∀ガンダム
【TV】全50話
1999年4月9日~2000年4月14日放送
ストーリー
正暦2345年、夏至の夜。2年前、月の民・ムーンレィスが発動した「地球帰還計画」の一環として北アメリア大陸に降下したロラン・セアックは、地球での生活に馴染み、その地方で開かれる成人の儀式に参加していた。だが式典の最中、この時代の地球文明では考えられない大型の機動兵器を持つ集団が、北アメリア大陸に降下する。地球への入植を目指してやってきた、月の軍隊「ディアナ・カウンター」であった。
彼らと北アメリア大陸イングレッサ領の軍隊「イングレッサ・ミリシャ」は戦闘状態となり、その混乱でビシニティの遺跡「ホワイトドール」が破壊される。しかしその内部から、白い機械人形・∀(ターンエー)ガンダムが出現。現場に遭遇したロランは咄嗟に∀ガンダムに搭乗、ディアナ・カウンターを後退させる。その後も彼は∀ガンダムのパイロットとして地球側に立ち、強引な入植を進める月側と、彼らの入植を認めない地球側を和解させるため奔走する――。
スタッフ
[企画]サンライズ
[原作]矢立 肇、富野由悠季
[総監督]富野由悠季
[キャラクター原案]安田 朗
[キャラクター設定]菱沼義仁
[メカニカルデザイン]大河原邦男、シド・ミード、重田敦司、沙倉拓実
[美術監督]池田繁美
[音楽]菅野よう子
キャスト
[ロラン・セアック]朴 璐美
[キース・レジェ]福山 潤
[フラン・ドール]渡辺久美子
[ソシエ・ハイム]村田秋乃
[キエル・ハイム]高橋理恵子
[メシェー・クン]鬼頭典子
[ジョゼフ・ヨット]佐藤せつじ
[グエン・サード・ラインフォード]青羽 剛
[ディアナ・ソレル]高橋理恵子
[ハリー・オード]稲田 徹
[ポゥ・エイジ]中西裕美子
[コレン・ナンダー]川津泰彦
[ギム・ギンガナム]子安武人
キャラクター
ロラン・セアック
∀ガンダムのパイロット。C.C.2343に地球へ降下したムーンレィスで、ビシニティの富豪ハイム家の使用人として雇われている。地球での生活に馴染み、ムーンレィスと地球民との対立を懸念している。
キース・レジェ
ロランと共に地球へ降下したムーンレィス。イングレッサ領ノックスに店を構える「ドンキー」でパン職人として働く。ディアナ・カウンター降下後、地球民だけでなくムーンレィスにもパンを売り、両者の共存を訴える。
フラン・ドール
ロラン、キースと共に地球に降下したムーンレィスの少女。新聞社「ノックス・クロニクル」に勤める。ディアナ・カウンターが地球に降下すると、戦場記者として対立の最前線を取材し、真実を民衆に伝えようとする。
ソシエ・ハイム
ハイム家当主ディラン・ハイムの次女で、自由奔放な性格。ディアナ・カウンター降下時の戦闘で父ディランを失うと、仇討ちのためにイングレッサ・ミリシャに入隊、ロランやメシェーと共に行動する。
キエル・ハイム
ソシエの姉で、イングレッサ領領主グエン・サード・ラインフォードの秘書を務める。「地球帰還計画」の一環で地球に降下した月の女王ディアナ・ソレルと容姿が酷似しており、後にそれが大きな混乱の元となる。
メシェー・クン
イングレッサ・ミリシャの飛行機乗りで、父は軍用飛行機の設計を行なっていた技術者ラダラム・クン。ソシエとは親友で、ディランの死にショックを受ける彼女を励まし、ミリシャへと誘った。後にカプルのパイロットとなる。
ジョゼフ・ヨット
正歴以前の歴史“黒歴史”の研究家、シド・ムンザの弟子。少数民族マバ族の出身で、強い上昇志向の持ち主。∀ガンダム出現後、シドと共にイングレッサ・ミリシャに入隊、機械人形部隊「ジャラピィ部隊」を率いた。
グエン・サード・ラインフォード
イングレッサ領の若き領主。技術発展を推し進めており、「地球帰還計画」の一環でコンタクトを取って来たムーンレィスからも技術を奪おうと考えていた。機械に強いロランを重用し、期待を寄せている。
ディアナ・ソレル
ムーンレィスの女王。冷凍睡眠技術によって既に千年以上生き続けていると言われ、100年前にも一度地球に降下している。その際に見た地球環境の素晴らしさに感激し、「地球帰還計画」を積極的に推し進めている。
ハリー・オード
ディアナ親衛隊のリーダーであり、ゴールドカラーのスモーを操縦する。赤いサングラスを常にかけており、友軍にも素顔をさらすことはない。ディアナへの忠誠心は強く、時にディアナ・カウンターとも反目する。
ポゥ・エイジ
「地球帰還計画」で地球に降下したディアナ・カウンターの女性兵。わずかな戦力で反抗するイングレッサ・ミリシャの行動が理解できず、その恐怖から乗機ウォドムの対艦ビーム砲を発射。ビシニティの街を破壊した。
コレン・ナンダー
「地球帰還計画」に反対する勢力から、MS・イーゲルと共に地球に落とされたパイロット。冷凍刑に処されていた囚人で、その性格は粗野かつ乱暴、友軍兵に手を出すことも厭わない。しかし、ディアナに対しては強い忠誠心を見せた。
