予告のための90秒の曲。音楽プロデューサーの藤田純二さんも「これによって『THE ORIGIN』の音楽の方向性が決まる」と考え、服部さんと綿密に打ち合わせをし、デモを作ってもらい、慎重に事を進めたという。
ほとんどの場合、予告に使われる曲であっても、多くの劇伴を録る中の1曲として収録されるものだが、『THE ORIGIN』では90秒のこの1曲だけのためにオーケストラが用意された。藤田さんは「オーケストラって最低2時間拘束なんです。レコード会社にいた私のような人間からすると、『うわ、もったいない。この時間があったら、あと何曲か録れるのになぁ』と思いましたよ。贅沢ですね。おかげで非常に迫力のある、怨念とか動乱とか、そういった雰囲気の曲ができて非常に良かったと思います」と語った。
『THE ORIGIN』では、服部さんの新曲だけでなく、渡辺岳夫さんと松山祐士さんによる『機動戦士ガンダム』の曲も使われている。だが、当時の音源そのままではなく、すべて服部さんがリアレンジしたものとなっている。
服部さんは「あの名曲を、オリジナルの味わいが壊れないように“今”の感覚でリアレンジするのも、とても大事な使命でした。サウンドトラック界の巨匠2人の曲は、どれも良くできていて、愛情をもって本当に自然に接することができましたし、両先生の曲をリアレンジするのは、自分の曲を書いている時より楽しかったです(笑)」と楽しそうに語った。
藤田さんも服部さんのリアレンジについて、音のひとつひとつを大切にし、響きが変わらないように守りながらも独自の要素を盛り込んでいて、「らしさ」と個性のバランスが非常に良い、と絶賛する。
主題歌を合わせると120曲以上あるという『THE ORIGIN』の楽曲の中から「思い出深い曲」について問われると、服部さんは「ジャブローのシャア」と「キシリアの乱舞」を挙げる。作曲時の裏話として、「ジャブローのシャア」に出てくる「シャッ」という音は、服部さん本人が口で言った音をシンセサイザーで加工している、ということが明かされた。
藤田さんは、一番最初に作った予告用の90秒の曲を挙げる。
また、谷口プロデューサーはメインテーマを挙げ、「この曲が流れれば『THE ORIGIN』のことを思い出してしまうようなものにしたかったんです。『HERO』、『半沢直樹』、『真田丸』と、服部さんが手掛けてきた曲は、どれも映像作品本編を強く連想しますけど、『THE ORIGIN』でもそういう曲を作って欲しかったので、服部さんにお願いしました」と語った。
メインテーマについては、藤田さんも『激突 ルウム会戦』で使われた新しいバージョンにもぜひ注目して欲しいと語り、「骨格が良い曲というのはどんなテンポでも耐えられるんです。メインテーマは、まさにそういう曲になっていますね」と褒める。
続いて話題は主題歌について。
服部さんが思い出深いのは第1話『青い瞳のキャスバル』の主題歌「星屑の砂時計」。『THE ORIGIN』の主題歌として最初に作った曲だというだけでなく、本編にかぶって曲が始まるところも印象的だったと振り返る。
藤田さんは、主題歌をプロデュースする際の考え方として、『THE ORIGIN』のエンディングがストーリーの延長線上で次へ繋がるように作られていることから「いわゆるタイアップで『誰かの曲を持ってくる』というのは一切考えなかった」と述べる。
主題歌を作る面白さは、ストーリーに応じて詞、曲、歌手と出来上がっていくところで、中でも、『機動戦士Ζガンダム』、『機動戦士ガンダムF91』に続き森口博子さんを起用した第4話『運命の前夜』の主題歌「宇宙の彼方で」は、森 雪之丞さんの詞も、森口さんの歌唱も、服部さんの曲も良く、気に入っていると語る。
最後に、谷口プロデューサーは、「星屑の砂時計」のジャケットイラストを褒めつつも、第3話『暁の蜂起』主題歌「永遠のAstraea」を挙げた。「エンディングではなく本編の途中で曲をかけたい」と安彦総監督に相談したことを明かして、「プロデューサーらしい仕事ができた」と語る。
また、「永遠のAstraea」収録時に、シャア役の池田秀一さんが来訪したエピソードを披露。池田さんが『花燃ゆ』のナレーションを、服部さんが『真田丸』の音楽を、曲を歌った柴咲コウさんが『おんな城主 直虎』の主演を務めたことから、現場が大河ドラマつながりだった、と振り返った。
最後にゲスト3人から挨拶があり、濃密な内容となったスタッフトークショー第1弾は幕を下ろした。
服部隆之(音楽)
来年のゴールデンウィークに公開される第6話をもって、ぼくが担当する部分は一旦終わるわけですが、自分の作曲生活の中でも本当に貴重な経験をさせていただきました。お話をいただいた時には「これから3年もやるんだ、長いなぁ」と思っていましたが、あっという間でしたね。第6話が公開されましたら、第1話から続けて見ていただくと、また味わいが違うのではないかと思います。この第5話も、BGMも主題歌も含め、皆さんに気に入っていただけると幸いであります。本当にありがとうございました。
藤田純二(音楽プロデューサー)
私は一番最初の『機動戦士ガンダム』から、間を空けながらずーっとやっているわけですけれども、今振り返ると、1979年の『ガンダム』っていうのは当時の日本のアニメの時代性みたいなものを反映していました。今、皆さんは『THE ORIGIN』という新しいガンダムの誕生に立ち会っています。 後々振り返った時に、非常に貴重な経験をしていると思いますので、今日はぜひ十分楽しんでいただければと思います。
谷口 理(プロデューサー)
服部さんに音楽をお願いする時に、「大河ドラマみたいなものを作りたい」という意識もありました。決まった時は、ぼくも『半沢直樹』全部見てたので、ものすごく喜んだ思い出があります。そんな気持ちを皆さんにも共有してもらえたらと思います。第5話も、まだ2週ちょい続くので、また見に来ていただければと思います。今日はありがとうございました。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』第5話『激突 ルウム会戦』は、全国35館にて4週間限定で大ヒット劇場上映中。9月21日(木)には「『MSD』と『ドアンの島』について語る」をテーマにスタッフトーク付き上映会第2弾が、9月26日(火)には谷口プロデューサーに加え『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の小形尚弘プロデューサーが登壇し、スタッフトーク付き上映会第3弾を開催する。詳しくは、 こちらの記事をご覧ください。
※本文中、一部敬称略
(ガンダムインフォ編集部)
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