3月27日(金)、東京・新宿ピカデリーでは富野由悠季総監督によるガンダムシリーズ最新作『ガンダム Gのレコンギスタ』の完結を記念するイベント「Gのレコンギスタ完結記念ナイト ~富野総監督と一緒に最終話を観よう!~」が開催された。
※レポートには一部最終回の内容が含まれています。ご注意ください。
当日は、第24話から第26話(最終話)の上映が行われたほか、キャストとスタッフによるトークショーが実施され、まず始めに、司会の小形プロデューサーから「皆さんのおかげで、なんとかここまでたどり着くことができました。今日は歴史的イベントになると思います。」と挨拶があった後、キャラクターデザインの吉田健一氏、メカニカルデザインの安田 朗氏と形部一平氏、デザインワークスのコヤマシゲト氏が登場し、さっそくクリエイターズトークショーへ。
小形プロデューサーが「最終回いよいよ作り終えましたね。」と言うと、3日前まで作業していたという吉田氏は「終わった…。」と燃え尽きた様子。
物語の終盤は、安田氏のデザインした「パーフェクバックパック」を装備した「G-セルフ」に形部氏デザインのメカがどんどんやられていく、という展開になったが、安田氏曰く「『パーフェクトバックパック』は使わないモードもあると思っていた。」そうだ。さらに、『G-レコ』は時系列的に『∀』と『Vガンダム』の間になるので、「『∀ガンダム』よりは弱いが『V2ガンダム』よりは強くする。」という縛りを自分なりに設けたそうで、「『V2ガンダム』は加速し続けると理論上は光速になるという設定だから、それより強くするためにはこうするしかないんですよ。」と語った。
形部氏は「G-アルケイン」が一番のお気に入りだそうだが、その理由は「ガンダムをデザインできるのは特別だから。」ということ。「フルドレス」も頼まれていないのに勝手に作ったそうで、「『G-アルケイン』はアイーダさんのイメージで描いたから、MSとセットでアイーダさんに思い入れがある。」と語った。だがその「G-アルケイン」があまり活躍しなかったのは、やはり「G-セルフ」が強すぎるから、ということだったらしい。
逆に安田氏から見て手応えがあった形部氏のメカは「ユグドラシル」で、「ガンダム以前のロボットアニメまでレコンギスタしたという感じで面白かった。」とコメント。だが打ち合わせの場で始めてデザインを出した時には失笑感があったそうで、小形プロデューサーも「絶対出せないな。」と思ったという。また「『ユグドラシル』の『テンダービーム』はフォトンバッテリーの大小に反応して枝分かれしていくビームで、大きさによって太さが変わるから木みたいに見える。」という解説には、他のスタッフ陣も納得の様子だった。
また、今回はキャラもメカも描いたという吉田氏は、お気に入りのキャラを聞かれ「自分はバララを気に入ってるっぽいですね。」と回答。バララは始めはもっと髪の毛が広がっており「これは面白い!こんなのガンダムに出てくるわけない!」思ったが、想像してみたらアップになると背景が全部髪になってしまうと気付き、富野総監督にも減らすよう言われたそうだ。特徴的なヘッドセットについては、「マスクが目を強化しているから耳を強化しようと思って」あのようになったそう。
さらに「メガファウナ」のお気に入りとして「マキ・ソール」を挙げたが、ほとんど出ることがなく、「『マキ・ソール』を推してたのに監督はステアさんが大好き」だったそうだ。
ちなみにアイーダとベルリに関しては、「アイーダは描きやすくなったけど、ベルリはナチュラルだから逆に特徴がつけづらくて最後まで難しかった。」と語った。
そして安田氏は「ベルリとマスク」が好きなようで、「マスクは本当に好きなんだけど、ベルリ君は女のお尻を追いかけて地獄のような目に遭ったという感じ。あんまり涙を見せたりカメラを寄せたりしてないので、気付かない人もいるかもしれないけど、多分相当地獄だと思う。でも、女のお尻を追っかけてでも外に出た方がいいと、それだけ元気なんだなと解釈しましたけど。」と語った。
最後に吉田氏から最終回の見どころについて「監督の演出と構成。スピーディーなので、そこを見てほしい。」とコメントがあると、本編上映に向けて富野総監督とキャスト陣が登場。石井氏の「どうなるか皆さんの目で確かめて下さい。」との言葉に続き、上映が始まった。
第24・25話に続き上映された最終回は、関東ではTV放送に先駆けた上映。吉田氏の言う通りスピーディーな展開に圧倒され、上映後の客席はスタンディングオべーションに。
盛大な拍手の中、富野由悠季総監督に加え、ベルリ役の石井マーク氏、ルイン役の佐藤拓也氏、クリム役の逢坂良太氏、ミック役の鶏冠井美智子さんが再び舞台へ。富野総監督は「本当はリテイクしたいところもあった。」と言いつつ、「ここに来れなかった300人くらいのスタッフがいるということを、とにかくお伝えしたい。」と挨拶をした。
まず最終回について石井氏は、「最後の台詞の時に終わりたくないって気持ちが出て何度かリテイクをしてしまったが、ベルリは旅に出るということでまだ終わらないんだな、と思ってやったらOKになった。」というエピソードを語った。
そして今回急遽登壇が決定した逢坂氏は、クリムというキャラクターについて「最初のうちは自分さえよければ良いというスタンスだったけど、ミックと一緒に死線をくぐり抜けてきたことで絆が深まったんだなと思った。『ミックは足手まとい』と言葉は冷たいけど、収録でも『優しく言ってくれ』と言われて、ミックを大事に思ってるんだなと感じた。」と語った。
