2017年11月22日 (水)
「サンダーボルト BANDIT FLOWER × Twilight AXIS 赤き残影 スタッフトーク付き上映会」レポート
手描きメカならではの密度感を大画面で楽しもう!
全国15館にて大ヒット上映中の『機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER』と『機動戦士ガンダム Twilight AXIS 赤き残影』では、11月20日(月)、東京・新宿ピカデリーにてスタッフトーク付き上映会が実施された。
今回は、『Twilight AXIS』で監督・脚本を務める金 世俊さんとメカニカルデザイン・作画監督の阿部慎吾さん、『サンダーボルト』アニメーションメカニカルデザインの仲 盛文さんと撮影監督の脇 顯太朗さんの計4人が登壇。両作品に共通の特徴である「手描きメカ」の作画について、熱いトークが繰り広げられた。
それではさっそくスタッフトークの様子をお届けしていこう。
▲左から阿部慎吾さん、金 世俊さん、仲 盛文さん、脇 顯太朗さん
▲イベントの司会進行を担当したサンライズの2人。福嶋大策さん(左・『Twilight AXIS』担当)、仲 寿和さん(右・『サンダーボルト』担当)。
『サンダーボルト』スタッフである仲 寿和さんが「設定や撮影へのアプローチが真逆」と言う各作品だが、まずは「どういうことを考えながら、メカの設定画を作ったか?」をテーマにトークがスタートした。
『サンダーボルト』を始めるにあたって、仲 盛文さんは、線の多い漫画原作のイメージを大切にしつつも、作画のしやすさを追求して線を減らした設定画を起こしてみた。しかし、監督からアプローチを変更するよう求められ、漫画の線をなるべく残して、アニメで作画できる限界まで線を増やした設定ができあがったそうだ。
一方、『Twilight AXIS』では、設定の段階では線を減らし、作画する段階でアニメーターが線を増やしていった。『Twilight AXIS』には原作となる漫画が無いので、「アニメーターの苦労をいかに減らすか」を大前提に設定が作られたのだが、「本編作業が始まると、金さんは大人げないほど線を増やしていた」という指摘も。
作画監督の阿部さんも、最初は線を少なく描こうとしていたが、金監督がキャラクターに修正を入れて設定画よりも“盛ってきた”ので、「このままだとメカが負ける」と考え、途中から線を増やす方向にシフトしていった。阿部さんは「アニメーターの性(さが)なんですかね?設定の線が少ないと増やしたくなり、線が多いと減らしたくなる」と語り、金監督、仲 盛文さんも大きくうなずいていた。
スタッフ同士が刺激しあって作品が良くなっていくのは良いことだが、クオリティのインフレ問題など、スケジュールを管理する制作スタッフの間では悩ましい課題にもなっていたようだ。
▲各作品に登場するガンダムの設定。線の少ないトリスタンに比べ、アトラスガンダムの線は非常に多い。設定へのアプローチの違いがよくわかる。
▲『Twilight AXIS』のスタッフである阿部さんと金監督。
続いて話題は「撮影」へ。
『サンダーボルト』では、「撮影監督の脇さんに、やりたい放題やってもらう」という監督の方針を汲んだ結果、ビーム・ライフルと大型ビーム砲で処理を変えるなど、大変なことになった。
また、『BANDIT FLOWER』の水中の表現では、作画の段階では煙を描き、撮影で泡状に見えるよう処理している。これは、実際の見え方に近づくよう相当ねばって作り出した処理であると同時に、作画時のアニメーターごとのバラつきを均一化するという狙いもあったようだ。
なお、『Twilight AXIS』の撮影については、一見『サンダーボルト』ほど処理がかかっていないように見えるが、実際は色々な処理が施されており、脇さんは「隙や無駄のない映像になっている」と評価する。爆発の光の反射など、こだわりの処理が細かく入っているのだが、「スマホで見るとわからないんですよね(笑)」と、阿部さんが残念そうにこぼしていた。
▲『サンダーボルト』のスタッフである仲 盛文さんと脇さん。
