ボーンデジタルより好評発売中の「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」(税込み1,540円)では、「ガンダムCGの変遷と最前線」と題し、全52ページにわたる大特集を掲載。進化し続けるガンダムCGの変遷、最新作のVR映画『機動戦士ガンダム:銀灰の幻影』、3Dアニメーション・Netflixシリーズ『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』の制作の舞台裏を深掘りしている。
今回は、『銀灰の幻影』に登場するモビルスーツやキャラクターのモデリングについてスペシャルインタビューの一部を紹介していこう。
■「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」『機動戦士ガンダム:銀灰の幻影』関連記事バックナンバー
・11月11日(月)掲載:制作に至った経緯や複雑な制作ワークフロー、モビルスーツのデザインやモデリング『RX-93ff νGUNDAM from SIDE-F』のデータを流用したバーティカルスライス
【インタビュー参加者】
・清水英男氏(バンダイナムコフィルムワークス):CGモデラー
・森田彗斗氏(バンダイナムコフィルムワークス):CGモデラー
・野本敦也氏(バンダイナムコフィルムワークス):CGモデラー
『RX-93ff νGUNDAM from SIDE-F』のA:νガンダムや、B:サザビーなどのデータを流用してつくられた約5分のバーティカルスライス。客観視点のナラティブパートに加え、C:コックピット内のアムロの視点でシャアのサザビーと戦うインタラクションパートも実装され、演出方針や仕様の検討、課題の洗い出しが行われた。
D:『RX-93ff νGUNDAM from SIDE-F』のνガンダム。ポリゴン数は約42.2万、ボーン数は196。
E:『銀灰の幻影』のνガンダム。ポリゴン数は約10.6万、ボーン数は205。森田氏が全ての面を手作業で張り直し、1/4以下までリトポしている。エフェクトや、ポストエフェクトを組み合わせることを考慮して、ひとつのシーン内のポリゴン数の上限は100万と定められた。その上で、シーン内に複数体のMSやキャラクターなどを表示することも考慮し、主役級のMSは10万ポリゴン、それ以外のMSは7万ポリゴンを上限目安と決めた。「νガンダムはディテールが多いので、ポリゴン数を抑えるのに苦労しました。特徴的なディテールは維持しつつ、平らな面は長方形の大きな1枚のポリゴンにして、ギリギリまで削ってあります」(森田氏)
デルタザインのモデリング・セットアップ・テクスチャ
A:デルタザインの色彩設計。右側に各所の2号影、1号影、ノーマル、ハイライトが列記されている
B:3ds Maxによるモデリング段階のチェック画像。ディテール確認のため、Pencil+4でラインを表現している。部分的に既存データを流用しており、頭部はガンダムデルタカイ、ボディ・武装はデルタガンダムがベースになっている。シールドは新造。ポリゴン数は約12.8万。劇中ではMS1体につき2~3段階のLODモデルも使っており、それらはALBYON側で自動生成し、一部手作業で修正した。なお、本作のデータのバージョン管理にはPerforceを使用した
C・D:リグはCATを使用。ボーン数は173。従来のアニメでは、CATでリグを組み、その下層に別のリグを組んでMSの各パーツを親子付けすることで、被弾時のパーツの吹き飛びなどを表現していた。しかし本作ではドローコールの回数を減らすため、全てのパーツを一体化し、ひとつのリグに対してスキニングを施している
E~G:デルタザインのライン、およびアンビエントオクルージョン(以下、AO)のテクスチャ。RGBの各チャンネルに格納することで1個にまとめ、データ量を削減した。サイズは8,192pixel四方。
H:発光表現用のエミッシブマスク。
I:色彩設計の色をそのまま格納したテクスチャ。左列から順番に、2号影、1号影、ノーマル、ハイライト。
J:デカール(機体表面のマークや文字など)のテクスチャ。なるべく高い解像度を維持するため、ほかとは分けて制作した。「既存データのテクスチャはまったく流用できず、全て新規に制作しています。Pencil+4 Line for Unityは本作には適合しなかったので、全てのラインとAOをスクリプトを使ってテクスチャに転写しています。色情報は別のテクスチャで管理して、頂点アルファを色のID番号として使う仕様をALBYONが提案してくださいました」(森田氏)。全高約20mもあるMSのディテールをなるべく維持しつつ、データ量を減らすための試行錯誤がバーティカルスライスの段階で重ねられ、最適な仕様を話し合ったという
