2008年2月12日 (火)
第30話「小さな防衛線」
冒頭、ジャングルの上空からガウが爆撃し、戦車と高射砲が対空砲撃をかけ、フライ・マンタが迎撃に発進するシーンが置かれている。しかし、トーチカ内の連邦兵士は特別と思っていない上に、給料の話などをして呑気なものだ。戦争のリアルな実相が描かれている。その瞬間、アッガイの攻撃が弛緩した空気をうち破る。
【ギャグ風作画】
MSアッガイが出現すると、驚いたヘビの模様が落ちてしまう。手塚治虫が好んで描いたようなギャグ表現だ。カツ、レツ、キッカたち子ども視線を意識してか、辞令を与える文官や育児官なども、コミカルにデフォルメされたキャラになっている。
【今回のみのアッガイ隊、大活躍】
シャア専用ズゴックに率いられ、赤鼻率いる特殊工作員が乗りこんだ4機のアッガイが行く。実は全編通じて今回のみの登場なのだが、ずんぐりしたフォルム、戦車さえ破壊可能な武装の強さ、伸縮自在の腕とツメを使った洞窟への見事な逃げっぷりと、実に強い印象を残した機体であった。
正規軍人に編入され、ついに辞令を受け取ることになったホワイトベースのクルー。ブライトは中尉、ミライは少尉、アムロは曹長、カイとハヤトは伍長、フラウ・ボゥは上等兵と、働きや出自を考慮したらしき微妙な階級差が興味深い。
【子どもらしさの表現】
両親を亡くしたカツ、レツ、キッカの自立心、連邦軍人の親に構ってもらえず皮肉っぽくなった児童のブルーな表情など、子どもらしさがよく描かれている。それが爆弾解除のサスペンスと、三人組の活躍にもつながっているのである。
【ガンダムの工場】
実際にはジムの工場だが、完全にガンダム扱いされて、まだ区別がつけられていない。子どもたちが違いを見ぬく点、シャアが破壊工作のために突きとめながら全体のごく一部と判断する点など、各自の反応が兵器としてのガンダム量産に厚みを加えている。
第16話以後、シャアを気にしてきたセイラはついに再会を果たす。その瞬間、微笑むシャアは台本上では「……やはり!」とセリフがあるのだが、本編では無音。そのためセイラの衝撃が大きく聞き逃したという表現になっている。ミライとの会話でごまかすセイラの態度も実にリアル。
氷川竜介(アニメ評論家)
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