漫画は静止画の連続だが、アニメは、場合によっては1秒間に数百枚の絵を人の手で描かなければならない。その設計図になる「設定」は、いかに足し算引き算しながら作るのかか課題で、正解はない。金監督は、設定を「ここまで線を減らしても大丈夫」という目安だと考えている。スタートの段階で線を多くしてしまうと、原画だけでなく、その後の動画、仕上げ、撮影といった行程も、ものすごく大変になってしまう。基準の置き方は、毎回試行錯誤だという。
作画の難しさと言う点で、『サンダーボルト』は「つながった線」により形を表現しているが、『Twilight AXIS』は必ずしも線がつながっておらず、影なども駆使して立体を表現している。金監督や阿部さんは、上手く嘘をつきつつ“心の目で線を描いている”ので、「線の多い『サンダーボルト』よりも、少ない『Twilight AXIS』の方が作画は難しいかもしれない」と、脇さんは推測する。
なお、仲 盛文さんは、かつて『機動戦士Vガンダム』のヴィクトリーガンダムの変形の設定も担当したが、「トラウマになっています」と笑いながら語っていた。
また、『サンダーボルト』のアッガイの設定は、玄馬宣彦さんがこだわり抜いて作り上げ、松尾監督にも「そこまでしなくても良いのに」と言われたほど。現場では、作品を良くするために言い合うのもままあることだが、金監督からは「ケンカしない現場って、信用できないじゃないですか?」と、クリエイティブへの熱い姿勢が見える一言も飛び出した。
▲スタッフトークは終始なごやかながら、熱い内容となった。
最後にゲストから一言ずつコメントがあり、大盛り上がりとなったスタッフトーク付き上映会は幕を閉じた。
阿部慎吾(『Twilight AXIS』メカニカルデザイン・作画監督)
手描きのメカアニメが減り、CGに置き換わりつつあるこの時代に、こうやってまだ手描きのメカをたくさん描かせてもらえてるんで、また今後もこういうものを残していけたら良いな、と思っています。ありがとうございました。
金 世俊(『Twilight AXIS』監督・脚本)
手描きのメカって貴重なものになりつつも、こういう企画があるのは良いことだな、と思います。また、どんどんそういう場が増えていったら良いな、と思います。今日は本当にありがとうございました。
仲 盛文(『サンダーボルト』アニメーションメカニカルデザイン)
『Twilight AXIS』に関しては、まだ食い足りない部分があると思うんですけど、あれはプロローグなので、もし本編があったら、皆さんの期待通りの画を金君が作ってくれると思います(金監督は苦笑)。見に来て下さっただけで本当に感謝ですけれども、できれば『サンダーボルト』第3部も作りたい気持ちはあります。なんとか次につなげたいので、皆さんどうぞよろしくお願いします。
脇 顯太朗(『サンダーボルト』撮影監督)
「あと何回手描きのメカ作画で撮影できるかな?」と思っているんですけど、なるべくそれが長く続くように、と願っています。みんなで力を入れて頑張ったフィルムなので、見ていただけて光栄です。ありがとうございます。
▲トーク後には、恒例のフォトセッションも実施。このイラストのトリスタンは金監督が、アトラスガンダムとアッガイは仲 盛文さんが描いたもので、いずれも設定画より“盛った”絵となっている。
『機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER』と『機動戦士ガンダム Twilight AXIS 赤き残影』は、全国15館にて12月1日(金)までの2週間限定で同時上映中。
上映劇場では、初回限定版「機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER Blu-ray Disc COMPLETE EDITION」や、「オリジナル・サウンドトラック『機動戦士ガンダム サンダーボルト』2 / 菊地成孔」の完全生産限定盤アナログレコード、劇場限定ガンプラ、各種グッズを販売しているほか、週替わりの入場者プレゼントも配布している。詳しくは、アニメ公式サイトの 「INFORMATION」をご覧ください。
ガンダムシリーズ2作品のクロスオーバーを、ぜひ劇場に足を運んで観てみよう。
(ガンダムインフォ編集部)
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