一方イベント初登場となるミック役の鶏冠井さんは、「最初は戦闘狂でグイグイいってしまうクリムにこちらからモーションをかけていくことが多かったけど、金星から帰ってきた辺りからクリムがこっちを向いてくれたと思った。」とコメント。また富野総監督はミックについて「他のキャラは予定通りだったけど、ミックは鶏冠井さんに声を当ててもらったことでキャラクターに色がついて、予定以上に出るようになってしまった。」と明かした。
最後ベルリは日本に行くことになるが、ラストシーンはどこにしてもいいような構造にしてあるそうで、富野総監督からは「海外版の時は、そこの国の代表的な場所に。」という言葉も。
また、最終回には富野総監督が声優として出演しているが、その演技についてキャスト陣は「一発目がすごくナチュラルで味があって、これでいいんじゃないのかと思った。」とのこと。だが実際は録り直しをしており、総監督は「効果音やBGMを重ねていった時に『良いんだけど使えない』という場合が出てきてしまう。最初に録ったものは低過ぎて、効果音を入れると潰れてしまうことがわかったから。」と、実際に制作をしなければわからない裏話を語った。さらに、収録の時は全く違う顔だったキャラクターが、「吉田さんの仕業で」知らないうちに総監督そっくりの顔になっていたそうだ。
また、小形プロデューサーに「石井君はどうでした?」と聞かれた富野総監督は、「声優とか役者として考えると、一番めんどくさい人。」と回答。「かなり天然でそのままやっているので、まだ演技しているという意識がない。本人は演技しているつもりらしいけど、まだちょっと作りが…。ここにいらっしゃる諸先輩方はちゃんと演じているじゃないですか。」との言葉に、佐藤氏が姿勢を正す場面も。「石井君の成長は見受けられましたか?」と聞かれると、佐藤氏は「声は腹から出るようになったんじゃないですかね。」、逢坂氏は「まあ、上手くなったよね。俺が言うことじゃないんだけど(笑)。」と答えた。
そしてベルリと激しく戦ったルインについて、佐藤氏は「始めは差別を打破したいとかベルリへのコンプレックスとか色々とあったと思うんですけど、マニィという一番大事な人が戦場に出てきてしまって、『死んじゃいけない』というシンプルなところに落ち着いたんじゃないかと想像しています。ベルリに勝てなかったからどうこうではなく、マニィと生きていくという可能性が残ったのが一番幸せだったのでは。」と語った。
今回若者は皆生き残るという結末になったが、富野総監督は「この年になると、さすがに『皆殺しの富野』はやめたいなぁ。」とコメント。沸き起こった拍手に「こういうとこで拍手が来る自分のレッテルが嫌なのよね。」と笑った。
ここで、キャストトークショーの締めくくりとして、各人からコメントがあった。
石井マーク
「初めての作品で皆さんに不安をかけたこともあったと思うんですけど、自分の中ではすごく頑張ったと思います。『G-レコ』は僕にとってもまだ終わりじゃないので、何年後かに監督にお会いした時に、成長したねって言われるように頑張ります。」
佐藤拓也
「マスクは一見派手ではありますが、すごく泥臭い役で、一番『生きてやったぞ』という充実感があります。沢山のスタッフの方の愛とキャストの熱い想いの一員になれたことに感謝していますし、こんなにたくさんの方に来て頂いたことも嬉しく思います。」
冠井美智子
「満席の会場を見て、本当に愛されている作品なんだなと思いました。そんな作品に最後まで関わらせて頂いて、本当に心から感謝しています。最終回を見てもっと寂しくなるかと思ったのですが、それよりもキャラクター達の新しい旅立ちの方が心に残っています。」
逢坂良太
「最初はネタキャラですぐ死ぬんじゃないかと思われていましたが、無事生き残って活躍もさせてもらい、クリムを演じてきて幸せでした。自分が本当に好きな作品だったので、一生の思い出だし大事にしていきたいです。また富野監督とお仕事できるように精進します。」
また逢坂氏の「続けようと思えば続けられる終わり方だと思うので、ファンの一人として続きを見たいなと思います。」という言葉には、会場から拍手が。
そして最後はハセガワダイスケ氏が登場し、EDテーマの「Gの閃光」を観客と一緒に熱唱。「real is hell!」のコーラスを叫んだり舞台上のスタッフとキャストがラインダンスを披露したりと、まさに会場が一体となったエンディングだった。そして客席からは、「ありがとう!」、「『G-レコ』最高!」との声も。
最後に富野総監督は「このような機会を得られたのは、本当に皆さんとここに来てないスタッフがいてくれたからで、自分はとても幸せだと思っています。思った通りに作れなかったかもしれないという無念な部分も少しはありまが、ここで皆さんとお会いできたことは生涯の喜びにしたいと思います。」と語り、さらに「まだもう少しやっていいという神様の声があれば、やりたいと思います。」との言葉に、再び会場から拍手が巻き起こった。
『ガンダム Gのレコンギスタ』は、バンダイビジュアルよりBlu-rayとDVDが好評発売中。
さらに、BS11とアニマックスにて毎週19:30より放送中のほか、4月7日(火)からはTOKYO MXにて再放送がスタートする。なお、dアニメストア、ガンダムチャンネル、バンダイチャンネルでも好評配信中。
(ガンダムインフォ編集部)
関連サイト
あなたへのオススメ
編集部イチオシ
PREMIUM BANDAI
プレミアムバンダイ