ギム・ギンガナム
月の武門を司るギンガナム家の当主で、外敵に備え、2千年以上演習を繰り返すギンガナム艦隊を率いる。そのため、武力のみを信じる傾向がある。女王ディアナとは、「地球帰還計画」の進行を巡って対立していた。
メカニック
SYSTEM-∀99 ∀ガンダム
「ホワイトドール」から出現したMS。Iフィールドビーム駆動によって推進力を得ている。武装はビームライフル、ビームサーベルなど。股関部に設置されたコックピットは、コア・ファイターとして分離、独立して運用できる。
AMX-109 カプル
ビシニティのマウンテンサイクルから大量に出土した、球形のフォルムが特徴的なMS。操縦の容易さからイングレッサ・ミリシャの主力機に採用された。武装はミサイルやハンドガン。後に水上や水中でも運用できることが判明した。
MS-06 ボルジャーノン
イングレッサ領に次いで勢力を持つ、ルジャーナ領のマウンテンサイクルから発見されたMS。ルジャーナのMS部隊・スエサイド部隊の主力機となった。1機のみ、頭部形状とカラーリングが異なる機体が発見されている。
MRC-F20 スモー
ディアナ親衛隊に専用機として配備されたムーンレィス製のMS。Iフィールドビーム駆動など、機体各所の構造が∀ガンダムと共通している。一般機はカラーリングがシルバーである。
FLAT-L06D フラット
ムーンレィス製の可変MS。スパインコンセプトフレームと呼ばれる背骨状フレームを持ち、優れた運動性を持つ。高周波を発生する特殊兵器ハイパーバイブレーションを備え、地面の掘削なども作業も可能だった。
JMA0530(MODEL U)ウォドム
全高40mのムーンレィス製巨大MS。頭部が武装ユニットとなっており、対艦ビーム砲をはじめ、ミサイルなど多数の射撃兵装を装備する。一方、機動性や運動性は低く、近接戦闘能力も皆無に等しい。
MRC-U11D ウァッド
ムーンレィスが運用する全高7mの作業機器で、MSではなくウォーキングダンプリンに分類される。フラット同様スパインコンセプトフレームを持ち、優れた運動性を発揮する。コクピットは複座式だが、単独での運用も可能。
G-838 マヒロー
ギンガナム艦隊の主力MSとして配備されていた高汎用MS。複数機での連携行動を想定しているため、頭部に大型光学センサーを設置するなど通信機能の向上が図られている。主武装はメガ粒子砲が内蔵されたシールド「トロイダル状防楯内蔵メガ粒子砲」。
Concept-X6-1-2 ターンX
ギンガナム艦隊の首領であるギム・ギンガナムが運用した機体で、月のマウンテンサイクルから発見された。ターンシステムを搭載したターンエーの兄弟機で、多く点で共通している。機体各所が分離、独立して運用できる特殊な機構を持つ。
ウィルゲム
キングスレーの谷で発見されたMS運用艦。発見者のウィル・ゲイムの名を取ってウィルゲムと任命された。艦首にメガ粒子砲を6門設置した戦闘艦で、ミリシャ部隊の旗艦として運用され、宇宙にも上がった。
ソレイユ
ディアナ・ソレル用に建造された純白の戦艦。Iフィールドによって浮力と航行力を得ている艦で、防衛力と管制能力に優れる。「地球帰還計画」の一環で地球降下後は、ディアナ・カウンターの拠点として使われた。
作品解説
『機動戦士ガンダム』誕生20周年を記念して制作された、富野由悠季総監督作品。文明の崩壊に直面し、飛行船や小型戦闘機がようやく生産できるレベルとなった地球の人類と、月に逃れたことで文明を維持し、高度な科学技術を持つ月の民との対立が描かれた。「過去のガンダムを包括する」というテーマの下、過去作のMSデザインや設定が採り入れられているほか、どこか牧歌的な雰囲気を持つのが特徴である。また、シド・ミードがデザインした“ヒゲ”を持つ∀ガンダムのデザインは大きな反響を呼んだ。
世界観
ロランたちが降下した北アメリア大陸イングレッサ領は、大陸随一の勢力を誇り、鉄道が首都周辺に整備されるなど機械化・工業化が進んだ地域であった。一方で、彼らの持つ技術力では到底開発できないはずの燃料電池や太陽電池も取り入れられており、生活の基盤となっていた。これらの技術は、正暦以前に築かれ、白い機械人形によって封印されたと言われる“黒歴史”の遺産であった。黒歴史の存在は、シド・ムンザのような一部の専門家以外、伝説としてしか捉えられていなかったが、ディアナ・カウンターの襲来、そしてマウンテンサイクルと呼ばれる山々からMSが出土したことで一躍脚光を浴びたのである。正暦2345年に勃発したムーンレィスとの衝突は、この黒歴史の真相を紐解くことともなった。
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