A:アージェント・キール所属のMSパイロットである、バビア・レナの色彩設計。
B~D:モデリング段階のチェック画像。
E:ポリゴン数は約3.3万(顔:約6千、髪:約7千、ヘルメット:約5千、身体:約1.5万)。顔の輪郭、カールしている髪のエッジなど、シルエットに影響する曲線部分には多くのポリゴンを割き、部分的にターボスムーズも適用している。リグはCATをベースにしており、CATのボーン数は92、顔は31、髪は16、そのほか(補助ボーン・アクセサリー)は18。
F~H:シェーディングまで完了した状態。
A:頭部のリグ。カメラ位置(ユーザーの視点)に合わせて顔のパーツを移動させるコントローラも設定した。ただしVR映画ではユーザーの視点が移動するため、使用は必要最小限に留められた。
B~D:フェイシャルのテイク4。ことぶきつかさ氏の表情集を参照しながら、アニメーターの意見もふまえてリグの調整が重ねられた。「鈴木監督は表情にこだわっていたので、ブレンドシェイプに加え、眉や目を微調整できるボーンも追加しました」(野本氏)
A:セルフシャドウをONにして、ディレクショナルライトを当てた状態。好ましくない影が落ちている。
B:カメラと光源の位置を基に、カスタムシェーダによって自動的に顔のライティングが調整されるようにした。ショットごとに顔用のライトやリムライトを調整したり、動きに合わせてライトを移動させたりすることもできる。
C:必要に応じて、顔に落ちる影だけを減らすこともできる。なお、髪の生え際などの影はテクスチャ、目の中に落ちるマブタの影はUnityのシンプルな乗算シェーダで表現している。
インタビューの全容は、「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」をチェックしよう。
「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」好評発売中!
CGWORLD 2024年12月号 vol.316 価格:1,540円(税込)
判型:A4ワイド
総ページ数:112
■特集:ガンダムCGの変遷と最前線 ・表紙
・[特集扉](2ページ)
・[PART 01:ガンダムCGの変遷](8ページ)
紹介作品:
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988)
『GUNDAM Mission to the Rise』(1998)
『GUNDAM THE RIDE ‐宇宙要塞A BAOA QU‐』(2000)
『GUNDAM EVOLVE』(2001~2007)
『SDガンダムフォース』(2004)
『機動戦士ガンダム MS IGLOO 1年戦争秘録』(2004)
『機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079』(2006)
『機動戦士ガンダム MS IGLOO2 重力戦線』(2008〜2009)
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(2015〜2018)
VR映像『機動戦士ガンダム THE ORIGIN シャア出撃』(2017)
VR映像『機動戦士ガンダム THE ORIGIN -RISING-』(2018)
『SDガンダムワールド 三国創傑伝』(2019〜2021)
『SDガンダムワールド ヒーローズ』(2021)
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021)
『RX-93ff νGUNDAM from SIDE-F』(2022)
『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(2002)
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(2022〜2023)
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(2024)
・[PART 02:VR映画『機動戦士ガンダム:銀灰の幻影』](22ページ)
TOPIC 1:ワークフロー
TOPIC 2:モデリング
TOPIC 3:作画
TOPIC 4:アニメーション
TOPIC 5:インタラクション・エフェクト
TOPIC 6:MRコンテンツ
・[PART 03:3Dアニメーション『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』](20ページ)
TOPIC 1:モデリング[モビルスーツ]
TOPIC 2:モデリング[キャラクター]
TOPIC 3:シネマティック
TOPIC 4:アニメーション
TOPIC 5:エフェクト